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万事屋に来てからの 常日頃 おそようってのはネタなんだけど、大抵大人は気付かない 「…ふあぁぁ…」 欠伸から始まる朝。 目覚まし時計を止めて、はうんと伸びをした。 時間は朝の七時。 外から朝日が入りこむ時間帯。 多くの人なら出勤やら何やらでもう動いている時間帯。 そして、万事屋にしてはまだ朝早い時間である。 「あー、朝かぁ」 声をあげて、夜に戻るわけでもない。 そこを少し惜しみながらも、ソファから抜け出して布団を畳む。 そして洗面所へと向かって、顔を洗った。 冷たい水が脳を刺激し、活性化させる。 タオルで顔を拭いて、鏡の自分を見てニッコリと笑ってみせた。 「うん、おはよう」 ここが、朝のスタートライン。 さくさくといつもの服へと着替えたら、早速朝食の準備だ。 冷蔵庫を覗き込んで、中身の確認。 そこから作れる料理のレパートリーを並べる。 「…んー、昨日の晩御飯の残りを温めて…あとはキャベツと豆腐の味噌汁と目玉焼きかな」 朝御飯はそれぐらいが丁度いい。 だが、万事屋の神楽は、人一倍いや二倍は食べるため量を多く作らなくてはいけない。 お米だけで対処できるかと思いきや、炊飯器の中身全て平らげてしまったことは記憶に新しい。 (その後に「おかわり」がついたものだから、本当にどうしようかと思った) 湯を沸かしつつ、包丁でキャベツと豆腐を切っていく。 トントンというリズムが台所に響く。 その作業が終わるか、終わらないの瀬戸際で、玄関から物音が聞こえた。 「おはよーございまーす」 新八だ。 大体彼が来るのは八時頃。 本当は九時頃に来てたらしいのだが、さすがに九時から始まる万事屋なのにその時間帯に彼らを起こすのはおかしい、と思ったらしい。 は台所からひょっこりと顔を出して、声をあげた。 「おはよー新八」 「あ、おはようございますさん」 まず朝始めに挨拶するのが、彼だ。 微笑んで挨拶をすれば、それが微笑みと一緒に返ってくる。 いつも同じような感じだが、今日の彼はいつも以上にニコニコしている。 と、いうよりヘッドホンつけてリズムに乗っていた。 「あれ、今日はテンション高くない?あれ?テンション?マンション?…あ、オクション?」 「いやいやテンションであってますよ。わかります?実は昨日、お通ちゃんのCD発売日で買ってきて聞いてて…幸せ一杯なんですよォ」 「へぇ、そりゃよかったな〜」 テンションが高い、というよりはデレデレに近いだろうか。 音楽にのってステップをも踏み始めている。 恐らく一晩中、その曲を聞いていたのだろう。 歌詞をもバッチリ覚えてしまったらしく、口ずさむ言葉はバッチリと発音されていた。 「あ、あとでさんにも聞かせますね!」 「あはは、ありがとう〜。ついでに神楽と銀時も起こしてくんね?ご飯出来たからさ〜」 「は〜い」 ヘラヘラしながらスキップしつつ中に入っていく姿は、本当にテンションが高い。 軽やかな後姿を見つつ、は出来た御飯を手に持った。 後はテーブルにそれらを置きにいくだけ、なのだが、ここでひとまず待つのがポイントだ。 新八が、彼らを起こすまで。 「神楽ちゃーん、朝だよ〜ゥオウゥ」 「ムー…まだ夜ネ。私が言うんだから間違いないネ」 「そんなこと言っても朝だから〜ララ〜ラララ〜」 「何で新八の音痴な歌聴いて起きなきゃ駄目アルカ。そんなことするぐらいならいっそ世界が吹っ飛んでしまった方がイイネ」 「どんだけ僕を否定してんのォォ!?いいから起きて!御飯だよ!!歌うの我慢するから起きて!!」 「…うー」 と、とりあえず一悶着してから神楽が起き始める。 今日は楽に起きたようだ。 時々、寝起きが悪ければ暴れだすため、手が負えない。 (この間はそれで朝御飯も吹っ飛んでしまった) (その後も論争やら喧噪になりで、お登勢が叱りにくる始末だった) 「銀さーん、御飯ですよ御飯〜」 「…あー?俺いらねーわ…二日酔いなんでー…」 「そうでなくても起きてくださいよ。万事屋の営業時間もあるんですから」 「じゃあ今日、休業日でー」 「二日酔いで休業ゥゥ!!?ダメですよ!そんなことしてたら本気で追い出されますよ!!」 「ウルセェなァ…お前は母ちゃんか?母ちゃんかコノヤロー。シャカシャカシャカシャカと音がこぼれてるくせによォ母ちゃん気取ってんじゃねーよ。それじゃDJ志望の兄貴役だよ」 「音楽関係ないし家族設定も関係ないじゃないですか!てかお通ちゃんの曲をバカにするような発言は控えてください!親衛隊隊長としてぶっ飛ばしますよ」 「あーもう、起きればいいんだろ起きればよォォ…ぱっつぁんのくせに…」 「ぱっつぁん関係ねェェェ!!いいから起きてホラ!」 「ちょ、ウルセーってだから。頭に響くから。寺の鐘ん中に閉じ込められて思いきり鳴らされるが如く響くから。イジメだからそれ」 と、ここでようやく銀時も起きてくる。 彼も素直に今日は起きてくれたようだ。 時々寝起きが悪ければ、あちこちにアたって、それがまた大きな喧嘩になったりする。 (そのときも御飯が吹っ飛んで、大荒れになった) (そしてまたしてもお登勢が駆けつけて制裁を…ってアレ、お登勢大活躍じゃね?) (ちなみには吹っ飛んだ御飯の掃除へと回っていた) とまぁ、そういうことを学んだために、彼らが確実に起きてから朝御飯を運ぶことになっていた。 洗面所で二人が顔を洗って席についたのを見計らって、料理を運び始める。 どうやら定春も起きてきたらしい。 ワンワンという声が聞こえてくる。 「おはよー銀時、神楽、定春」 「おはよーヨ、」 「うーす」 「わん」 「新八、起こしてくれてありがとー」 「いえいえ。あ、手伝いますね」 「あははは、ありがとーいつも助かるわ」 顔を洗っても、どこかぼんやりしている二人はソファに座ったまま。 小さく舟を漕ぐ姿はもう見慣れてしまった。 そして、いつも手伝うのは新八の役目。 すぐに空気を読んで動く姿は、いつも感心出来るほどだ。 二人がかりで運べば、すぐに朝食の準備が出来る。 ついでに二日酔いの銀時の前にいちご牛乳を置き、定春には餌と水を山盛りによそった皿を出す。 「「「いただきまーす」」」 そしていつもどおりにテレビをつける。 ニュースが流れる中、朝食が始まる。 新八はいつも家で食べてくるので、ここでは食べず、テレビを見るだけ。 いや、今はヘッドフォンで聞いている音楽に夢中みたいだ。 時折足がリズムを刻んでいる。 「新八ィ。貧乏揺すりやめてくんね。テーブル揺れんだけど、イメージ」 「イメージで揺れてるだけじゃないですか。本当は揺れてないんですから我慢してください。僕は今お通ちゃんを堪能中ですから」 「いや、揺れてるってこれマジで。マジ震度5みたいな」 「揺れてんの、銀ちゃんの頭ヨ」 「二日酔いだからなー。ホラ銀時、いちご牛乳でも飲んで、頭グラグラすんの直せ」 いつもと違うのは、新八がリズムにノリノリだということ。 銀時の二日酔いはいつものことだが、ここまで頭をグラグラさせていただろうか。 いや、未だに二日酔いまで至らず、酔っているのかもしれない。 いちご牛乳をコップに注げば、それを一気に流し込んでいく。 カツンと思い切り置く姿はやはり酔っ払いだ。 紅の瞳はやる気なく、の食卓を見つめた。 自分達にはなくて、彼女だけにはある茶色の物体。 糖分大王を名乗るほど糖分が好きな彼は、それを見逃さなかった。 「…お前のチョコくれチョコ。なんで朝食にチョコ?俺への嫌味?嫌味かコノヤロー」 「しょうがないじゃんよ。今日は水曜日だよ?俺のチョコっとチョコディです」 「どんな日だよ。読者の皆さんそんな日あんのすっかり忘れてるっての。それ銀さんに寄越しなさい」 「いやなこったい。アレ?パンナコッタイ?」 「何がパンナコッタ?いいからそれ寄越せコラ」 「パンナコッタイ」 「ウゼェェェ!!いやなこったいであってるっつぅの!」 朝食がまだ残ってるというのに、と銀時の間にはチョコ取り合戦が始まってしまった。 ギャーギャー騒ぐ中、新八は未だにCDに聞き惚れている。 神楽は御飯を次から次へと平らげていく。 「あ、銀時。目玉焼き食われてるぞ、神楽に」 「オイィィ神楽ァァァ!!俺の目玉焼き食ってんじゃねェェェ!」 「銀ちゃーん、その間にチョコ食べられるアルヨ」 「ウォイイイイ!!てめ、俺のチョコォォォ!!」 「俺のチョコですゥ」 「ちょ、静かにしてくださいよ。お通ちゃんのサビが聞こえないじゃないですか」 「だったらテメーが歌えやァァ!」 「え、歌っていいんですか?じゃあ遠慮なく…ララーララララー」 「新八の音痴な歌聴いてたら御飯が不味くなるアル!引っこんでろダメガネェ!」 「歌っていいっつったじゃん!銀さんから許可出たじゃん!!」 「ちょ、手ェ離せ銀時!俺のチョコなのこれ!御飯食べろ御飯!!」 「ウルセェェ!御飯のときはお菓子我慢しろって習わなかったのかお前はァァ!」 「そういうお前もやろうとしてんじゃんよー!」 基本、全員が自由に動く。 ギャーギャーと騒ぎ出すのが当たり前。 静かな朝食もあるのだが、どうも色々と騒ぐ要因があるらしい。 今日の場合は、CD。 目玉焼き。 チョコ。 二日酔い。 …等々の要因があげられる。 そして結局は。 「オイィィィ!静かにしろってのが分からねェのか一々ィィィ!!!」 とお登勢に怒られるのであった。 勿論、お登勢に怒られる日よりも、怒られない日の方が多い。 と、いうことを付け足しておく。 |