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新の真新しい紅の軽自動車に乗せてもらって二時間。 海辺から陸地へ陸地へと上がっていき、着いたのは都会だ。 あちこちに店やビルが犇めいて、下手をすれば建物のジャングル状態。 賑やかなその街に、はつい、ポカリと口を開けてしまっていた。 「…、口、開いてますよ」 こっそりとは注意したが、それでも開いたまま。 都会に縁がなかったにしては、海に行ったことの次に大きな事件だ。 しょうがないですね、と苦笑するに、運転している新はケラケラと笑って左へと曲がった。 ある駐車場へと入り、車を停める。 エンジンを停止させて、全員車から降りた。 「あ〜……やっぱ都会は遠いなぁ」 コキコキと首や肩を回す。 長時間の運転はやはり疲れるらしい。 う〜ん、と伸びをする新を横目に、も軽く肩を回した。 座る方も疲れたらしい。 「さて、。ある物リストを出して、俺に見せなさい!」 「う、うん」 疲れているかと思いきや、いきなりのハイテンション。 キラキラと瞳を輝かせた新に、はちょっと驚きながらもポケットからメモ帳の切れ端を渡した。 二着ほどの着替え、筆入れ、印鑑…等、二十ほどだ。 それを見た新の表情は、一瞬にして驚愕の表情へと変わった。 「お、おまっ!…どこが最低の生活用品は持ってるだっ!全然ねぇじゃねぇか!」 「え、そう?」 「どれ………あぁ、確かに少ないですね」 がキョトン、としてる間も新が額に手を当てて、顔を横に振る。 小さく「あぁ、ありえねぇ、ありえねぇよ」と呟いている。 あまりの落胆振りにも横からメモを覗き込む。 二人が並ぶと絵になる、ということをは今更ながら気付いた。 どこかの外国の人のようなと、彼より十センチほど背の高い今時の日本の学生。 彼ら二人、体型もすらりとしていて身長が高く、容姿も申し分ない。 (うーむ…お父さんも格好良いし……俺って凄い家族を持っちゃったんだな) 美形家族と美形友人。 そんな真実に少し気がひける。 そしてちゃっかり女性の目を引いている二人は何やらメモ帳を見て、ボンネットの上で違う紙に何かを書いている。 多分、買う物リストを作っているのだろう。 眼差しは真剣そのものだ。 あちこちからの視線は届いていない。 はぁ、と溜息をついたときだった。 いきなり二人の顔がいきなり上がり、視線が同時にに向けられた。 あまりの急な視線に、は車の前でビクリ、と一歩後ず去った。 と新がお互い目を合わせて、コクリと頷き合う。 そしてズカズカとに近づいたかと思うと。 「うわっ!?」 ガッという音と共に、無理やり肩を組んだ状態になった。 右には新、左には。 二人の片手がを包み込むように肩を抱く。 何事かと二人の顔を見上げれば。 鋭い瞳で一定の方向を睨んでいた。 (なんだ…?) 新は昔、やんちゃだったようだから何となく分かるが、あの優しい微笑みをばら撒くまで。 漆黒の瞳と銀の瞳の先を、は追った。 駐車場の入り口。 遠くてよくは見えないが、ニ、三人の男性がこちらを見てすごすご退散してる様子が見えた。 両隣から、溜息が漏れる。 それは安堵のものなのか、呆れのものなのか。 は分からないまま、落ち着かない様子で左右を見上げた。 「何?あいつら俺に喧嘩売ってた?」 この外見上、そんなことはしょっちゅうだ。 生意気だとか、何かムカつくとか。 いちゃもんをつけられて喧嘩を売られては買ったものだ。 今は怪我があるせいで身体は動かないから追い払ってくれたのだろうか。 そんな考えで質問をしたのだが。 返事をしたのは彼らの溜息だった。 「…お前なぁ……」 「…残念ながら喧嘩ではありません」 「え、違うの?」 どうやら違うらしい。 しかも溜息をつくほどの間違いらしい。 新は「まだ分からないのか」と頭を抱えた。 「あいつら、お前を性的対象として見てたんだよ」 「せいてき?」 「だから!女として見てやがったの!で、あわよくばナンパしようとしてたの!」 ベシベシと頭を数回、平手で叩かれた。 いや、撫でたんだろうか。 とにかく不器用にやったせいで髪はグチャグチャだ。 はその髪を手櫛で整えながら「まさか」と口を開いた。 「考えすぎだよ。どう見たって俺男なんだし」 「…男が好きっていうモノ好きさんもいるんですよ?」 「俺だったら、お、お兄ちゃんかを狙う」 「…、嬉しいけどな?お前もうちょっと、そういう意識持っとけ?お兄ちゃん心配だぞ…ハァ…」 「…ハァ…頑張りましょう、新さん。今日は僕達で守りましょう」 「だな…」 呆れの溜息合戦。 二人して頭を抱える光景に、は「絶対違うってのに」と口を尖らせた。 彼らが去った今、真実は永久に謎のまま。 不本意なをよそに、二人は一致団結。 結局肩を組んだままで、ない物リスト作成は続くのだった。 |