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面倒臭がりで、表情はいつもそんな顔。 タラタラと歩くし、やる気は全くない。 自分のことには大雑把なのに、他のものにはそんなことはない。 「コラッ、君!朝御飯食べないでまだ寝てたの!!」 「…いや、ジョーイさん。俺朝はいつも抜かしてるんすよ。食べるより寝る優先で…」 「ポッチャマには朝起きて御飯食べさせてるというのに、なんで自分のものは抜くの!朝が一番大切なのよ!?」 「…サーセン」 ボクはポチリ。 ポッチャマっていうポケモン。 目の前でジョーイさんに怒られてる少年のような少女。 銀色の綺麗な髪と、紅の瞳の持ち主。 この人がボクのトレーナー、。 ボクの、大好きな人。 この事の始まりは朝のポケモンセンター。 ここ数日此方に滞在していてすっかり顔馴染みになったジョーイさんがいつも昼に出かける彼女を起こしに来たところから始まった。 「全く、いつも昼から出ていくから朝何かやってるのかと思いきや…日常のサイクルが崩れるわよ!?」 「いえ、これ元々で…」 「だったら直しなさい!まだ若いんだから、しっかり朝型にしておいた方が楽だし、成長出来るのよ!?」 ガミガミとお叱りを受けるは聞いてはいるが面倒臭そうだ。 やる気のない半目が、今は四分の一しか開いてない。 ボクはそんなやり取りを床に座りながら眺めていた。 朝ジョーイさんが来たときに見たのは、朝10時を過ぎているのにベッドに眠ったままの。 そして御飯を食べ終えたボクが手持無沙汰にそこらにあったボールと戯れているところだった。 ボクには食べた後が見られるのに、にはそんな形跡はない。 それを見たところで、彼女のお母さん(お姉さんかもしれない)スイッチが入ってしまったらしい。 「もっと自分を大切にしなくちゃダメよ!メッ」 「……(俺何歳の子供になってんの、ジョーイさんの中で)」 メッとまるで幼い子供に怒るかのような言葉に、が心の底から嫌そうな顔をした。 だけど、ボクはジョーイさんの言葉に凄く納得した。 ボクの御飯はちゃんと栄養バランスとか、好きな味とか凄く考えてくれてる。 遊びたいときは遊んでくれるし、構ってほしいときは構ってくれる。 バトルのときも、ボクのことをしっかり見て判断してくれる。 野生のポケモンとのバトルのときは、野生のポケモンのことも考えている。 経験値を貰ったら、すぐにその子を抱えてポケモンセンターに走る。 そして元気になってからすぐに、自然に返す。 それはボクのためでもあるし、野生のポケモンのため。 面倒臭がりのだけど、それだけはしっかりやってるんだ。 でも 自分のことをもっと、大事にしてほしい ボクと出会ったときもそうだった。 シンジ湖っていう湖で、ナナカマド博士とヒカリはボク達が入った鞄を忘れてった。 でも蓋が閉まっているから、ボクらはそれを知らなかった。 しばらく鞄が置かれている時間が長いな、と感じたときに、鞄が乱暴に動いた。 ボクの他にもヒコザルとナエトルっていうポケモンが入ったモンスターボールがあったから、ボクらはコロコロと転がった。 でも博士やヒカリはこんなに乱暴に鞄を持ちあげない。 二匹ともボクと同じことを考えていたみたいで、ボクらは不安になった。 そんなときだった。 鞄が思いきり揺れて、開かれて。 ボクらが入っていたモンスターボールが外に投げ出されたのは。 見えたのは青い空。 緑色の森。 透き通った湖。 そして、知らない、少年三人。 そしてボクだけボールの中心のボタンが地面に押ささって。 「ポチャー!」 外へと、呼び出された。 風が感じられるそこに。 見渡してみれば、知っている博士とヒカリの姿はない。 代わりに知らない少年が三人、やってしまったとばかりの顔でボクを見つめていた。 この子達は誰だろう?そんなことを思って首を傾げると、バサバサと羽音が響いた。 「ポチャー!?」 いきなり鳥ポケモン三羽が襲いかかってきた。 ボクは戸惑い、悲鳴をあげてしまった。 何で博士とヒカリはいないのか。 この少年達は何なのか。 そして、鳥ポケモンが何故いきなり、ボクに襲いかかってきたのか。 分からないことだらけなのに、彼らの攻撃は止まることはないようで。 攻撃される、とだけ分かったボクは只目を瞑って、しゃがみ込むことしか出来なかった。 誰かが「危ない」と叫んだ声を聞きながら。 そしてー 「ポチリ?」 呼ばれて、ハッとボクは意識を此方へと戻した。 が訝しげに見下ろしている。 どうやら話は終わったようだ。 「どした、ぼんやりして。眠ィのか?」 「ポチャ」 ブンブンと首を振ると、ふぅんと相槌が返ってきた。 そして「あぁ」とどこか納得したような声をあげた。 「アレだろ。ジョーイさんの説教が長かったから疲れたんだろ」 ううん、違うよ。 と出会ったこと思い出してたよ。 は自分を捨ててでも、他の人やモノを守ろうとしてたこと、思い出してたんだよ。 そう言おうとしたら、はあーあと溜息を吐いた。 「…俺も疲れたわー。なんだってあんなに怒られなきゃいけねーんだよ…俺の朝は12時が本番だってのに」 「……」 「しかも俺のこと何歳だと思ってんだよ。ガキじゃねーんだっつの」 ブーブー文句を言うは珍しくない。 面倒なことがあるとこうやって愚痴を零す。 だけど。 どんなに苛々していても、ボクを抱える腕はこんなにも暖かくて優しい。 助けてもらったときから、変わらない。 「…大丈夫か?」 ボクを包んだのは痛みじゃなくて、暖かさと柔らかさだった。 目を開ければ、ボクは両腕で抱えられていた。 視線を上げれば、そこには少年三人のうちの、一人がいた。 銀色の髪、紅の瞳、パッと見一番怖そうな少年。 その外見とは別に、安心させるような柔らかいアルトと、笑顔。 でも、その額からは、紅の液体が流れていた。 「「!!」」 「ポ、ポチャ……?」 遠くで他の二人の声がする。 ボクを守ってくれたのは、この少年だとすぐに分かった。 身を呈して、あの三羽の鳥ポケモンの攻撃を受けたんだ。 頭に、背中に、足に。 ボクを、守るために。 「…ン、大丈夫そうだな」 痛いのはこの子のハズなのに、ボクの心配をして安心する。 初対面なのに。 微笑む。 「、大丈夫か?!」 「俺は平気だ。速く逃げるぞ」 「バカ、この足じゃ走れねーだろが!!」 「それでも逃げんだよ」 駆け寄ってきた少年達は、心配そうに覗きこむ。 確かにこの足では走れない。 それでも逃げる、と言って聞かない。 「こうなったら、このポケモン達に助けてもらって…」 「ダメに決まってんだろ」 「ンなこと言ってる場合かよ!」 「イイから、さっさと逃げるって言ってんだ」 「!!」 なんて頑固な人なんだろう。 ボクらを使えばいいのに。 そんなときのための、ボクらだというのに。 だけど、その子は真っ直ぐな目のまま、口を開いた。 「どんなピンチに陥っても、他人のポケモンを巻き込んだら、このポケモンらにも、こいつらのトレーナーにも迷惑かかる」 ボクらポケモンでも、思ってもいなかった言葉。 この子の気持ちと、想い。 「だから逃げるぞ。俺が逃げれないようだったら、俺を置いてこいつら抱えて逃げろ」 ああ、そうか。 この子は、この人は、自分は二の次なんだ。 今会ったばかりのボクらに面倒をかけられないと言う。 逃げれないようだったら、自分を置いて行けと言う。 周りの、気持ちを知りもしないで。 「ポチャ!」 「あ、おい!?」 いたたまれなくなって、ボクはその子の腕から前へと出た。 次の瞬間。 大きな音と共に現れたのは。 「ヒコーッ!」 「ナゥ!」 ボクと同じく、モンスターボールに入ってたヒコザルとナエトルが自分から出てきた。 まるで、その子を守るかのように。 「…なっ!?」 驚いているその子を見ながら、ボクらはすぐに襲ってきた鳥ポケモンに睨みを利かせた。 そして怪我をしているその子の友達二人も前に出る。 誰が何を言わなくても、ボクらの意思の疎通は出来ていた。 「バッ、そこにいたら危ねーだろ!そこからどけろ!」 「ンなことできるわけねーっての!」 「僕は嫌だからね。がボロボロになるなんて」 そう、君は知らないんだ。 君が一人傷つけばいいって言ってたけど、それはつまり、周りの人達の心を傷つけてるってこと。 心配してるってこと。 「ってわけで、ポケモン!俺達に力を貸してくれ!!」 「一緒に、戦ってくれ!!」 気持ちは一つ。 二人の声に、ヒコザルとナエトルが声をあげる。 これが、出会い。 そして、これが彼らのポケモンとなった瞬間。 息が合ったことで、溢れる力。 ボクも指示がなくても、一人で駆けだしていく。 「……馬鹿が」 これが、ボクらがの最初の戦い。 きっかけは、。 君だった。 自分のことが二の次で、自分を犠牲にしてでも他を守ろうとした君だから。 ボクが守らなきゃ。 ボクが、守るから
独白という名の過去話。 ムックリ程度に囲まれただけで、人のポケモンを勝手に使うのはどうなの?と思ったので。 自分に無頓着な人が、好きです←何 |