これからも旅は続く。
その旨を皆に伝えて、歓喜の声があがった次の日。
「おやー?」
今日はのんびりコトブキシティを見学しよう。
そう決めて街を改めて見学していたときだった。
そこらにいたオッサンが声をかけてきたのは。
「貴方ポケモントレーナーなのにポケッチ持ってない?」
「あ?ポケッチ?」
何だそれ。
っていうか誰だアンタ。
馴れ馴れしいなオイ。
そんな言葉が心の中を過ぎったが口にはしない。
表情には綺麗に出ているが。
腕の中のポチリとリンクはキョトンとし、頭の上のクーリは特に興味は無さそうだ。
彼らと、そしての表情の歪みに気付くことなく、おじさんは勝手に話し始めた。
「ポケモンウォッチ。縮めてポケッチ!」
「(ポケットモンスター、縮めてポケモンと同じフレーズかよ)はぁ」
「それにしても珍しいねー。おじさんね、ポケッチ作ってるんだよ」
「(自慢?)はぁ」
「それでポケッチのキャンペーンしてるよー!コトブキシティにいる3人のピエロを探しだしてねー。そうすれば君にもポケッチをプレゼントしまーす!」
「(新手の詐欺?)はぁ」
テンションが高めのおじさんに、はただただ流すように返事をする。
傍から見たら、異様な光景に違いない。
詐欺だと疑うの視線は凄く冷ややかだ。
それを気付かないほど、テンションが高いというか空気が読めていないおじさんは笑顔で続けた。
「3人のピエロはそれぞれ簡単なクイズを出すよー。ポケッチはトレーナーのためのグッズだからねー。やっぱりポケモンに詳しくないとねー。引換券3枚揃ったらおじさんに話しかけてねー」
「はぁ」
これは押し売りのような押しつけだろうか。
とりあえず返事だけをして、その場を離れる。
変なおじさんであったため、信用しきれない。
しょうがないので、とりあえず信用出来る人に尋ねることにした。
それは勿論。
「え?ポケッチのキャンペーンだって言ってる怪しいオッサンがいた?」
ジュンサーさんである。
警察である彼女に聞けば簡単に分かることだ。
ジョーイさんでも良かったのだが、彼女はポケモンセンターで忙しいだろう。
巡回している彼女を捕まえて、とりあえず話を聞いてみた。
「ハァ。何分最近は物騒なんで、一応ジュンサーさんに相談しておこうかと」
「…君、若いのにしっかりしてんのねー」
ジュンサーさんはかんらかんらと大声で笑った。
どこか飲んだオッサンのようだ。
これは褒め言葉として受け取っていいものか、「老けてる」と言われてるのか分かりかねない。
曖昧に返事をすると、彼女はウィンクをサービスしてくれた。
「大丈夫よ。あの人はれっきとした、ポケッチを開発した社長さん。家族で会社を作ってるんだけど、結構あの人太っ腹で有名でねー」
「…ああ、確かにお腹は出てたっす」
「ブッ!アッハハハ!!そうじゃなくて、ポケッチのキャンペーンだかで、結構ポケッチを配ってくれてるのよ」
だったら儲けもほとんどないのでは。
…いや、他の都市とかでは有料で販売しているのかもしれない。
お腹が出た発言にケラケラと笑うジュンサーさんは笑顔で話を続けた。
「貰っておいて、損はないわよー?新しいアプリが出来たら、ちゃんと無料で入れてくれるし」
「はぁ、そうすか」
「トレーナーのために作られたものだから、便利だし」
便利で無料ならば越したことはない。
(面倒臭いにとってはうってつけのアイテムかもしれない)
それにジュンサーさんのお墨付きならば問題はないだろう。
そう判断したはペコリと頭を下げた。
「分かりました。じゃあキャンペーンに乗っかって貰ってくるっす」
「はい、いってらっしゃーい」
「あざっしたー」
ピエロを探すのは面倒だが、これも楽なアイテムが手に入ればいいと思うがため。
ジュンサーさんにお礼を言い、ゆっくりと歩いていく。
勿論、これだけのために走って体力消費という選択肢はない。
しかし、ピエロは案外簡単に見つかった。
クイズも簡単なものばかり。
引換券3枚を軽く手に入れたは、というと。
「おおー!集めてきたんだねー。じゃあコレ、ポケッチを君にあげようー!」
と、凄く簡単にポケッチを手にいれてしまった。
ガールズモデルとボーイズモデルで色が違うらしい。
腕時計のようなそれの色は、というと。
「これボーイズモデルの新色、黒だよー!君にピッタリだねー」
勿論、見た目男の子であるにはボーイズが与えられた。
それが悔しいとか、そういう感情はない。
むしろ、は半目のまま、キラキラと瞳を輝かせた。
「…おー…」
青か赤、と言われたら青だが、黒の方が断然良い。
シックな色合いが落ち着いている。
左手首に着けてみると、丁度服の色ともバランスが取れて良い。
「じゃあねー」と去っていくおじさんを無視して、とポケモン達は揃ってポケッチを覗きこんだ。
「…これがポケッチかー。…ちょっとポチリ、その赤いボタン押してみ」
「ポチャ」
に促されて、抱かれたままのポチリが腕を伸ばす。
ピッという電子音が響く。
すると。
「…電卓機能だ」
「ポッチャー!」
電卓が画面が出てきた。
これでショップの買い物の計算が楽になる。
感心していると、リンクも押したいとばかりに「リーィ!」と声をあげた。
勿論それは、想定内である。
「ハイハイ、リンクいいよ押して。でもバッチーンとかやめろよ。触るだけでいいからな」
「リ!」
やんちゃであるため力も強い。
これで思いきり押されたら壊れてしまうかもしれない。
そう注意されても、とにかく押したいらしいリンクは笑顔のまま。
ポチリよりも大きな肉球のある手でピッと押す。
すると。
「…おー、万歩計だなコレ」
「リ?」
「あー。歩いている振動を感じ取って、今何歩歩いたかって数えられるヤツな」
万歩計を知らないリンクに説明する。
するとリンクは納得したのか大きく凄い!とばかりにはしゃいだ。
あまりはしゃぐと抱くのが大変なのでやめてほしいのだが、こればかりはしょうがないだろう。
は苦笑したまま、頭へと視線を動かした。
「クーリも押してみるか?」
「……」
面倒。
無言がそう言っている。
が、少し興味はあるらしく、の頭の上から離れ、ポチリの頭の上に乗っかって覗きこんだ。
そこからならボタンも押せる。
がそっと促すと、クーリは静かに羽を広げ、そこに触れた。
「……おー」
「クルル…」
今度出たのは、今自分が持っているポケモンの姿と体力ゲージ。
これを見て、最初に戦うポケモンはどれにしようか、だとか。
ポケモンセンターにいつ行くべきか、傷薬を使うべきかを判断するのだろう。
さすがのクーリも感心したらしい声をあげた。
最後にが押すと時計に戻る。
成程、これは便利だ。
「こりゃいいモン貰ったな」
「ポッチャ!」
「リィー!」
「クル」
用は済んだ、とばかりにクーリが頭の上に戻ってくる。
子供達はまだはしゃいでいるというのに、だ。
これもまたクーリの可愛いところかもしれない。
は暴れる二匹をどうにか抱きながら、移動していく。
コトブキシティを、堪能するために。
でも管理人はポケッチあんまり使いませんでした。
後々配信されるアプリの、宝探索みたいなやつしか使ってなかったなぁ…。