「…買いすぎじゃね?」


「何を!普通はもっと必要だぜ?本当はもっとスカートが欲しいとこだよな、!」


「そうですね〜…全体的に可愛い服が少ないですよね」


「似合わないっての!それに傷が見えるから!」


「世の中にはスパッツってのがあんだよ


「でも俺はズボン派なの!!」



街に来てから数時間。
昼御飯を食べ、あちこちに買い物に行ったら三人の両手には荷物がどっさり。
洋服から下着から生活用品など、新が「必要だ」と思うもの全てを買い込んだ。

ちなみに服はの好みの服が八割、新とが見繕った服が二割。
シンプルで男物を好むに新がしっかりと可愛いデザインの服をコーディネートして勝手にカゴに入れたのだ。


こういう買い物を通して、三人は随分と仲良くなっていた。
特には上記のようなことから、もはやと新に遠慮することはなくなっている。
見せる表情も多くなってきていた。





家族としての表情は父の虐待が始まったときに

友人としての表情は清麿と喧嘩してから封印していたモノばかりが溢れ出て





(この感覚は、懐かしい)


嬉しい、幸せという感情が心を満たすのに。
それと同時に感じる恐怖と不安。

いつかこの幸せが消えてしまったら。
自分が消してしまったら。


やっとまた出逢えた、優しい光が消えてしまったら。


(だったらいっそ…)








が声をあげた。
紅の瞳を、彼の顔へと向ける。

彼は、顔を少しだけ歪ませていた。



「自分が傷つくのを恐がって…それで距離を取ろうとは思わないでくださいね」


「…っ」



銀の瞳が悲しく揺れる。
の心を読み取ったようなその言葉に、息が止まる。


(なん…で)


分かったのだろう。
動揺が隠せない。

すぐに顔が青ざめる
はそんな隣にいる少女を見て、苦笑しながらポンポンと優しくの頭を撫でた。



「…僕も、同じことを思いましたから…新さんに拾われたときに……そのとき、同じように怒られましたから」


「…新さん、に?」


「ええ。…僕も拾われた身、でしたからね。それに…僕は………」



銀色の瞳が、遠くを見る。
懐かしむように、遠くを。












暗闇に閉ざされた世界で見つけた光が


嬉しくて



恐くて













「…『夜空』、が関係ある?」



人とは違う何か。
未だに隣に立てば感じる、の『違和感』。
それを昨日、その言葉にした。

瞳を合わせれば揺らぐ月。

それは確信をついたと同じことだと、告げていた。



「…僕は『夜空』なんて、綺麗なものじゃ、ありませんよ」



そんなに綺麗なものじゃない。
もっと汚れているモノ。

もっともっと、汚れて。








そう、アイツのように










ぐっとの手を握った。
自分よりも大きく、ガッシリとした手。
遠くを見ていた月が、同じ色の髪を映す。
紅の瞳はしっかりと、彼を見上げた。



「俺は、お前が誰だろうと、何だろうと。お前が『友人』でいてくれる限り、何だろうと構わない」



命を、心を救ってくれたのは。
『夜空』。


それは変わらないのだから。



「俺だって汚い。汚れてる。生きてく価値なんてないかもしれないし。だけど、そんな俺を救ってくれたのはだ。あら…お兄ちゃんだ。お父さんだ。それは変わらねぇ」



もしかしたら人間ではないのかもしれない。

それでも構わない。


もしかしたら酷いことをしてきたのかもしれない。

それでも構わない。

それは過去でしかないのだから。



「俺にとって、どんなことも受け入れる。お前が受け入れてくれたからだ」


「…


「過去は過去。これからはこれから。これからが間違えた道に走りそうになったときはお兄ちゃんと止めるだけ。勿論言いたくなかったら言わなくていい。ただ、俺は待つだけだ」



最初から自分の『闇』の部分を曝け出す勇気は誰にもない。
も躊躇した。

だからこそ待つ。
それしか出来ないから。



「おーい、お前ら何イチャイチャしてんだ〜。次行くぞ次!!」


「まだ買うんかっ!」


「当たり前だ!」



遠くからの兄、新の叫び。
はハァッと溜息を吐いてから、の手を引いて走り出した。



「行くぞ、



固く握られた手。
それに引かれて歩き出す足。



「………ありがとう。…近いうちに、話します」



小さく呟かれた言葉。
は振り返って、満面の笑みで返してみせた。












影は、闇は




忍び寄るモノ















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