|
「………………」 は目の前の光景に正直、げんなりした。 昨夜はどうにか日を跨ぐ前にポケモンセンターに到着出来た。 野生のポケモン達に苦戦しながらもレベルはしっかりあがってるポチリを預けて回復させ(そのときのジョーイさんは眠たそうだった)、与えられた部屋で一緒に昼までグッスリ寝ていたのだ。 出るときには「あまり夜更かししちゃいけません!メッ」とジョーイさんに怒られた。 それまでは良かった。 「あ!やっと来た、!!」 この女の子に出会わなければ。 紺色の髪に可愛らしい帽子、何故か肩を出しているのにマフラーをするというお洒落センス。 ぶっちゃけ寒いのか暑いのか分からない。 しっかりと女の子、と分かる彼女はナナカマド博士の助手で、と同じ歳。 あまり会ってから時間が経っていないのに少々馴れ馴れしいのは彼女の性格だろう。 人懐こい顔をしている。 「……えーと、どうしたんすか、えーと」 が、はなんで呼びとめられたのか分からない。 名前も思い出せない。 面倒そうな顔を変えず、うんうん唸っていると、彼女はピンと指を立てた。 「あ、私の名前忘れちゃったんでしょ?ヒカリよヒカリ!」 「…あー、そうでしたヒカリさん」 「やーねぇ、同じ歳でしょ?敬語もさん付けも無しでいいわよ!」 「…あー、じゃあヒカリで」 このテンションの違いは一体何なのだろうか。 あまり仲良くする気もないにとっては、このフレンドリーな雰囲気は微妙だ。 しかし、彼女は気にしない。 ニコニコと微笑んで、の腕の中のポッチャマにも挨拶を交わした。 「うんうん、この子も元気みたいね」 「…あー、お陰さまで?」 何がお陰さまなのかもわからずにそう応える。 ちなみに元気だとばかりにポチリは元気に挨拶をした。 それに満足げにヒカリは笑った。 「…で、何の用?」 用もなければを待ってるとかありえないだろう。 しかも、この草むらで。 いつ来るかもわからないというのに。 ヒカリはそうだ、と笑顔で顔を上げた。 ちなみに彼女はより身長が数センチ低い。 「ああ、ナナカマド博士に言われてたのよ。って第一印象から面倒臭がりだったから、もしここで1週間来なかったら、旅に出てないってことだから引っ張りだして来いって」 「……………」 あ の ジ ジ イ 。 そう心に留めておきながら、は心の底からゲンナリした。 出来ることなら本当に、旅に出たくなかった。 ポッチャマを貰ったとしても、家でのんびりしてたかった。 勿論、そんなことを許す父ではなかったが。 の顔を見ながら、ヒカリはクスクスと可愛らしく笑った。 「それに、にポケモンの捕まえ方のこと教えてなかったなーって思って」 「…いや、別に捕まえ方とかはいいし。いらない」 捕まえるとかどうとか、どうでもいい。 面倒くさい。 はやんわりと断る。 が。 「ダメよ、これも博士の命令だもの。教えておかないと、面倒臭がって図鑑埋めようとしないかもしれないからって」 「……………」 あ の ジ ジ イ ! 余 計 な こ と を ! ! の心の声は届くまい。 いつも以上にうんざりするからはすでに無表情という仮面は剥がれていた。 嫌だ、というオーラが出ている。 「面倒臭いっていうのも分かるけど、ちゃんと図鑑埋めてね!そうじゃないとあの顔でずっと説教されちゃうわよ」 「そんなんだったら絶対コッチに帰ってこねぇ」 「きっと追いかけてくるわ」 「うげぇー」 あの博士の顔は酷く怖い。 きっと笑っていても凄く怖いだろう。 あの顔で図鑑を埋めろ、断ったを脅したのだ。 アレで追いかけてこられたら溜まったもんじゃない。 しかも説教付きなんて死んでもゴメンだ。 勿論、ヒカリは笑うばかり。 そして颯爽との手を引っ張って草むらへと引きずりこんだ。 「あたしが実際にポケモンを捕まえるから、そこで見ててね!」 「…へーい」 返事をすると嬉しそうな声が返ってくる。 どこか彼女はお姉さんというか、先輩風を吹かしたがっているようだ。 歳は変わらないのに。 そうこうしている間にビッパという狸のようなポケモンが現れる。 彼女は己のモンスターボールからワニノコを取り出した。 博士から違う地方で貰ってきたポケモンらしい。 ワニの小さいようなそれが、飛び出してきたビッパに攻撃をしかけた。 それからは早い。 体力を失ったと分かれば彼女はすぐさま空っぽのボールを投げて、鮮やかに捕まえて見せた。 「うふふ!どう?すごいでしょ」 「…はぁ」 「ポチャー!!」 結構なお手前だ。 ポカンとしているとは逆に、ポチリは腕の中で拍手をして絶賛。 彼女は胸を張って威張った後、照れくさそうに微笑んだ。 「本当はね、もっと体力を減らした方がいいんだけどね。ポイントはとにかくポケモンの体力を減らすことだよ。元気なポケモンは捕まえるのが難しいから。あとはポケモンの技で眠らせたりするともっと捕まえやすくなるよ!」 「はぁー、なるほど」 とにかく捕まえたいポケモンがいたら、ひたすらいじめてボール投げろと。 は一人で独特の解釈をする。 捕まえる気はないが、あの博士に怒られるのも嫌だ。 やはり図鑑を完成させるために無理に捕まえた方がいいのだろうか。 「うん、にモンスターボール5個あげる!」 「あ、ども」 それは置いておいて、貰えるものは貰う。 これでショップに行く手間も省ける。 素直に受け取って、ポシェットの中に仕舞った。 「ポケモンが沢山いると遠くに行くのも安心だよ!それに賑やかで楽しいし」 「あー、それはそうかも」 ポチリにも友達が欲しいだろうし、とも思う。 これからずっと一匹というのも辛いだろう。 がじっとポチリを見つめる。 それを見て、ヒカリはどこか嬉しそうに笑ってみせた。 「じゃああたし、先に行くからね!ちゃんと図鑑を埋めてよ!」 「…へーい」 最後の一言は余計だ。 ヒカリは言いたいことは言い切った、とばかりに爽やかな笑顔で去っていった。 この世の子供は全部せっかちなのだろうか。 のんびり旅するのもいいだろうに、というの考えは風に流されていく。 そして、ポシェットに仕舞ったボールを今一度見つめた。 「…図鑑のために捕まえて、そのまま愛情も無く育てるってのも、鬼畜だよな…」 博士の研究だか何だか知らないが、図鑑を埋めるためだけに捕まえるのが嫌だ。 捕まえた後に責任持って、愛情を持って育てるなら別だ。 だが、この世には何匹もポケモンは存在する。 彼ら全員を均等に育てるなど、そんな器用なことは出来ない。 「…ポチャー?」 「……」 だからと言って、全てのポケモンを無視してポチリだけ育てる、というのも悲しい話。 ポケモンとポケモンとのコミュニケーションが彼らそれぞれを成長させる。 人と人が、それのように。 「………よし」 は一息ついて、決意する。 図鑑の埋め方、そしてポケモンの育て方。 自分の考えを集めて、一つの結果を出したから。 「何となく一緒にいたいと思うポケモンを育てて、そうでないポケモンは捕まえて図鑑に入れた後、すぐ自然に返そう」 人と一緒にいたいポケモンも、いたくないものもいる。 そして自分との相性もある。 だからこそ、人に慣れさせる前に返す。 そうすることで、人の匂いを纏わずに、また自然に戻っていける。 勿論、図鑑のためだけに捕まえるという罪は変わらない。 それは、しっかりと背負っていく。 「もし俺と一緒に来てくれるってなら、一緒に頑張ろう。…どうよポチリ」 ポチリは一匹でもいいか。 それとも凄く沢山、仲間が欲しいのか。 自分の意見を、どう思うか。 腕の中に問いかけると、瞑らな瞳が真っ直ぐに戻ってきた。 そして。 「ポチャ!」 笑顔を、くれた。
面倒くさいなりに、考える。 それが主人公の良いところ。 |