大きなもの



小さいもの














大小兼ねれば何とやらってよく言うでしょ













「それに奴はこんなことで死ぬ男ではないきに」


「いやいやいや!死んじゃうってアレ!どう考えても死ぬよアレ!地中にひきずりこまれてる!!」



攻撃がきつかったのか、砂蟲がそのまま地中へと避難し始めた。
船は足から離れているが、辰馬はそのままだ。
このままでは彼だけ砂に埋もれて死んでしまう。



「潜る前にしとめるんじゃァァ!!」


「坂本さんば救えェェ!!」



躍起になって大砲が向けられる中。

二人は足を進めていた。


灰色の一人は砂漠の上を、ひたすら辰馬をめがけて無我夢中で走り。
銀色の一人は船内を駆け抜けて。

砂蟲へと向けられた大砲に木刀を突き刺した。




「こんなモンぶちこむからビビって潜っちまったんだろーが。やっこさんが寝てたのを起こしたのは俺達だぜ」



もうこれで大砲は撃てない。
撃てばただの暴発だ。
しかしこのままにすれば下手すれば助けるどころではなく、辰馬は砂の流れに流されてしまう。
しかし、銀時はニヤリと笑った。



「大義を通す前に、マナーを通せ、マナーを」


「銀さん!!」



格好いいことを言ってるはずなのだが、オメーに言われたくねーよ、という小さなツッコミまで入りながら新八に叫ばれた。
しかし、そんなツッコミはどこ吹く風。
銀時はそのまま、大砲の上にゆっくりと立ち上がった。



「辰馬ァ。てめー星をすくうとかデケー事吐いてたくせにこれで終わりか?まだ星座の土産ももってきてねーだろうがよ」



大義だとか大きな視点だとか、どうでもいい。
考え方は人それぞれ。

お土産を待っているのは、一人だけじゃない。
ずるずると引きずり込まれる辰馬の元へ、懸命に走っているだけじゃない。



「昔からテメーは口だけだ…俺を見ろ、俺を」



口だけで理想を語るなかれ



「自分<てめー>の思ったとおりに生きてっぞォォ!!」



生きて、叶えろ










「銀時!!」


、オメーもしっかりやんな!」



砂の中へと飛び込まんとする銀時に声をあげる。
彼はを見て、ニヤリと笑った。


自分のやるべきことを

与えられている気がした





銀時は頭から砂の中へと突っ込んでいく。
砂が巻き上がって、あまり何も見えない。

だが。

埋もれた辰馬へと銀時が手を伸ばすのなら。
自分は。




二人を失わないように


手を伸ばそう















日の光が木々から零れる。
風が優しく肌を撫でる。
青い空が、いつものようにそこにある。



「…………そうか」



いつも頭につけていた兜をはずして、代わりにかぶるのは笠。
鎧もどこにもない。
攘夷戦争から解き放たれた姿。
私服となって、目の前の男と対峙していた。



「お前がおりゃあ面白か漁になると思っちょったんだがの〜」


「ワリーな。こう見えても地球<ココ>が好きでね」



天然パーマの銀髪が、太陽の光を弾く。
どうでも良さそうな紅の瞳はいつもどおり。
白夜叉と呼ばれる彼らしい、白い長着。
しかし戦場での面影はなく、彼はのんびりと腕を組んで、風を受けていた。



「宇宙でもどこでもいって暴れ回ってこいよ。おめーにゃ、ちまい漁なんざ似合わねー。でけー網宇宙にブン投げて星でも何でも釣りあげりゃいい」



前日、ぐっすりと寝ていたというのに聞いてるあたりが彼らしい。
それが懐かしくなる日が来るのだろう。
微笑んで、笠を少しあげて視線を合わせた。



「…おんしゃこれからどーするがか?」


「俺か?そーさな…」



紅の瞳はぼんやりと、青い空を見上げた。
遠くから、少女が名前を呼びながら駆けてくるのを聞きながら、その言葉を待った。



「俺ァのんびり地球<ココ>で釣り糸たらすさ。地べた落っこっちまった流れ星でも釣りあげて。もっぺん宙にリリースよ」



意味はよく分からない。
それでも、彼はそう言い切って、笑った。















(…フフ、そーいやそんな事ゆーちょった)


砂の中に体が沈んでいく中、過去の残像を見る。
懐かしくて、辰馬は無意識に微笑んでいた。


(まったく、何を考えちょるんだかわからん男よ)


素直に言葉に出さず。
行動もひょうひょうとしているから掴めない。
坂田銀時、という人物が。


(じゃが、お前がいたから、わしゃ宙へいけた)


それでもよかった。


(お前が地上に残ってくれたから、わしゃ後ろ振り返らず走ってこれたんじゃ)


信頼出来た。
安心出来た。
どんなに掴めない男だろうと、それがあればよかった。

地上の仲間がまだ戦っていても。
毎日、誰かが死んでいくのを知っていても。
昔一緒にいた友が死んでいくのを知っていても。



『約束だからな、辰馬。星座のお土産!』



背中を押してくれた少女がいた。

そろそろ行こうかと思ったときに駆けつけてくれた、幼い少女が。
小さな小指を絡めて、笑っていた。
頑張って泣かないようにと涙を堪えながら微笑んでいた、がいた。


背中を支えてくれた、青年がいた。

の頭をポンポンと軽く叩いて。
さっさと行けと手で促した。
泣くまいと頑張ると、辰馬の努力を無駄にしないようにしてくれた、銀時がいた。











「!!」



砂に埋もれる真っ暗な世界に、銀色の光が差し込む。
それは不細工な顔で、手を伸ばしてくる。


(銀時…)


それがまるで釣り糸のようで。
辰馬はゆっくりと、確実に手を伸ばした。


(わしが地に落ちる時がきても、お前がまた釣りあげてくれるちゅーなら)



地べたに落っこちた流れ星を

もっかい宙にリリースしてくれるのなら



(わしゃ何度でも飛ぶぞ。あの宙にの…)



あの大きな宙を


何度でも泳ごう





『辰馬〜!お土産ちゃんと待ってるからなァァ!!』






星座のお土産を、沢山沢山抱えて















上半身だけ思い切り砂に突っ込んだ銀時の足を、がっしりと掴む。
これ以上砂の中に巻き込まれないように、という意味もこめて。
いつでも引っ張り上げれるように、僅かな動きをも察知できるように集中する。
下手して銀時だけ助けられても意味はない。

二人が生きていないと、意味はない。



「…絶対死なせない」



辰馬も、銀時も。
その信念が小さな動きでも察知出来るほど、集中を持続させていた。


ピクリ。
合図のように動く足を感じて。
は思い切り力を入れて、後ろへと引っ張り上げた。


死なせない

死なせない


だって




「まだお土産もらってねぇんだからァァァ!!茶カテキンパワーメイクアップゥゥ!!」




大声あげて気合一発。
己の体重をもかけて引っ張ると、銀時の上半身が抜ける。
その後、辰馬の体も全部砂から出てきた。



「あいたっ!」



スポン、という抜けた音と一緒にが尻餅をつく。
同時に粉塵と舞っていた砂がようやくおさまっていく。


目の前には、しっかりと。



「アッハッハッハッ!助かったぜよ〜」


「アッハッハじゃねーよ。せめて礼に土産よこせ土産。金か糖分出せコノヤロー」



二人が座っている姿があった。
いつもどおり、大声で何ともなさそうに笑っている辰馬と。
面倒くさそうに顔を顰める銀時の姿が。



、オメーも何でも言っとけ。奢ってもらうから」


「アッハッハッ!わしの金が減るきに、そりゃなしじゃ」



そんないつもどおりの二人を見て。
俯いて。
は、小さく、小さく笑った。

無事だった、ことに。




「!!あー坂本さんじゃ!!坂本さんが生きちょったぞォ!!」



遠くから歓声があがり、彼を慕っている人たちが駆け寄ってくる。
それを上から見ながら、辰馬の部下である女性、陸奥が呆れながら口を開いた。



「……無茶な事を。自分も飲まれかねんところじゃったぞ。何を考えとるんじゃあの男ら」



大砲の射程距離にいることさえ危ないというのに、逆に助けに向かった
大砲を止めて、頭から砂へと潜りこんだ銀時。
己の命を賭けて、手を伸ばすなど。



「…ホントッスね。何考えてんでしょあの人達」



新八は、彼女の言葉に同意を示した。
が、違うのは表情。
訝しげな彼女とは違って、まるで分かっているかのように。
微笑みながら、その瞳に三人を映し出していた。



「なんか、あの人らしか見えないもんがあるのかな…」



自分達にはない

何かが




新八達が見つめるその向こう。

辰馬が大爆笑し、銀時がそんな彼に文句をたらたら零し。
俯いていたは顔をあげて、一緒に笑いだしていた。


こんな感じの雰囲気が

昔と同じ光景だということを

彼ら三人以外、誰も知ることはなかった


















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