合宿は帰るまでが


合宿である












「忘れ物はないか、


「はい!大丈夫です!」


「アレ、このタオルは誰の?」


「あ!!」


「…


「あははー…………す、すみません!」



お風呂から上がっても特に何事もなく寝て、出発の朝がやってきていた。
そして手塚に起こされ、御飯を食べ、出発の準備をする。
部屋を綺麗に片づけながら。

何とも穏やかな朝である。



「…うん、あとは何もなさそうだよ手塚」


「そうか、では、出発しよう」


「はいっ!」



三日目お泊り組は優秀な人物ばかり。
そのためか、すぐに終わってしまった。
もうバスで出発出来る程だ。

三人仲良く、部屋を出る。
まだ他の部屋が慌ただしい。

先に荷物をバスに詰め込む。
その間に、続々とメンバーが出てきた。
今回はボランティアで来た人達も一緒に帰るだけあって、荷物は多い。



ー!このボール頼むぜー!」


「了解堀尾ー!」


「あ、君、このタオルも!!」


「うん、分かった!カチロー、ちょっとカツオのタオルのやつお願いしていいー?」


「うん!!」



一年生はこういう仕事をしなければならない。
特に自分の準備が終わったは、素直に荷物をバスの側面にあるトランクに入れていく仕事だ。
テニス用具は勿論、この合宿に必要な物もある。
鍋やらの調剤器具もある。
トランクの中がどんどん埋まっていく。



「忘れ物はないようだな」


「ああ。俺も確認したけどバッチリだ」



その間に、手塚と大石が忘れ物がないか確認する。
持ってきたもののチェックリストに印をつけながら。
掃除の方も抜かりはない。
今頃先生が最終チェックで回っているだろう。



「これで全部ー?」


「うん、これで全部!!」



トランクに詰め込むものはもうない。
それを確認出来れば、もうここにいる理由はない。
はトランクの中から抜け出した。
ガソリンの匂いから解放される。
ふはぁ、と深呼吸してから辺りを見回す。

森林に囲まれた素晴らしい別荘。
楽しく過ごせた合宿も終わり。



「よし、全員バスに乗れ!」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」



部長の言葉に、全員が乗り込む。
それぞれ好きな席に適当に座っていく。
先生も乗り込んだ後に、ふと気付くことがある。



「…あれ、越前と桃城先輩がいませんけど」


「…あれ、本当だ」



越前と桃城がいない。
忘れ物はなくても忘れ者がいたようだ。
の言葉に河村も反応する。
バスの周りにもいない。



「本当だ!リョーマ様がいない!!」


「りょ、リョーマ君…」



ざわっと騒ぎ始めるバス内。
主に女子メンバーが越前を探し始めた。

が、それも一瞬。
大きな音と共に別荘の中から顔を出す二人がいた。
折角鍵をかけたというのに。



「越前、早くしろよ!!」


「桃先輩が財布見つからないって言ったから…」



しかも罪の擦り付け合いに発展している。
どうやら部屋の片付けや探し物で手間取ったらしい。
あちこちから苦笑や笑い声、溜息が零れる。



「ハハッ変わらないなーあの二人も」


「え、あんなこと前にもあったんですか?」


「うん、そうだよ。中学時代の合宿のときにね」


「へぇー…」



どうやら過去に一度、こういうことがあったらしい。
中学時代にあったからか、傍にいた河村が苦笑を零していた。
…ということは、あの二人は中学から成長してないということだろうか。
勿論、テニスなどは成長していても性格が変わっていくわけもない。
バスの中から先生の怒号が響いた。



「コォラァァァ!!またお前ら二人かい!!さっさと乗りな!!」


「「ウィーッス!!」」



怒られて、二人は急いでバスに乗り込む。
同時に手塚は最終確認する。
忘れた物も、忘れた者もいないかどうか。



「他にいない者はいないだろねぇ!」


「…いないようですね」



さっさと座れと指示されていたため、二人は前方の席に無理矢理座らされる。
酔わないように前に座っていたの隣に、越前が先生の睨みを貰いながら座った。
ちなみに河村の隣に桃城が座る。
反省気味に座る二人を見て、河村とは目を合わせて笑った。



「よし、じゃあ運転手さんお願いします」


「はい」



先生と手塚が座ったところで、バスが動き出す。
流れる景色の中に映る別荘とテニスコート、森林。
頭の中に流れるのはここの思い出。
沢山の練習の中にある、沢山の楽しさ。



「…楽しかったなー合宿」



地区予選、都大会のため。
練習はハードで大変だったが、思い返せば楽しかったことしか出てこない。
パワーテニスを教えてもらったり、体力増強メニューをしたり、ダブルスをしまくったり。
寝るための毛布を手繰り寄せながら、窓の外を見る。



「今年の試合、楽しみだね桃!勿論、応援に行かせてもらうよ」


「おおう!楽しみにしててくださいよタカさん!」


「うん。優勝したら、皆でうちの店にまた食べに来いよ!俺が握るし、親父も喜ぶから」


「え、もしかして驕りっすか!?行くっす行くっす!!」


「ハハッ」



近くから聞こえる会話がはっきりと頭の中に入らない。
ぼんやりと見る景色も歪んでいく。
眠気で意識が揺らぐ。

しかしそれを意識することなく。



!絶対地区優勝して寿司食べにいこうぜ…ってありゃ」


「…くー…」



さっくりと寝た。
カーテンをすることなく、日差しを浴びて眩しいだろうに。
話しかけた桃城がピタリと止まり、同時に河村も顔を出す。
彼は、苦笑を零した。



「…ハハ、越前も寝ちゃったね」


「ったく、寝るのだけは早ェなこいつら!!」



ついでに越前も疲れていたのか何なのか、すぐに寝入っていた。
眠たければ光も振動もお構いなし。
大声の会話も雑音。
ひたすら眠りの世界に堕ちて行く。

には元から毛布があったが、越前はギリギリに来たためにない。
が、隣に座る人物のそれが温かいのか、無意識にそれを手繰り寄せる。
結局一つの毛布を二人で仲良く共有する形になっていた。



「ここに来るときと同じかよ」


「ハハ…仲良くて何よりだよ。…本当に試合が楽しみだ。も出られるといいね」


「ま、仮レギュラーだから、出番はないだろうスけどね」


「分からないよ?桃と越前が遅刻するとか、ありそうだしね」


「タカさーん!そりゃないッスよ!!」


「ははっ」



冗談の言い合いに負けたのは桃城。
ケラケラと笑い合う二人。
バスの前らへんで出される会話は後ろには届かない。
彼らは彼らで楽しく、色んな話をしたり読書をしたりとで過ごしているのだから。

この会話が聞こえていたのは、彼らより前に座る人達。
手塚と、竜崎先生のみ。



「…さぁ、どうなるかね」


「………」



その二人の言葉は誰にも聞こえない。
況してや、その顔も見えない。
彼らの考えは彼らのみぞ知る。


たった三日。
されどその三日で訪れる成長、小さな変化。

それは、明日に繋がっていく。





「こら二人とも、着いたぞ!起きろ越前、!!」


「「…クカー…」」




そう、明日へ

次の大会へ














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