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コトブキシティ。 シティというのは街で、タウンという町とは比べ物にならないほど都会である。 「…うぉー」 あまりの都会には感嘆の声を零した。 腕の中のポチリも、頭の上のクーリも、足元にいるリンクも口を開けてポカーンと見上げている。 何と言っても、高い建物が多い。 アパートやマンションがそこらに建っているのだ。 フタバタウンやマサゴタウンには見受けられないそれら。 視点はどうしても上へ行く。 「…ハァー、凄ェなやっぱ都会は」 「ポチャー」 「クルー」 「リィー」 皆が皆同じ反応。 呆気に取られたまま、とりあえずはリンクを拾い上げた。 両腕の中にポチリとリンクが収まる。 抱きあげられたリンクは「?」を頭の上に浮かばせた。 「リ?」 「あちこちに走り回られても困るからな。建物の中に入られたらクーリも探せねーし。ボールが嫌だったらここで我慢しろよ」 そう、都会は草むらとは違う。 あちこちに走り回られても、外にいれば見つけられるだろうが中に入られては探せない。 クーリも室内を思いきり飛ぶわけにもいかないのだ。 納得のいく説明。 だが、リンクは走り回れないということに少し不満のようだ。 プゥ、と少し頬を膨らませている。 「ポッチャ」 「リーィ」 「ポチャポチャー、ポッチャ!」 それをポチリが宥める。 というよりは、一緒に腕の中にいるから嬉しいらしい。 仲良し兄弟のような二匹だ。 それに絆されたのか、ようやくリンクの顔にも笑顔が戻る。 はそれを見てやれやれ、と安堵の息を吐いた。 「うし、じゃあポケモンセンターで今日一日グータラすっかー」 「リ!!?」 ようやっと着いたのだから、グータラしたい。 のその言葉にリンクは「ええ!?」と心の底からショックを受けた。 好奇心旺盛なのだから、すぐにでもコトブキシティを回りたいのだろう。 手と足がウズウズ動いている。 が。 「リィー!リィー!!」 「うん、リンクの気持ちも分かるけどな?でもホラ、俺疲れたから。頭の上のクーリなんて見てみ?お前を探し回るのに忙しくて少し虚ろになってんだろ」 「…クルー」 リンクの訴えも空しく却下。 というのも、クーリが色々と限界だ。 勿論、も基本面倒臭がりで出来ているために今日一日はグータラしたい。 今まで野宿が続いていたのだ、シャワーを浴びてフカフカのベッドで眠りたい。 例え今がお昼であってもだ。 「というわけで、ポケモンセンターにレッツラゴー、&グッナイ」 「クルー」 もう寝る宣言。 クーリも賛成なのか、いつもと同じ面倒臭そうな鳴き声をあげた。 逆にリンクとポチリは少し不服そうである。 子供は遊び足りないらしい。 とにかく、は近くにあったポケモンセンターの入り口を潜った。 「こんにちは、ポケモンセンターへようこそ!!」 「ちはーっす。こいつらの治療お願いしやっす」 「ハイ!少々お待ちください!!」 ジョーイさんが手慣れたように応対する。 どうやらここのジョーイさんはマサゴタウンの人よりは活発そうだ。 どこか子供らしい雰囲気もある。 笑顔の彼女に、抱いていたポチリとリンクを預ける。 そして、頭の上からクーリを離して、机の上に置いた。 「あ、あと今日からしばらく、ここのポケモンセンターに厄介になりたいんすけど、イイっすか」 「ええ、いいですよ。こちらに名前の記入をお願いしますね!」 ポケモン達に手を振りながら、違う話題も振る。 というか、泊まることが一番大切だ。 ジョーイさんが差し出した紙に必要事項を書いていく。 ポケモンを連れている人ならこのセンターに無償で泊まれる。 持っていないときは「なんで税金をこれに使うんだ。ポケモン持ってない奴はどうすんだ」と反感を持っていたものだが、今となっては凄く重要だ。 特に金のない初心者には大切な施設である。 (まぁ、部屋が凄く豪華ということはないが) (どうやらポケモンにおいて優秀なトレーナーだとか、そういう人達がVIPルームに泊まれるのだとか) (そんなものになる気はゼロだが) 必要事項を書き終わるとき、丁度ポケモン達の回復が終わった。 ポチリとリンクが我先に!とばかりに駆けてくる。 といっても、ポチリはペンギンのような足なのでリンクに勝てるわけないのだが。 「リィー!」 「お、お疲れさん」 「ポッチャ!」 「ハイハイ、ポチリもお疲れ」 ダイブしてくる二匹を受け止めて、それぞれ頭を撫でてやる。 怪我も大したことなかったようだ。 そしてクーリは走ることも飛ぶこともせず、大人しくジョーイさんに運ばれてきた。 面倒だったに違いない。 「あ、持ってきてもらってすんません。クーリ、お疲れ」 「クルル」 が近くに寄ると、ようやく羽を広げた。 そして素直に頭に乗っかる。 いつもと同じ重みには苦笑を零す。 ジョーイさんもあまりの懐かれぶりにクスクスと笑いながら記入事項を確認した。 「あら、貴方がくん?」 「ハイ?」 貴方が? ということは誰かから聞いているということ。 はとりあえず返事をすると、彼女は嬉しそうに笑った。 「貴方のことはマサゴタウンのお姉ちゃんから聞いてるのよ!」 「あ、あの人の妹さんだったんすか」 道理で似てる。 …いや、ジョーイさんの家系は全員似てるため、見分けが全くつかないのだが。 (ちなみに警察のジュンサーさんも家系で行っているため、見分けがつかない) 少し驚きながらも、相槌を打つ。 するとジョーイさんが微笑んで部屋の鍵を渡した。 「今日は疲れてるだろうから、ゆっくりしてってね」 「あ、どうも。有難いっす」 これで休める。 面倒臭い顔にも、小さな笑みが見える。 風呂とベッドが待っている。 それだけで何とも嬉しい。 だが、次の言葉にはピタリと止まった。 「でも明日はちゃんと、朝早くから起こすからね!」 「…………ハ?」 え、昼から寝て昼に起きるつもりだったんですけど。 ひたっすらグータラするつもりだったんですけど。 っていうか、あのジョーイさんから解放されからお昼まで寝てやるぜ、って感じだったんですけど。 (勿論ポケモンの御飯は朝に作って出すが) の顔が引き攣る。 それを見越しながら、ジョーイはクスクスと笑った。 「君は面倒臭がりで朝御飯も食べようとしないから、しっかり起こしてやってってね、言われてるの」 「…うげぇー」 どこまでもお節介なジョーイさんに会ってしまったものだ。 こうやって隣街の妹にまで報告するか普通。 ここでも昼までひたすらグータラ、ということは出来なさそうだ。 心からゲッソリするに、ジョーイさんはウィンクして誤魔化した。 「その代わり、今日は見逃してあげるから。ネ?」 この妹さんは少し融通が利くらしい。 が、その条件が今日だけとはキツイ。 しかし、泊まらせてもらっている分際で文句も言えない。 は頭を項垂れさせて、大きく溜息を吐いた。 「…ヨロシクオ願イシマス」 「ハイ、こちらこそ!じゃあ、ゆっくり休んでね!」 「オヤスミナサイ」 これはしょうがない。 とにかく今日を堪能するしかない。 笑顔で手を振るジョーイさんを背に、与えられた部屋へと向かう。 一般の個室とはいえ、大切なものは揃っている。 そこに着いて部屋へと入ると、とりあえずポチリとリンクを床に下ろす。 すると二匹はあちこち走り回ったり、じゃれ合い始めた。 「さぁて、俺は風呂の湯沸かしてっと…」 ポケモン達をお風呂に入れるのもトレーナーの仕事。 と言っても、これが一苦労だったりするのだが。 「…うし、じゃあお疲れのクーリさん。最初にやっちゃおうか」 「クルル…」 「…いや、面倒臭いじゃないからな。ただでさえ水浴びも面倒臭いって数秒で終わるだろ。俺が洗ってやるから。静かにそこにいてくれるだけでいいから」 鳥ポケモンは特に烏の行水並みに少しで水浴びは終わるもの。 が、特にクーリはものの数秒だ。 しっかり洗ってやらないと、の頭も悲惨なことになりかねない。 桶にお湯を入れて、頭に乗っていた彼を手の中に収める。 面倒そうにしているものの、まず動くことが面倒らしく素直に抱かせてくれるから有難い。 羽先をチョン、と桶のお湯を触らせる。 「温度はこんくらいでいい?」 「…クル」 丁度良いのか、それともそれすら面倒なので別に良いのか分からない。 が、とにかく良いようだ。 は「うし」と一人で納得して、いつもの面倒そうな顔のまま桶に彼を入れた。 その間にも、お風呂にお湯は張っていく。 「じゃあ、洗っていきますねー」 どこぞの美容院のように言葉を発して、桶の中のお湯を軽くかける。 鳥の羽は水分を吸収することはなく、弾く。 それはいつものことなので気にしない。 軽く流して、クーリをどかせてお湯を捨てて、もう一度お湯を汲む。 今度はそこに彼を入れず、彼専用の石鹸を泡立てて洗い始めた。 「痒いとこはございませんかー」 「クル」 クーリは目を閉じて、満更でもない返事をする。 はそれに小さく笑って、隅々まで洗っていく。 洗い残しのないように、丁寧に。 勿論、目や鼻などには入らないように。 「……うし。じゃあお湯かけますねー。息止めてな」 「クル」 「いきますよー。3、2、1、ドバーッ」 上からお湯を思いきりかける。 大きな音と共に、泡が綺麗に流れていく。 目を閉じ、息を止めているクーリの頭から滴るお湯を手早く拭き取る。 こうすることで、息を止める時間を短くするのだ。 「…ホイ、息いいぞ」 「…クルー」 「息継ぎしてー。今度はゆっくりお湯流しながら頭ゴシゴシすっから、俯かせるぞ。息は少しは出来ると思うし」 「クル」 今度は泡の隅々までを洗い流す作業。 中途半端に残すと、被れたりするからである。 クーリを俯かせ、お湯をゆっくり流しながらゴシゴシと頭を洗っていく。 それが終わればまた頭を拭き、顔をお湯の中につけさせて、それをまたゴシゴシと洗って拭く。 ようやっと目が開けられるようになったクーリのそれは、どこか満足げだ。 その後、身体の方も桶に入れながら丁寧に泡を流し、最後に大きく流したところで終了。 「ホイ、お疲れさんしたー」 「クル」 勿論、お湯に浸かって過ごすことはない。 クーリの場合は洗って終了だ。 水滴を拭きとってからドライヤーをかけてやると、羽毛がボフッと膨らんで可愛らしい。 は心の中で「か、可愛い…」と叫びながら、表情では軽くニヤけるだけで終わった。 「いよし、羽毛乾いたな。後は寛いでな。…ちっと五月蠅くなるけど、寝れるようだったら寝とけ」 「クルル」 お湯がしっかりと張ったのを見て、お湯を止める。 そして返事をするクーリを腕に抱えた。 と、いうのも移動するのも面倒そうだったからである。 居間に行くと、リンクとポチリがそこらにあったボールで遊んでいるのが目に入った。 子供組は元気である。 (ある意味うんざりするほどだ) クーリを止まり木に止まらせていると、構ってくれとばかりに子供組が足を引っ張ってくる。 こういうところがまた可愛らしい。 「リィー!リィー!」 「ポッチャー」 「ハイハイ」 クーリの頭を一撫でしてから、足元にいたリンクをガッチリと掴む。 構ってくれるとばかりに喜ぶ彼は嬉しそうだ。 しかし、これは罠である。 「じゃあリンク、ポチリ。楽しいお風呂の時間だ」 「リ、リィィィィ!!?」 「ポッチャ!」 足元で素直に喜ぶポチリとは別に、腕の中のリンクは悲鳴を上げた。 そう、リンクはお風呂が大嫌いである。 ライオンの子供のようなせいか、ネコ科のようなもののせいか、水が苦手だ。 いや、勿論水ポケモンは平気なのだが。 ちなみにポチリはお風呂が大好きである。 「リィー!リーィ!!」 両腕でホールドの状態からどうにか逃げようともがく。 しかし、もここで負けるわけにはいかない。 ビクともせずにお風呂場へ連行だ。 その後ろのポチリがピョコピョコついてくる。 「あんまり反抗してっとポチリの『あわ』攻撃で洗うぞ」 「リーィ!!」 「もしくは失神させて洗うかんな。でもそうしたら息止めれないから苦しいなー、リンク」 「リィィィ!?」 ある種の拷問。 リンクの悲鳴がお風呂場に響く。 ポチリはというと、それすら楽しいのかケラケラと笑っている。 純粋とは、時に腹黒く見えるものだ。 その後、濡れたままのリンクを追いかけたり、ポチリが調子に乗りすぎて泡風呂になってしまったり。 ギャーギャー騒ぐ風呂場に、クーリは人知れず溜息を吐いたという。 これもまた、日常。
ジョーイさん、ジュンサーさんの家系って本当の謎だと思います。 どんだけあの容姿のDNA濃いんでしょう…? |