「はっ」


「やぁっ」



砂浜で、二人はじゃれる。
いや、じゃれるというよりは、訓練をしていた。
の蹴りを、が避け、それを逆にする。
喧嘩というよりは組手だ。



、右の脇が甘いですよっ」


「そういうは、蹴りに弱いなっと!」



これには理由がある。
先日、ブラゴとシェリーに会ってから始めたこと。

強い魔物と戦ったことで、自分達の弱点が浮き彫りになった。
喧嘩だけでは、対応しきれない戦い。
それは魔物にも、パートナーの人間にも言える。


喧嘩以上の体力と観察眼、技術、知恵、連帯感。
それを養わなければならない。

もっともっと強くならなければ、すぐに別れがやってくる。



「…さて、。これが終われば、見ないでもお互いがどういう動きになっているか分かるぐらいのコンビネーションを身につけましょう」


「おうっ」



別れどころじゃない。
下手をすれば、誰かが死ぬことになるかもしれない。
シェリーのように、苦しむ人物が増えるかもしれない。
彼女の涙を見たからこそ、それは絶対に避けたい。

彼らに会ったことで、達の決心が強くなった。
王になるべきではない者達を、一刻も早く魔界へと返すことを。



「右っ」


、本を庇うことも忘れずにお願いしますよ!」


「ああっ!」



本を持ちながら、相手とどう戦っていくか。
人間と魔物が戦うことも考慮して、組手をしていく。
汗をかきながら、攻撃をかわしながら攻撃をする。

紅の瞳と銀色の瞳が、真剣に交わっていく。



「なぁ、


「はい」



体力はついてきた。
汗はかきながらも、息は切れない。
話しかけると、も返事をする。

銀色の瞳が、の言いたいことを知っているかのように細められた。



「そして、それが終わったら…お兄ちゃんを、探そうな」


「…ええ、勿論です」



紅の瞳が、悲しみに揺らぐ。
それはの瞳も同じ事。

事態は、急変していた。








『お兄ちゃんが、帰ってこない?』


『おかしいですね…新さんは家出するときだって、せめて僕には一言言ってくれますのに』



ブラゴとシェリーと別れてから一週間後。
その日から、兄の新が家に帰ってきていなかった。

最初はただの家出かとも思ったが、何の連絡もない。
知人に聞いても分からない。
電話をかけても通じない。
学校にも来ていない。



『おかしいですね…』


『どこに、行ったんだろ…』



一週間経っても、何も音沙汰がない。
完全に、行方不明になっていた。



『なぁに。あのバカ息子だ。いずれひょうひょうと帰ってくるさ』



父である寿は、そう笑っていた。
しかし、そんなことあるはずがない
血が繋がっている家族だ。
心配しないわけがない。

警察にも届け出は済んでいる。
だが、見つかったという連絡はゼロ。



。二人とも気にしないで、いつもどおり楽しく過ごせよ!』



そんなこと、出来るはずがない。
実の息子の消失を、父が心配しているからこそ。
そして自分を救ってくれた、兄が消えたのなら。

探したいに、決まってる。
父だけじゃなく、自分達もなのだ。



「…学校は、いいのですか?」


「…それよりも、お兄ちゃんが心配だ」



何よりも、兄の方を優先するべきだ。
にとっても、にとっても。





『ってことで、。お前はこれから俺の妹になるな』




お兄ちゃん

大切な、お兄ちゃん

家族になってくれた、兄になってくれた


新、さん



(探さなきゃ…何としても)



何か事件に巻き込まれているのかもしれない。
人間だけのものかもしれない。
そして。


(魔物、関連かもしれない)


魔物を知っているからこそ。
多くの可能性が考えられる。

だったら、探しながら強くならなければならない。



「今日は大学近辺に行ってきましょうか。新さんの友達を知ってますから、直接会ってでも」


「うん」



心が痛い。
大切な人がいないだけで、悲しくて辛い。


(早く強くなって、急いで見つけないと)


最悪な考えはしたくない。
良い未来を、現実を考えたい。






回り出す、戦いへの序曲。













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