それからというもの、高嶺清麿とは仲良くなった。

近所だった、というのもある。
同じクラスだった、というのもある。
全てが偶然にしか過ぎないが、二人はよく一緒になって遊んだ。

最初、友達と遊ぶ、とういことが初めてで戸惑うことばかりだったも、しばらくすると慣れてくるものだ。
彼らが遊ぶと、他の子供達もつられるように遊んでくれるようになった。


そしては、高嶺家に遊びに行くことも増えた。

優しい母親と、面白く、頭が良い父親。
どちらもを可愛がってくれた。
何度かお泊りのお誘いを受けるほどだ。

だが、はそれだけは断った。



「お父さんが、帰ってくるから」



そう笑って。

清麿の父と母は、それを聞いて何か言いたげだった。
だが、強制的に泊まってとは言わないだけ、には有難かった。


家に帰れば、冷たい食事が待っている。
父が帰ってくれば、苦痛がやってくる。

父以外の温かみを知ったにとっては、苦痛なことこの上ない。
だが。


(お父さんを一人になんかできない)


自分に強くあたる。
力で平伏せさせ、己の欲望のままにを抱いたりしても。
もう、優しい父親の影すら見えなくても。


(お父さんは、お父さんだもん)


過去の優しい思い出がを縛りつけた。


いつか戻ってきてくれる。
いつか、優しく抱きしめてくれる。

だから嫌われたくない。
お父さんは絶対だもの。
お父さんが、好きだから。


淡い期待と、捨てられたことを考えたときの恐怖。
それが入り混じる紅の瞳。
父である彼は、それを見るたびに不機嫌になっていく。



だから、もう。
夜になれば目隠しをされ、父の顔など見ることが出来なくなってしまっていた。











無事中学生になることが出来た。
あの時からずっと仲良く、親友となり同じ中学に通うことになった二人。



〜サッカーやろうぜ」


「おーう」



は男子学生の制服に身を包むことになった。
身体の傷があるからだろう。
父が用意してくれた制服がそれだった。

清麿からは「いいのかよ」と笑いながら言われてしまった。
傷が曝け出されないだけマシだろう。
は何ともなさげに「いいんだよ」と答えた。


いつまでも変わらない関係。
ずっと続くと思っていた幸せ。


しかし、それはいとも簡単に崩れていった。






中学に入れば進路が関わってくる。
それはの父にしたら、世間体が関わってきていることと同じだ。
テストやら学力に対し、彼は口煩くなってくる。
同時に、点数が悪いと暴力が一層酷くなるようになった。

の学力とは反対に、明らかになる清麿の頭の良さ。
学年で、それどころが日本という国の規模。


彼は頭の良さを鼻にかけることはない。
精神はただの少年なのだ。
にも勉強を教えてくれるが、終われば一緒に遊ぶ。
屈託もなく、ただ普通に。


だが。



清麿のように、頭が良ければ…父は元に戻ってくれるのだろうか。
優しく、頭を撫でて、抱きしめてくれるだろうか。



勿論、清麿のような頭などどこにもない。
どんなに勉強しても、上の中。
父は、それだけでは納得してくれない。

彼が望むのは学校の頂点。
だが、それは清麿がいる限り、無理な話で。



(…どうして?)



清麿の両親は、教育に厳しいながらも、頂点でなければ暴力をする、ということはない。



(なんで、清麿なの?なんで、俺は…)



どうしてこんなに頭が悪いの?
どうしてこんな容姿なの?

どうして…どうしてこんな……





溢れ出す、嫉妬の感情。
こんな考えはいけないと、分かっていながらも溢れ出る。

何事もなく笑って過ごしている清麿が大好きで、憎い。


抑えこむ感情。
それが爆発するのには時間がかからなかった。





中間テスト。
遊びを断念して一ヶ月前から取り組んでいた勉強。
今度こそは、と思っていた。


結果は二位。


あと、一点足りなかった。
そして頂点に立つのは、高嶺清麿。



(なん…で)



彼はとは違い、遊んでいたはずだ。
休み時間も、放課後も。
それなのに。


感情が、黒に染まる。
どろどろとした、気持ち悪いそれ。
家に帰って、待っているのは…頑張ったことすら認めてくれない父の仕打ち。




!お前凄いじゃん!二位!」



自分とは逆に、の順位に喜ぶ清麿。
その笑顔はあの時と同じ、太陽のような光を放つのに。


無邪気なそれは


こんなにも




こんなにも……っ







「うるせぇよっ!!!!!!」



気がつけば口にしていた叫び。
止まることなき口。
爆発した、醜い感情。

初めてのことに、止める術すら見当たらない。



「お前はいいよ!どんなに遊んでても、頭良いから簡単に一位を取れるっ!!でも俺はっ!!一ヶ月遊びを断念してもお前を越せないんだっ!!!!!!」



嫉妬。
八つ当たり。
そんな言葉でこの感情を括れたら。



「そうやって俺と優しくするふりして、嘲笑ってんだろっ!!!?蔑んでんだろっ!!!?笑えよっ笑えばいいっ!!!!!!」



大好きだよ。
大好きだよ。

だけど。



「お前なんか………っお前なんかっ!!!!!」





トメラレナイ





「大っ嫌いだよぉぉっ!!!!!!!!!!!!」












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