「ところで諸君。相談があるんだが」



朝御飯を食べ終わった後、深刻な顔をしてそう話し始めたのは父、寿。
あまりにも真剣な声色に辺りは静まり返り、皆が彼に視線を向けた。
両肘をテーブルにつき、手を組む姿はまるで会議中の社長。
彼はゆっくりと、重々しく口を開いた。




「今日の晩御飯……娘誕生パーティを開きたいと思うんだが……どうかね」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「……………………うぇ?」



雰囲気と全く関係ない言葉。
あまりの違いにが変な声が出た。

瞬間、辺りは新の笑い声に埋め尽くされた。



「アハハハハハハハッ!!!グッジョブ!!面白いっ!!座布団!座布団をやろうっ!!!君、君に座布団二枚!!」


「はい分かりました」



の座布団が増える。
お陰で座高が高くなった。
断るわけにもいかず素直には座り、心の中だけで「笑点か」とツッこんだ。
未だに新の笑いは止まらない。



「あ〜…ウけたウけた。あ、親父、親父の意見、俺賛成な」



涙を拭いながら言葉を出す。
そこではようやく、父の言葉を思い出した。
寿はもはや真剣な空気をなくし、笑顔で子供達を見回した。



はどうだい?」


「僕も賛成です。というか、僕がやってもらったんですから、にも開いてあげるべきだと思います」


「うん、じゃあ決定だな」


「……て、え?え?」



の隣で微笑んで頷く
そしてを無視して話は簡単に進んでいく。
ポカン、としていたらもう三人は「御飯はどうする」「飾りつけは」「そういえば生活用品が」と次々と話題が出ている。
気付けば置いてけぼり状態だ。



「い、いや、あの、別にパーティとかそこまでしなくても…一応、最低限の生活用品もあるし」



今更ながら声を出す。
そこに返ってきたのは呆れ顔二つに苦笑一つ。



「…最低の生活用品はあのバッグの中だけなんだろ?少なすぎ!今日は買い物デイに決定だ!んでもってパーティ決定だ!な、親父」


「そうだな。私が仕事している間、お前達三人で街まで買い物に行っておいで。ところで新、今日大学は?」


「サボる」


「…まぁ、いいか。どうせ計算してるんだろうから」



しっかりサボリ宣言する息子。
あっさりサボリを認める父親。
いいんでしょうか、と苦笑を零す

いいの?ねぇ、いいの?と冷や汗を流す
しかし、の声は届かない。



「じゃあ決定。俺の愛車で街に買い物!親父、後何か必要なものは?」


用のスカートは必須だぞ。今日のパーティは娘誕生を祝うものだからな」


「いや、あの、スカートは俺嫌いなんだけ」


「了解!任せとけ!にぴったりのスカートを新調してやる」



新は親指をグッと立ててウインクまでして了解した。
スカートを着たことがないが声をあげるが、誰も聞いてない。
が優しく、ぽんと肩に手を置いた。



「…諦めましょう」


「な、なんでこんなことに…」



決めたら止まらない紅橋親子。
同じ笑顔で盛り上がりを見せる彼らに、は遠い目をするしかなかった。

新はちゃっかり「のためのお小遣い」を貰い、ルンルンだ。



「おし、9時にここ出るからそれまで皆準備しとけよ!ちなみに今日の洗いもの当番はだからな」


「分かりました」


「……うぅ、分かったよ」


「特に!ある物をリストアップしとけよ!無いものは俺が判断すっからな」


「…うぇい」



もう止まらない。
全ての決定権は新に委ねられた。
は心の中だけで嬉しさと恥ずかしさの涙を流したのであった。











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