もし暗い闇の中で


一筋の光が見えたのなら












夢現。
その奇妙な浮遊感と絶妙な心地よさ。



そこに現れる一筋の光の中に

誰かがいた気がした




(誰、だ…)




確かめなければ、そう思って手を伸ばしたら

それはまるで自分を包み込むかのように柔らかな光を発して



そして












ドゴォッ



「うげふっ!?」



腹部に膝蹴りをお見舞いされた。






激痛と共に浮上する意識。
目は大きく開かれ、映したのは綺麗な朝焼け。



「ゲホゲホッゲホッ…み、鳩尾…」



本来出てくるのは感動の言葉だろうが、今はそれどころじゃない。
夢の中での膝蹴りは本物だったようで、ここに戻ってきた今も腹が痛い。
咽返りながら体を起こし、腹部に手を当てて辺りを見回す。

あの川原だと思っていた場所は、いつの間にかジープの上。
そして隣には涎をたらしながら眠る悟空。
腕にはしっかりとの羽織りが抱きしめられている。

対するもう隣にはまさに膝蹴りをかましたであろう悟浄。
何をどうしてそんな格好になるのか、と思うぐらいの寝相の悪さ。
うつ伏せになりつつもその右足はの腹の上。



「…この野郎」



夢からここに戻した犯人は決定。
ムカついたのでその足をペイッとそこらに投げておいた。
いい音と共に足は落下したが、悟浄は眠り続けている。


(…ったく………お?身体動くようになったか)


ここにきてようやく、は自分の身体が何不自由なく動いていることに気がついた。
昨夜までは指一つ動かせなかった状態であったというのに、今は簡単にあちこちの筋肉が動く。
今までと同様、一晩経てば身体が動くようになるらしい。

一安心したところで、は自分の上にかかっている黒い羽織を見つけた。



「……代わりの羽織り……」



荷物の中に入れておいた代わりの羽織りだ。
自分のワンショルダーの鞄を見やると、なにやら漁った後。


(…悟浄かな)


ここにを運んできたのは恐らく八戒。
そして鞄を漁った後そのままにしているあたりは悟浄だろう。
三蔵はきっと、面倒くさがってそんなことはしない。


(…甘い、なぁ)


前の席を見てみれば寝ているであろう八戒と三蔵の姿。
危機感など全く持たずに眠っているのが空気で分かる。

何があっても対応できるという自信からか。
それとも信頼の証だろうか。



どちらにせよ、それは嬉しいものであると同時に


辛い、もの





(面倒くさいなぁもう)


確かこっちの方が面倒くさくないと思って選んだはずなのに。
逆に精神的に面倒な気がする。



歩み寄らずに

距離をとることが




(…考えることすら面倒だな)


ふぅ、と溜息が零れる。
はそのまま身体を横にして、羽織を肩にかけた。

眠気が静かに訪れる。



「…なるようになれ」




これから色んなことに巻き込まれるだろう。

精神的負担もあるだろう。

体力的負担もあるだろう。


凄く面倒になるだろう。



でも




そんな自分も心地よいだなんて





思えるから












どうにでも












なりやがれ















「これでパーツが揃ったな」



パーツは全て揃った。
そのボロボロの車はどこまで走れるのか。



天界での全てを乗り越えて

そこに在る




「見せてもらおうじゃねぇか」




お前達の生き筋を




地上の桜の生き様に憧れた


お前の






生き様を












ここから始まる


死神の旅
















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