|
は喧嘩をしながら生きた。 銀の髪と紅の瞳は、どうやら癪に障るらしい。 最初はズタボロにやられていたものの、慣れればどうということはない。 どうやら身体は戦いに向いているらしい。 戦い方はすぐに覚え、気がつけば一目置かれるところまできていた。 学年があがり、しばらく経った頃だった。 父から宣告があったのは。 「もうお前ともおサラバだな」 いつものように暴力を振りかざしながら、彼は言い放った。 身体に痛みを感じながら、目隠しされたままの瞳を動かし、もがく。 「…ああぁぁぁっ!!!!」 肉の焦げる匂いが自分の肌からする。 煙草を押し付けられたのだろう。 熱さに、悲鳴をあげる。 「イイ女を見つけたんだ…俺はこれから、そいつと第二の人生を歩む」 誰だ、とか。 それはちゃんと想いあってのことかとか。 尋ねることは多くあった。 だが。 「いあぁぁぁっ!!!!」 痛みで、それは言葉にならない。 彼は、笑みを含んだ声で、言い放つ。 「お前とはもうお別れだっ!お前は捨てていくっ!!お前なんて俺には必要ねぇんだっ!!!!」 捨 テ ラ レ ル 目の前が真っ暗になる瞬間だった。 父である彼の言葉が、頭から離れないで何度も繰り返す。 身体にはまだ、痛みが走り続けている。 (おと…うさん…が…俺…捨て…) 理解しようとしない感情。 拒絶の言葉が頭を動かそうとしない。 (だって…だって……おとうさんは………) 『が死んだ今、俺が、お前を守ってやるから』 『ごめん…ごめん…』 『おいで』 『ん?背伸びたなぁ』 「お前なんか、俺の目の前から消えちまえばいいんだぁあっ!!!!!」 戻って、こない。 あの優しい声も。 あの優しい笑顔も。 大きな、頭を撫でる手も。 ギュッて、優しく抱きしめてくれる腕も。 信じてたのに いつかあの時のお父さんに戻ってくるって 信じていたのに……… 涙は溢れなかった。 悲鳴ももう、口から零れなかった。 絶望を叩きつけられたは、目を閉じていた。 感情は、溢れることなく。 むしろどんどん冷めていって。 「…一週間だ。一週間で引っ越す。その間に荷物をまとめろ。学校の方も手続きするんだ」 興奮していない、冷静なときの声。 もう、暴力は終わったのだろう。 上に圧し掛かっていた重みが消える。 「…はい」 「二人で引っ越す、ということにするからな。二人で出発した後、お前の好きなところで捨ててやる」 「…………はい」 現実味を帯びてくる話。 はただ、返事をすることしか出来ないでいた。 身体は疲弊し、身動き一つ出来ない。 目の前には闇しか映らない。 唯一の光さえ、消えていく。 それが、今から丁度一週間前の出来事、だった。 思い返せば、苦笑しか零れない人生だった。 何故、ああも父が戻ると信じていたのか、未だに分からない。 どう考えたって、戻る気配すら見えなかったのに。 清麿の件だってそうだ。 何故、あんなに醜い感情に支配されなきゃいけなかったのか。 (全くもって、失敗だらけの人生だったな) ワイシャツを捲れば見える、多くの傷跡。 今日の喧嘩のものもあるが…ほとんどは父である彼がつけたものだ。 よくもここまでつけたものだ、と感心すら零れる。 傷口をなぞれば、何故か湧き上がる感情。 (…あぁ、そっか。…俺、あの人に愛して欲しかったのか…) だからこそ、清麿にすら嫉妬した。 自分の中心である父に、好かれるような、素敵な人だったから。 でも、もう。 そんな話は、過去の話。 関係の、ない話。 闇の中、ぼんやりと空を寝転んだまま見上げる。 雲が厚く、光は零れない。 まるで自分の人生のようだ、とは鼻で笑った。 昔から言われてきたことが、頭を占める。 お前には居場所がない、と。 生きている価値が、意味がない、と。 消えてしまえ、と。 いらない、存在だと。 (…うん、このまま消えてしまえたらいいのに) もう身体は動かない。 傷は昨夜のものと、喧嘩のものとで結構深いらしい。 精神的にも、もう疲れた。 (…風に、なれたら) 瞳が閉じられる。 この世界に意識を置くことは、もう無理だ。 は、涼しい風を受けながら、意識を手放した。 |