清麿の母から聞いた。

何故、清麿が学校に行かないのか。

何故、皆が清麿を嫌うのか。


その、きっかけ。



『ちょっとね、清麿の友達が……嫉妬というか……。そうね、その子は色々とあって…つい、言ってしまったんだと思うの』



清麿の母は詳しいことは教えてくれなかった。

友達、とは誰のことなのかも、どういうことを言われたのかも。

ただ、清麿の頭の良さを一時的に妬んでしまったときに、「その子」が大声で放った言葉が。

妬みと共に辺りに広まってしまったということだけしか。


そのことを聞いたときは、怒りしか感じなかった。

友人に大声で言われたことのショック。

また、そのせいで周辺の視線や言葉が冷たくなった。



学校、全てが。



多くの人が。



(何故、清麿が嫌われなくてはいけないのだ!傷ついたのは清麿の方だ!!)


悪いのは……『その子』だと、思っていた。

今の、今まで。





「清麿のお母さんは、何て言ってた?高嶺が、こんなふうになったというのは」



目の前にいる彼は、神妙な面持ちで紅の瞳を真っ直ぐに向けていた。
その真意はわからない。
ただ、ガッシュはそのまま話した。


清麿の友人の誰かが、妬んで放った言葉のせいだと。



「………そいつの名前は言わなかったのか?」


「ウヌ、尋ねてはみたのだが…何も言ってくれなくてな」


「そっか…………優しいんだから…おばさんは……」



全く変わってねぇんだな、とは悲しそうに微笑んだ。
ガッシュはただ、の言葉と表情に疑問が浮かぶばかりで、どうしていいか分からずにオロオロとしている。
未だに風は冷たくて、髪が震えるように靡く。
言い様もない、不安が押し寄せてくる。

本当は言いたくない。
言うのには、凄く、凄く勇気がいることだから。
一つ、大きく息を吸って吐く。
は、真剣な眼差しでガッシュを見つめて口を開いた。



「……俺なんだよ」


「え」



小さな声に、思わずガッシュは聞き返す。
銀色の髪がサラサラと流れて、紅の瞳が揺らぐ。
ガッシュの言葉に、は苦笑してまた口を開いた。
今度はゆっくりと、聞き取れるように。



「……………俺、なんだ。…アイツをここまで追い込んでる原因の、『友人』だった奴は」



一陣の大きな風の音が、沈黙をかき消す。
その間、ガッシュの思考はピタリと止まっていた。


今、は何て言ったのか。

それは、どういう意味なのか。


辿り着くのは、結局、『ガッシュが怒っている原因の清麿の友人というのが、だ』ということなのに。
それを頭の中で拒否している自分がいて。


(だって)


グラグラする視界にを見据えて、混乱する頭の中で言い訳を始める。


は清麿に悪口が飛ぶ教室の中で………一人、何も言わず、顔を歪めていて……)


ガッシュの中で広がっていた『清麿の友達作り大作戦』。
その初めの一人にしようと、鞄の中から考えていたのに。


楽しみに、していたのに。



「な…ぜ…?」



分からない。
が、何故、清麿を?
そもそも清麿のいじめの原因なのなら、何故、あのとき顔を歪めて?

ガッシュの中に多くの疑問が沸く中、はただただ、苦笑するだけで。



「…『何故』は言い訳にしかならねぇよ。大切なのは…結果だ。俺が、高嶺の今の状況を作った……それだけだ」



ガッシュを見ていたはずの紅の瞳は、空に移されていた。
教室の窓から見ていたものと同じ、青い空を。
届かない、遠い空を。



誰も、誰をも近寄らせないような瞳で。













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