「大丈夫か?!」


「おう、サンキュな少年」



少年がを地面に下ろした。
縄で縛られて数時間が経っているため、上手く立てずにその場に座り込む。
正座の体制になり、パキパキ、と節々が鳴る。
は微妙に顔を顰めた。



「おお、節々が痛ぇ…歳だな、歳」


「まだ若くみえんのに。お前幾つ?」


「十代後半」


「若っ!俺と同じくらいじゃんっ」



そんな会話をしているうちに妖怪は全員倒したらしい。
の周りには他の三人も集まってきた。
ジープだった白い竜もパタパタと羽ばたいてきて、眼鏡をかけた青年の肩に止まった。



「あ〜、皆ご苦労ご苦労」


「何様だよ」



の言葉にげっそりとツッコむ悟浄。
しかし、はいまだにのんびりとしており、本当に命が危険だったかと言われるとうんとは言い切れない気がする。

どこまでもマイペースなに、どこからともなく溜息が漏れる。
すると、白竜が肩からふわりと飛びだった。
行き着く先はのもと。
キョトンとしている周りを無視し、それはの膝にチョコンと降り立った。

ピーッと甘えるように一鳴きし、長い首を伸ばしての頬に頬擦りする。
これまた突然なスキンシップ。
ここの集団はこれが好きなんだろうか、とはぼんやり考えながら頬擦りを受ける。



「……お宅んところのペットは人懐っこいですな」


「そういうお前はのんびりしすぎだろーが」


「これが長所だ、触覚君」


「だっ!!誰が触覚だこの野郎!」


「頭が紅いお前だけど?」



紅の髪をした青年は、いきなりの失礼な台詞に憤慨。
まだゴキブリ頭と言われないだけマシか。
白竜が擦り寄るままにしているは無表情で上を見上げていた。
しかも何故憤慨しているのか分からない状態。
怒りを抑えながら、彼はの目の前にしゃがみこんだ。



「おにーさんは沙悟浄ってゆーの!触覚じゃねェの!」


「ゴキブリ頭だけどな!」


「うっせぇ猿!!」



いきなり始まる自己紹介。
そして少年との喧嘩が何故か目の前で勃発。
猿って言うな、エロ河童!と少年が喧嘩を買ったからだ。
すぐ傍で言い合いを見ながら、は一人ぼんやりと。



「…あぁ、色んな名前があるんだな」



と納得。
すると今度は眼鏡をかけた青年が微笑みながらの前にしゃがんだ。



「僕は猪八戒といいます。宜しくお願いしますね」


「……宜しく?」



ニッコリと笑う青年の名前より、宜しく、の意味が分からない。
これから行うのは尋問だけじゃないのだろうか。
言い方からして、これからも宜しく、というイントネーション。
訝しげな表情をするに、納得したように八戒が口を開く。



「ええ。これから一緒に旅をして頂くんです」


「……はい?」



聞いてませんけど。

はい、今言いましたから。

事後承諾なわけですか。

そうなりますね。



なんとも勝手に決められてしまったものだ。
呆気に取られてしまう。
嬉しそうに頬擦りする白竜には関係ない話。



「…えーと、拒否権は」


「拉致してでも連れて行く、だそうで」


「強制なんすか」


「そうなりますね」



ニコヤカに笑う八戒、という男は片手を法師へと向けた。
この方針を出したのは彼なのだろう。
いつもが見たのと同じ不機嫌な顔で煙草を吸っている。

一体この言葉は何回目なのか。
真っ青になった顔や精神的負担は一体どこまで続くのか。
こんなに泣きたくなった日は何日ぶりなのだろうか。

灰になっていく感覚だ。


(…オン…俺はもうダメだ。やっぱり金髪のツラが恐すぎる)


大爆笑しているであろう自称神様に心から報告。
自分の今の状況に合掌。
決定してしまった自分の道に涙が出る。
それを白竜がペロリペロリと舐めていった。



「ちなみにあの恐い金髪のお兄さんは玄奘三蔵、あの元気な少年は孫悟空です」



丁寧に他の二人も紹介してくれている八戒はずっとイイ笑顔。
ずっと旅していくであろう四人と一匹が注目する。
その視線に耐えかねたは、縄に縛られたまましょうがなく頭を下げた。



「…コレカラヨロシクオネガイシマス」



その姿はさながら、侍に切られる罪人に見えたと報告されたのは後の話である。









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