カラカラカラ……


歯車が廻る。
それはただの歯車か、それとも運命と呼ばれたそれか。
心地良いような悪いような、その定期的な音は静かに朱い世界に響いていた。


夕焼けで染まっているのか。
庭に咲いた彼岸花で染まっているのか。
それとも元からその世界は朱いのか。

誰も、誰もその答えは分からない。


朱い、朱いその世界にぽつりとある日本屋敷。
その一室である和室に、少女は寝転んでいた。
畳の上に黒い、綺麗な長い髪が散っている。
セーラー服を着て横になる彼女は少女にしては酷く妖艶だ。
長い睫毛は伏せられ、寝ているのか規則正しい息が口から零れている。


しかし次の瞬間、少女は目蓋をゆっくりと開け、赤い瞳を覗かせた。


ゆっくりと身体を起こし、ある一点を静かに見つめる。
和室にどこか合わない、一台のパソコン。
何も映ってなどいないその画面を、ただただじっと見つめる。



「気になるのかい?」



部屋の外から声がかかった。
障子の向こうにある、歯車を廻す人の影。
それが歳を召した女性の声の持ち主だとすぐ分かる。
少女はその言葉に何も言わず、ただ画面を見て静かに頷いた。



「今日も来るのかねぇ」



少女の様子を見たわけでもない。
返事がないことにも関わらず、まるで見ているかのように老婆は呟いた。
歯車を廻す手は止まることなどなく、廻し、廻し続ける。



「……来るわ」



透き通った少女の声。
まるで鈴のように綺麗なその声の持ち主は、老いた女性の言葉に確信の言葉で返した。

何が、とは誰も言わない。
しかし、二人はそれを当たり前のように分かっていた。

その数秒後、黒い画面の中心に一瞬炎が揺らめき、画面が朱く染まった。



「……ホラ、ね」



少女の赤い瞳に、その朱い画面は綺麗に映っていた。







地獄通信


深夜0時にしかアクセス出来ないページがインターネット上に存在するという。

深い恨みのある人物しかアクセスできないそれ。

空欄に地獄に流したい人物の名を入力して送信する。

そうすると、地獄少女が現れて、その人物を地獄に流してくれるという。




都市伝説として伝わるそれ。
しかし、それはもう伝説ではない。
実際に存在する話だ。




「……これで……5回目……」



日本人形のように美しいその少女は、その朱い画面の文字を見てその目を細めていた。







『俺を地獄に流して』