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三蔵一行と行動し始めてからもう一ヶ月ほど経つ。 ジープでの移動はやはり速い。 ここに来るまで、一人だったら何ヶ月、何年かかっただろうか。 有り難い。 と同時に面倒な旅は続いている。 とある酒場。 西へと向かう中にあった、酒場として一軒だけのもの。 夜になり、寄らざるをえないここに、三蔵一行とはいた。 「あー、腹減った!!」 「酒だ〜酒が呑める〜」 「ここ数日はずっと野宿でしたからね」 「生一つ」 「あ、俺梅酒ロック」 椅子に座ってメニューを開き、各々口を開く。 久しぶりの外食。 お酒も丁度きれて、ずっと缶詰で過ごしていた生活から逃れられる。 疲れているにも関わらず、テンションは上がる。 「俺、オレンジジュース!」 「俺も生だな生」 食べ物は悟空と悟浄に任せる。 はのんびりと周りを見渡していた。 ここも活気がある町らしい。 酒場は混んでいて、盛り上がっている。 両手で頬杖をつきながら見ていると、昔働いていた酒場を思い出させる忙しさ。 女性が先程から一生懸命に動いているのが目に見えた。 「…大変だな〜」 「そういえば、初めてに会ったとき、も酒場でアルバイトしていましたね」 「ああ、うん。お金は必要だからな、一人旅には」 懐かしいなぁと思い返す。 あの店長や、バイト仲間は元気だろうか。 大変だったが、温かい場所だった。 ある意味、あそこで働いていなければ三蔵一行に会わなかったと言っていい場所。 「あのときは、ただのアルバイトだったんだけどなぁ…」 今は何故か三蔵一行に拉致された、正体不明の生物上女の、チビッコ。 何やら沢山の称号だ。 一体何を間違ったのか。 もしかしたら妖怪の団体が来たときに、放っておいて自分も逃げればよかったのかもしれない。 「きゃあッ!!」 過去を思い返していると、どこからか悲鳴が飛んだ。 そこを見てみれば、店員である女性がどこぞの酔っ払いにからまれている。 結構酔っ払っているらしいそのおじさんは、嫌がる彼女の腰を引き寄せた。 「ハイ、悟浄」 と四人全員が気付いている。 傍にあった銀色に光る灰皿を隣の悟浄に手渡した。 女性に対してエロい、もとい優しい彼なら大丈夫。 期待に応えるようにそれは綺麗に投げられた。 カァンといい音が響く。 セクハラしたおじさんの頭に綺麗に当たった。 (ざまぁ) 女性へのセクハラは許せない。 はそれをしっかり見届けてからメニューへと視線を戻した。 悟空を筆頭に、食べ物の名前を連呼している。 「は?何いる?」 「サラダ。…あ、ラーメンサラダがあるな。じゃそれ。後は悟空に任せる」 「任せとけ!」 メニューを選ぶだけ面倒臭い。 お酒と、おなかを満たす食べ物さえあれば良いのだ。 任された悟空は張り切って手を挙げた。 「オーイッお姉さんオーダーよろしくっ」 「あ…ハイ!!」 店員さんの女性がやってくる。 近くで見れば、やっぱり美人さんだ。 紫の髪が上に二つに結われ、残った髪は三つ網に結われている。 悟空が次々と言っていくメニューを頑張って書いていく。 本当にこんなに食べるのか、というぐらい頼んでいるのだが、彼は沢山食べる。 そろそろやめとけ、と三蔵が言ったところでやめるのだ。 「−じゃ注文は以上で」 「−あ、それからさ。灰皿ひとつ」 笑顔で対応する女性に、悟浄は気にした様子もなく灰皿を促した。 彼の口には煙草。 彼女は驚きを見せながらも、笑顔で分かりましたと戻っていく。 そこでようやく、悟空が向かいに座るを見た。 「そういえば前から不思議に思ってたんだけどさ」 「ん?」 どうやらに質問があるらしい。 首を傾げると、悟空は言葉を続けた。 「のあの鎌って、どうなってンの?」 「あ?何今更」 「訊こう訊こうと思って忘れてたんだよ!」 戦うときの鎌。 大きな等身大の一つになったり。 腕の長さほどの二つになったり。 小さくなった四つは空中で旋回して飛んだり。 変化自在のものだ。 「あー…アレならいいか」 言っていいことと言って悪いこと。 武器ならば喋っても大したことはないだろう。 頬杖をついて、なんとなく思い出しながら言葉を選ぶ。 「まぁ、分かってるとは思うけど、俺の武器は鎌。意識することで、三種類にできるわけ」 ピッと三本の指を出す。 真剣そうな話に、全員が指を見つめた。 三蔵は三蔵で、正体のヒントを逃さないようにと聞いている。 そんな視線を感じながらも、口を開く。 「どう意識するんです?」 「これはほら、八戒の気功みたいに考えてくれれば分かる?…というか、ただ一つ!とか四つ!とか思うだけなんだけど」 「…ああ、成程」 八戒の気功も、意識すれば出るもの。 攻撃型や、防御型、治癒型。 それと同じだ。 「でも、どう使い分けてンだよ?」 「この間は一本だったか?」 「その前は二本でしたね」 「よく覚えてんなお前ら…」 悟浄と八戒が思い出しながら言う。 三蔵が顔を顰めて、ある意味呆れた。 本当に覚えていることに、すら驚く。 のんびりと思い返している二人をよそに、まぁいいかと口を開いた。 「普通は一本かな。でもあれ大きくて速くは動けないだろ?で、扱いやすいのは二本だな」 「だったら、ずっと二本出してればイイんじゃね?」 「そうだったら苦労しねって」 悟空の無責任な言葉に、はのんびりと頬杖をつきながら答えた。 気付けばテーブルの上にはお酒の数々。 いつの間にか置いていったらしい。 梅酒ロックを手に取って、カラカラと中の氷を回した。 「確かに二本の方が良いんだけど、集中力が分散しちゃうんだよ」 「はぁ?」 「つまり右手と左手、両方同時に完璧に意識してそれぞれ動かすのは難しいってことですか?」 「そ。だから戦いやすいし、扱いやすいのは二つだけど、絶対に殺すとなると一つの方」 「あん?じゃ四つの方は何なんだよ?アレの方が凄ェんじゃねェの」 梅酒を口の含めば、梅独特の甘さが口に広がる。 美味しい梅酒だ。 悟浄がビール片手に言う中、フムとは言葉を選んだ。 「んー。四つは逆に扱うのが難しい。集中力も分散するし、しっかりとした意識がないと俺は出さないようにしてる」 「え、そうなんですか?凄く簡単に扱っているように見えますが…」 「とりあえず、四つだから集中力が分散するってのは分かるだろ?」 二つでさえも大変だ。 は指を四つだして答え始めた。 「アレは、四つ全部をしっかりと意識しないと自制できない」 「自制、できないだと?」 三蔵が声を出す。 若干顔を顰めて言うあたり、警戒心が見える。 紫暗の瞳がギラリと輝くのを感じながら、はまた梅酒を飲んだ。 紫苑の瞳は、店を照らす光へと導かれる。 「まぁ…しっかり意識してないと勝手に暴れるんだ。何故かは言えないけどな」 理由は『壁』の一つ。 天井の明かりは、柔らかい光。 満月を、思い出させる。 「だから、四つのを使うときは注意してる。ある意味、諸刃の剣だからな」 しっかりと四つを使うのは、集中力を要する。 精神力も使う。 気を抜くと、勝手に暴れだす。 過去から、そうだったように。 カラン、と氷が小さく音をたてる。 は梅酒をまた一口飲んでから、前へと向き直った。 「ま、簡単に言うと、ゲームでいう通常攻撃が一つの鎌。得意技は二つの鎌。必殺技は四つの鎌ってことかな」 これが答え。 軽く言ってのけると、悟空は頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。 |