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自動ドアが大きな音と共に壊れた瞬間。 はぎゅっと銀色の本を抱きしめ。 新はそんなを優しく、強く抱きしめ。 はの頭をポンポンと優しく叩いてから、受付の机から出てそこに立ち、玄関を睨んだ。 「逃げるなんて卑怯よぉ〜」 「逃げるも戦略の一つ、ですよ」 自動ドアを破壊したであろうマグカップとサラリーマンの姿が銀色の瞳に映る。 七三分けの髪は息と共に乱れているが、マグカップは平然としている。 そしての発言に、それは馬鹿にしたような笑いを零した。 「ハハッアタシと戦おうっていうの?アタシ強いんだよ、知らないの?」 「知りませんね」 冷静にツラッと述べる。 はそこにきて、ようやく机の中から顔を覗かせた。 ケラケラと笑うマグカップ。 (や、やっぱりマグカップが動いてる…) ヒヨコ色のそれに手足が生えているさまは何とも言い様が無いぐらいおかしい。 可愛いと分類されるであろう目は笑っていながらも戦闘態勢だ。 隣のサラリーマンの本がヒヨコ色の光を発している。 「アタシはマグーリ。そしてこの男は田中。私達二人が貴方達をめちゃくちゃに倒してあげる」 本が一層強く光を放ち始めた。 やばい、と本能が叫ぶ。 あまりの威圧感に、新も顔を出していつでも逃げられるような体制をとった。 「田中ぁぁぁっ!!!」 「いきますぅっ『ティオルネ』っ!!!」 サラリーマン、田中の声が響いた瞬間。 ヒヨコ色の光が本からどっと沸き起こり、同時にマグカップ…マグーリと名乗ったそれの頭からバケツ一杯分ほどの液体が飛んでくる。 はそれを横に跳んで避け、も新と共に買った荷物を抱えて机の下から抜け出した。 ドォォッという音と共に液体は机に命中し、それを跡形もなく溶かした。 「つ、机が溶けたぁっ!?」 「うげぇっマジでっ!?」 と新が冷や汗をかきながら溶けた机を見る。 確かにあったはずの受付用の机はもはや液体となっている。 辺りからは白い煙が少量出て、明らかに溶かしたことを証明したかのようにジュウジュウと音が響いた。 はフム、と瞳を動かして考えをめぐらせる。 「…なるほど、強い酸の液体で物体を溶かす能力ですか」 「れ、冷静だな…荷物溶けてたら危なかったぞ、マジで」 「お、お兄ちゃん、それどころか俺達避けてなかったら俺達が溶けてたって話だって!荷物はいいって!」 「馬鹿、折角買った荷物だぞ!?お前の可愛い服もパァなんて俺は認めないからな!」 「むしろそれは溶けてもいい部類だから!!」 驚きに慌てているせいか発言もテンションもおかしい。 新の変な考えに、がどうにかつっこむ形。 しかも荷物が溶けないように隅へとおき始めているあたり、実はまともに脳が働いているのかもしれない。 微妙な空気に、は溜息を吐いた。 「…貴方達はアタシを馬鹿にしてんの?」 恐怖に慄くかと思えば変な会話が飛び交う三人。 実際は二人がおかしいのだが、そんなことは関係ない。 自分の技を見て冷静に対処する自分と同類であろうモノは見ているだけで苛々してくる。 また、傍にいる人間もおかしい言葉を発するせいで苛々を増やさせた。 マグーリが睨みつける先、は銀色の瞳を細めた。 「…それが何か?」 「−−−−っこの…っ!!」 不敵な笑み。 喧嘩を売るその言葉。 マグーリはすぐに田中を見上げた。 彼もわかっているようで、瞳を真っ直ぐにへと定めている。 口を開いて言葉を発しようとしているところを見て、またへと視線を向けた。 「『ジ・ティオルケア』!!」 先程とは違う呪文。 現れたのは複数の液体の球。 それがこちらへと降りかかってくる。 「!新さん!ちゃんと避けてくださいね!!」 「うぇ〜いッ!?増えたぞオイっ!?」 「うぉおぉっ!?」 降り注ぐそれを避ければ床に穴が開く。 次々と足場が消える中、三人は必死でそれを避けた。 (こ、このままじゃマジで足場なくなって拉致があかねぇ!!) は銀に輝く本を持ちながら、先程読んだ言葉を思い浮かべていた。 あの、光輝いていたあの言葉を。 (確か、唱えればが魔法を使って反撃できるから…本に書いてた言葉は確か…!!) 開く暇はない。 だったら思い出して叫ぶだけだ。 「ぁっ!!唱えてみるからなっ!!」 「っ!!ええ、お願いします!!」 銀の光が強く本を包み込む。 の声に、は酸性の液体であろう球を避けてから、両手を前へと掲げた。 何が出ても、いいように。 「ええと、確か…っ!だ、『第一の術 ウィグル』!!!」 カッと強く本から光が放たれた。 同時に沸き起こる、何か。 の手の向こうのマグーリは。 「っ!?ああぁぁぁぁああぁぁっ!!!!?」 風の刃に、切り裂かれた。 |