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いきなり揺れる車。 急停車により弾む体。 特には後ろに顔が仰け反っていたため、その反動で頭は思い切り前へ。 意識を失っていたため、それはもう止まることなく。 手足は縛られているために何も前に出ず。 行き着く先は勿論前の固い椅子であり。 は ガツンッ 「うぎょうっ!!!!」 顔面強打と共に起床した。 首はボキリ、と鳴り顔面と共に痛みが脳へと伝わる。 反射的に涙がポロリと零れた。 「うぉぉぉぁあぁぁぁ痛いぃぃいいぃぃっ!!!!」 強打したのはまだ頑丈な額。 鼻でなくて良かったと思いつつも痛みは変わらない。 押さえようにも両手両足は縛られたまま。 それでも痛みのため、身体はジタバタと無意識に動いた。 「大丈夫ですか?」 「大丈夫じゃありませんっ!!!!」 暢気な声には反射的に正直に答えた。 涙目をゆっくり開ければ誰もいない車内。 空気の美味しい森。 向こうに見えるのは妖怪軍団。 痛む首を回して辺りを見ると、戦闘態勢の、自分を拉致した四人。 それで何となく今の現状が分かった。 つまりはあの妖怪軍団に待ち伏せされていたのだろう。 だからこその急停止だ。 何気に隣にいたのは、先程自分に声をかけてきたであろう眼鏡をかけた青年だ。 目が合うと、彼は申し訳なさそうに苦笑した。 「すみません。額と首、痛めてしまいましたね」 「…あ〜…まぁ、この状態で急ブレーキだからな…」 未だに巻き疲れている縄。 実際意識があったとしても倒れていたことは間違いない。 しかし、それを咎めるほど子供でもない。 は痛む節々を感じながら、ゆっくりと首を回した。 「まぁ、とりあえず戦闘頑張って。俺動けないから」 「アハハ、分かりました」 動く気も毛頭ありません。 面倒くさいから。 その意味を込めて近くの青年に声をかけた。 彼もそれを感じているらしく、軽く笑い声をあげる。 同時に動き出す妖怪の集団。 彼らは四方に分かれて戦い始めた。 ぼんやりと彼らの後姿を見る。 妖怪がどんどん倒れていくのを感じながら、何でこんな状況になってるんだっけと回想を始めた。 拉致の経緯。 縛りつけられている理由。 せめて足を組みたいと思いつつも動かない足をモゾモゾさせてみる。 しかししっかりと結び付けられていて微動だにできない状態だ。 溜息が出る。 力が全身から抜ける感じだ。 上を見上げれば真っ青な青空。 どうやら真昼のようで、結構な時間眠ってしまったらしい。 「…い〜い天気だなぁ〜。それにしてもまだ額が痛ぇ〜」 妖怪たちの悲鳴がBGMのごとく聞こえてくる。 血の生臭い香りに包まれながらも、は暢気に欠伸をした。 また昼寝でもしてしまいそうだ。 「先生〜拉致ってきたヤツが緊張感ナシでやる気が出ませ〜ん」 「欠伸してるし!」 「昼寝日和ですからね」 「イイから目の前の敵を倒せ」 四人が四人ともをちらりと見ては文句を言う。 にとってはどこ吹く風だ。 のんびりとしながら、目を瞑る。 そよそよと風に揺れて、葉の擦れる音が心地よい。 感じたのはそれだけじゃない。 殺意の篭った視線。 それはの後ろから感じるもの。 他の四人からは見えない。 動こうにも勿論動かない身体。 (ふぅむ、どうしよう) 四つの鎌を出現させるべきだろうが、どうも身体も精神も疲労していて出る気配がない。 …というより面倒くさい、という気持ちが勝っている。 しっかりと近づいているそれを感じながら、どうしようもない状態。 手も足も出ない、というのはまさにこのことだ、と考え違いな言葉が浮かぶ。 助けを呼んだらむしろ、敵の思惑通りだろう。 だからといって、ここで死ぬわけにもいかない。 命の危機が迫っているというのに、冷静、むしろ暢気に考える。 遠い空がもっと遠く感じる。 「死ねぇぇぇええぇっ!!!!!」 「おや」 後ろからの大声にはすぐに空から仰け反る形で後ろを向いた。 振り下ろされる刃。 下衆な笑み。 それを紫苑の瞳に入れた途端、身体は宙に浮いた。 否、両腕に抱えられ、だっこされていた。 「白竜、戻れ!!」 途端に消えるジープという鉄の塊。 現れたのは真っ白で、小さな竜。 刃物はそのせいで地面に叩きつけられる。 その後錫杖に切り裂かれたのは、の後ろにいた妖怪。 断末魔の悲鳴と共に、は自分を抱えた人物を見ようと下を向いた。 茶色の尖った頭と、額にはめられている金の輪。 自分と同じ背丈の少年、であった。 |