「いい加減にしろ!!!誰がそんなウンコするか!!?」



低い、男子生徒の声。
紅の目には、黒髪が映る。

その姿は教室で見ていたときよりも…ずっと威勢が良く、生き生きとしていた。


(清麿……………っ!!!!)


は心の中で大声を出す。
待ちにまった彼の姿に、ガッシュも微笑む。
また、清麿もニッと笑っている。
うっすらと見える涙の跡が、今までのことを聞いていたことを暗示していた。
その跡に、の心がまた締め付けられる。



「ほら来たぞ!ウソつきはおまえだ、でくの坊!!バーカ!バーカ!!バーカ!!」



ガッシュは金山に指を指して言い放つ。
言われて、指された金山はというと、青筋をピキピキとたてている。
は心の中でほんの少しだけ金山に同情した。

そして堂々と清麿は、前へと出る。



「そうだぜ!オレ様が来たからにゃおまえなんて…」




「イチコロ」という言葉と共に清麿は思い切り蹴りを入れられた。
今起こった状況に、はぽかんと口を開けた。

その後も何度も殴られたり蹴られたりする清麿。
まるでボールのようだ。
遠くからはガッシュが「がんばれ!」「バカっ!キックで反撃だ!!」とか応援している。
スズメは涙目でどうしたらいいのか分からないといった感じだ。

全くもって、これまでの状況は変わらない。


(……そういやぁ…清麿は喧嘩できねぇんじゃ…)


下を見て、静かに分析する。
その間に、「おぶぅぅぅ」という言葉と同時に蹴り飛ばされた清麿が目に入った。
あちこちから血が吹き出ている。



「勝てない…勝てないぃぃぃ…ムリだ…やっぱりこんな作戦…ムリだったんだぁあぁぁ!」



清麿の弱音が響く屋上。
彼のすぐ傍にガッシュとスズメが近寄る。
そして「作戦は成功だぞ!」と言い放った。

どうやら彼がここに来た時点で成功だったらしい。



「その証拠に清麿、今すっごくいい顔してるぞ!今までで一番”生きてる顔”だ!!」



ガッシュが笑顔で言い放つ、その言葉は真実だ。
ここ数年失っていた、生き生きとした顔。



「そうよ…高嶺君…私も高嶺君が助けに来てくれてうれしいもん。ありがとう…」



スズメも嬉しそうに微笑む。
すると、ガッシュは清麿の左手を持ち上げて「せいぎのみかた作戦…成功だ!」と高らかに宣言した。

はただその様子を、上から見下ろしていた。


(……もう……大丈夫だ……)


彼は手に入れた。
闇を明るくしてくれる光を。
己で歩いていける力を。
誰かを信じ、信じられるという心を。

この調子ならば、きっと友達も戻ってくる。


(良かった……これで心残りはない)


照れている清麿を見て、は顔を歪めながらも、精一杯微笑んだ。
左腕に食い込んでいる右手を離す。
白いワイシャツにはうっすらと血が滲んでいる。
それを気にするでもなく、はすっと立ち上がった。



「何が成功だ!!?」



大きなその音にが振り向くと、清麿達が蹴り飛ばされているのが目に入った。
蹴った本人は…金山だ。


(……あ、すっかり忘れてた)


成功だ!と言っていた本人達とは逆に、金山はやる気満々だ。
手をバキバキと鳴らしながら前に出ている。
はその光景に一つ溜息を吐いて、両足を地面から離した。



「お遊びでやってんじゃねぇぞ、コラ!!!」



金山が清麿達に近づいてくる。


(もう一発殴りかかってくる…!)


と清麿達が目を瞑った。







(…………?)


いつまでたっても金山の拳が来ない。
不思議に思った清麿は目を静かに開いた。
黒い瞳に映ったのは、金山と、もう一人の男子生徒。


銀の髪。


それだけで誰かが分かる。
彼は自分達の前に立ち、金山の拳を片手で受け止めていた。
紅の瞳を、ギラギラと輝かせて。



清麿は名を呼ばなかった。
…呼ぶことができなかった。



ガッシュも不思議に思ったのだろう。
静かに金色の目を見開かせる。
そして口を大きく開けた。



っ!!!」



名を呼ばれたは、静かに振り向いて。

ニヤリと笑ってみせた。











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