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は無意識に、彼に手を伸ばしていた。 心配、という感情と共に。 「清ま……」 パシッ 響く乾いた音。 遮られる言葉。 伸ばした手に感じる痛み。 伸ばした手が、清麿によって弾かれた。 行き場のないその手は、空中で停止する。 「………俺に近寄るな」 低い声。 拒絶の言葉。 表情は見えないが、そこには確かに、怒りや憎しみに満ちていた。 (……だよな) は素直に手を下ろし、笑みを零した。 それは自分を嘲笑うもの。 (そう簡単に………いくわけ、ないもんな) そんなのは自分が一番良く分かっている。 自分が過去、彼に何をしたか考えれば、一目瞭然。 はただただ、清麿の見える怪我をちらりと見やってからゆっくりと立ち上がった。 「…?」 ガッシュの胸に、不安が溢れる。 の紅の瞳は、まるで遠くを見つめていて。 微笑んでいるのに哀しさを思わせて。 まるで。 まるで遠くへ行ってしまうような。 「スズメ、ガッシュと高嶺を保健室に連れてってくれるか?俺は金山を運ぶから」 いつもの微笑みに戻る。 スズメはうん、と頷いた後、顔を歪ませた。 「で、でも…ちゃん、その身体で金山君を運ぶのは…」 見ただけでズタボロのの身体。 ワイシャツは金山と同じぐらい破けて、中の赤いシャツと傷だらけの肌が目に入る。 はそんな自分の姿を見てから、ニヤリと笑ってみせた。 「こんなん、しょっちゅうだっつの。いいから頼むよ」 頼まれたら、断れない。 スズメはうっと言葉を詰まらせてから、一息吐き出した。 「分かった…けど…無理しないでね?」 「おう」 スズメが清麿に肩を貸して立ち上がる。 その後ろにガッシュが続き、三人は扉の向こうへと消えていった。 心配する二つの視線と、拒絶の視線とを残して。 バタン、と閉じるドアの音が響く。 青空が上空に広がっている。 先ほどの雷は一体なんだったのかと思えるぐらいの、いい天気。 は振り払われた手を青空に透かす。 それは血と汗で滲んでいるそれ。 汚いその手。 伸ばすことの許されない、手。 「………ああ、頑張ったな俺」 リストバンドの影から見える、過去からの傷跡。 それを見えぬように隠してから、金山へと目を向ける。 仰向けのまま全く動かない彼を見て、は小さく笑ってみせた。 「起きてんだろ、金山」 「……お前、ちょっとは気を遣ってやった俺に他に言うことねぇのか」 「はいはい、ありがとよ。それにしても良かったな、感電死しなくて。俺もちょっと焦ったぞ?」 声をかければ、皮肉気な声が返ってくる。 がクスクスと笑えば、金山はゆっくりと身体を起こした。 崩壊した屋上を見回して、さすがに顔を青くする。 「……俺、よく生きてたな」 「な。それより、どこから起きてた?」 「『頑張ったな』あたり」 「うぅわ、起きたばっかだ」 先ほどまで喧嘩したとは思わせない会話。 はケラケラと笑いながら、痛む腹部を抑える。 金山も身体を起こしたら起こしたで、自らが痛む場所へと手を伸ばす。 それを見やるが、苦笑気味に肩を貸す。 「…いらねぇぞ、肩なんて。俺より怪我してるやつに貸されるのはなんかムカつく」 「いいからいいから。…悪かったな、付き合わせて。」 無理やり肩に腕をかけさせる。 いつもなら軽く勝敗が分かった時点でやめるのが喧嘩だった。 が、今回はそういうわけにはいかなかった。 もう、次回はないのを分かっているから。 二人で扉をくぐり、屋上を後にする。 密閉された空間。 階段をゆっくりと下り、誰もいない廊下を歩く。 今は部活の時間だろう。 グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえてくる。 「あのガキは何なんだよ。口から電撃が出たんだぜ!?」 「さぁてな。でももう、子供に暴力すんのはやめろよ?」 そんな話をしつつ、保健室の前まで来る。 中から話し声が聞こえた途端、二人はその前で止まることになった。 |