「『ふざけるな』!そう。第一の術『ザケル』!!!」




清麿のその声に、はゆっくりとうつ伏せの状態から上半身をあげた。

身体中が痛み、この状態ですらキツい。
さすがに身体はもう喧嘩とはいかないようだ。
まだまだ自分は弱い、と自嘲する。



顔をあげて見てみると、清麿が何故か赤く光輝いている。
いや、正確には輝いているのは、本だ。
授業中に読んでいたそれ。

何故光っているのか。

同時にガッシュの口の前には、黄色い、光輝く球が出来上がり、ゴォォと大きな音をたてている。


(な、何だ?)


一体何が起きてるのか。
そんなの疑問に答える人はいない。
ただただ、嫌な予感だけが頭の中を支配する。



「イカン!ガッシュ、ちょっと横向…」



清麿は少し焦ったようにガッシュの顔を金山から少しずらした。
途端に出たのは。






大きな雷。







ガッシュの口の、あの大きな球が雷となって金山のすぐ横を走りぬけた。
大きな音と共にそれは、電撃をあちこちに振りまき。
屋上にあった何かがそれに誘発し、爆発する。

熱風と破片。
それらが降り注ぐ。



「…くっうっ」



反射的に顔を守るように腕で熱風を防ぐ。
傷は熱さにジリジリと焼かれるように痛む。
そこに後押しするように破片が傷を増やしていく。

落ち着いた辺りで、はようやく顔を出すことができた。
まだ熱さの残る空気を吸い込んで、一つ安堵の息を吐く。
しかし、目の前の光景はの紅の瞳を大きく見開かせることしかできなかった。


屋上が、半分崩壊状態。
床のコンクリートはひび割れ、フェンスはなくなり、屋上にあったはずの建物がなくなっている。
その光景には清麿たちも驚いているようで、口をポッカリと開いて見ている。
雷を出した張本人でさえ、何も言わずに目を見張っている。


(一体何が…どうなって…)


あまりの変化に頭がついていかない。
屋上を見渡しても見渡しても、元に戻るわけではない。
しかし、目の端では倒れている人物を発見した。

金山だ。



「か、金山…」



は青ざめながら、ゆっくりと立ち上がった。
身体中が悲鳴をあげ、の顔は歪む。
左足を引きずり、右手は腹部を抱えて金山の元へと歩く。

うつ伏せに倒れる彼。
はすぐ横に膝を下ろし、精一杯の力で仰向けにさせた。



「…金山?金山、…生きてるか?」



制服のワイシャツはズタボロだ。
しかし、しっかり息をし、心臓も動いている。
どうやら気絶しているだけのようだ。



「……良かった」



あんなに近くを雷が通ったのだ。
金山はアクセサリーをつけている。
感電しなかっただけ、運が良かった。
安堵の息が零れる。

金山の無事を確かめてから、はもう一度立ち上がった。
今度は出入り口付近にいるスズメ達の無事を確かめるためだ。
スズメ達は未だに放心状態が続いていて、が近くにきても何も反応を示さない。



「スズメ。…スズメ、平気か?」



優しく肩を揺する。
するとスズメは、今気がつきましたとばかりに瞬きを数回繰り返して焦点を合わせた。



「あ!?え!?ちゃん!?」


「怪我は?ねぇか?」


「あ、うん!私は大丈夫!いきなり雷が落っこちてきて驚いただけ!!」



そう言って、彼女はブンブンと体中を動かした。
どうやら本当に大して怪我はなさそうだ。
はスズメの頭をよしよし、と撫でてから隣の少年へと瞳を移した。



「ガッシュ」


「…う、ウヌ!??」



ガッシュも今、現実へと戻ってきたようだ。
は彼の怪我を見つつ、少し顔を顰めた。



「…怪我、痛そうだな。…悪かったな、すぐに助けにこれなくて…」



彼の作戦を知っていたからと言って、ガッシュの怪我を見て見ぬ振りしていた。
金山のことだから、少しは手加減したにしろ、やはり痣はできていて。
あちこちに傷があることに、罪悪感を感じずにはいられない。



「ウヌ、私は平気だ!…は…大丈夫なのか…?」



逆に、ガッシュの顔が曇った。
明らかに、怪我の多さや程度が違う。
自分以上に申し訳なさそうな顔になっているガッシュに、は目を瞬かせてから、ニヤリと笑ってみせた。



「俺は喧嘩に慣れてっから」



心配すんな、とガッシュの頭をポンポンと軽く叩いてやる。
まだ納得していないような金色の瞳。
それを苦笑して流す。


そしては彼へと、手を伸ばした。













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