散歩したら



棒に当たるかもしれない












愛読書は求人情報誌です、いや、マジで!!












「…ハァ、朝から酷い目に遭った」


「アハハ、お疲れ〜」



銀時と新八が朝起きたときよりやつれて見える。
が、そんなこと知ったことではない、
はいつもどおりケラケラと笑って、元気な神楽と定春の隣を暢気に歩いていた。

あの後もスナックの中では混沌な会話が行われていた。
が女だと知った途端「私ヲ騙シテタナンテ…!コノ青臭イときめきヲ返セ!」とキャサリンが嘆き。
それを「お前が勝手に脳内変換したんだろがァァ!」と全力のツッコミで返す銀時がいたり。
さすがに女性が泣いてては駄目だとが彼女の傍に行って慰めたり。
しかもその慰めが「キャサリンさんは美人さんで、俺もお嫁さんに欲しいけど…俺が女なばかりに、ゴメンな。だから、俺はキャサリンさんが幸せになれるよう祈るしか出来ない」などと口説き文句のようなことを言うから。
キャサリンが「…コノ際、女デモイイ」とか言い出すからまたギャンギャンと騒ぎが起こるわけで。
結局お昼までご馳走になってまで、スナックで騒いでいた。



「でもおかしいアル。あれのどこが美人アルカ?」


「え?美人じゃん。俺、目には自信あるよ?神楽ちゃんも可愛いし、銀時と新八も格好良いし。あ、定春も勿論、可愛いよ」



神楽の言葉には当然、と微笑んだ。
誉められた定春も満足げに小さく吼える。
可愛い、と言われた神楽は素直に嬉しそうに笑ったが、一方男子組はというと。



「…銀さん、もしかしてさん、昔からこんなんなんじゃ……」


「あー…何で直らないかな……むしろ悪化したんじゃねェかコレ」



頭を抱える始末だった。
銀時には過去のの姿が過ぎるほど。



「もうアレなんだよ、アレ。昔から見る目がねェんだよ。ハゲ頭でボケボケでエロスケベなジジィにさえ格好良い言ったヤツだから


「……あちゃあ……」



新八はその言葉で酷く納得してしまった。
自分はともかく、銀時やお登勢らに格好良いやら美人だとか言った意味が。
恐らく、のセンスが根本的にズレているということが。

後ろでと神楽が仲良く笑いながら歩く姿を見つつ。
銀時は懐から前より膨れた財布を取り出した。



「…まァ、でも、美人だ何やら言ったお陰でババァがお駄賃くれたからいっか」


「そういうことにしましょうか」



どうやら天然のお褒めの言葉に少しは気を良くしたらしく、これから住むには何かと要るだろうと少しお金を恵んでくれたのだった。
が断ろうとした途端、銀時らが阻み、得ることに成功。
また、働き処に困ったらここで働いてもいいと言ってくれた。
ある意味、渡りに舟、だ。

そうこうしている間に繁華街へとやってくる。
昼を過ぎれば、人が溢れるそこ。
がおおお、と声を上げる中、銀時は後ろ頭をかきながら口を開いた。



「神楽ァ。と手ェ繋いどけ」


「銀ちゃん、私そんなに子供じゃないアル。馬鹿にしないでほしいネ!」


「あー違う違う」



子供扱いに拗ねる神楽に、銀時は誤解だ誤解、と訂正した。
はあちこち珍しげにキョロキョロと見回している。
やはり、ここも変わってないなと思いながら口を開く。
面倒そうに。



「ソイツが迷子になるから」


「…へ?」


「いや、そいつ極度の方向音痴だから。子供以上に厄介だから」



ビシリと指をさした先には
意外、と驚く新八の横で、銀時は当たり前のように言い放った。
その間にも聞いてないようで、キョロキョロする子供より厄介と言われた人物。
目をいつも以上にキラキラ輝かせて、はニコニコと笑った。



「やっぱ都会だよな〜江戸って。どっかに求人情報誌ないかな、求人情報誌」



嬉しそうに笑って、現実的なことを言う。
確かにこのままでは、目当てのものを見つけたら走ってどこかに行ってしまいそうだ。
新八が納得する中、神楽も離れないように手を繋いだ。

いきなりの手の温もりに、キョトンとするに。
神楽は少しだけ見上げて手に力を入れた。



「はぐれちゃダメヨ。求人情報誌ならマダオから貰えばヨロシ」



何やら、そういう心配をかけているらしい。
言葉から判断出来る情報はコレだけ。
はよく分からないながらも、その心遣いに嬉しくなって、神楽の頭を空いている手で撫でた。



「ん、了〜解。…で、マダオって誰?」



気になったのはその単語だ。
聞いたことのないその人物がそこらにいるんだろうか。
神楽は当たり前とばかりに胸を張って口を開いた。



「マるでダめなオっさん、略してマダオアル。ニートヨ、ニート」


「ニードル?」


さん、ニートですニート。いわゆる仕事してない人。僕等の知り合いです。彼なら求人情報誌持ってるでしょうから」


「ふーん?」



大してピンと来ないが、自分と同じ状況、いわゆる無職の人がいるのだろう。
そして、きっと自分と同じく求人情報誌が愛読書なのだろう。
彼らの知り合いであることが見て取れる。
それだけ分かっただけで、は首を傾げることで終わった。



「とにかく求人誌よりも買い物が先だからな〜。店ん中入るときは定春は外で待つことになるけど、それまで手綱離すなよ神楽ァ」


「大丈夫ヨー。の手もちゃんと離さないアル」



銀時の言葉に、神楽は両手をあげて見せた。
片手には定春を繋いでる手綱、もう片手にはと繋がれた手。
それを確認してから、よし、と声がかかった。



「じゃあ買うかァ。お前ら気合入れろ気合〜」


「アハハ、よろしく〜」


「銀さん、余計なの買わないでくださいよ。お登勢さんのお陰で少し余裕が出来ましたけど、そんなにないですからね」


「大丈夫だー。チョコをちょこっと買うぐらいだから


「余ったら買ってください。ってか親父ギャグサブっ!!


「アハハハハハ!!銀時、面白いわ〜そのギャグ」


「笑っちゃうの!?そこで笑っちゃうの!?沸点低っ!!」



そんな会話が響く昼の繁華街。
四人と一匹はそこに次第に紛れていった。
買うべき物を、買うために。












余計なものは買わないと、そう言ったはずだというのに。
夕刻。
四人の両手、一匹の背中には多々の荷物が積まれていた。



「…晩御飯のおかずも買ったとはいえ、この量はおかしくないですか…」


「言うな。もう何も言うな。これ以上言ったら心がポッキーになっちまうから



布団セット、服、下着。
タオルやら歯ブラシやら、食器やらそれだけならよかった。
これに加え、晩御飯のものも買っただけならよかった。
が。



「何でお酒とか甘いものとかお茶とか、たっぷり買うんですか…」



余ったお金に少し余裕があったために、色んな物を買ってしまった。
お酒、甘いもの、お茶。
何故か結野アナウンサーのフィギュアまで。
(これは明らかに銀時の私物だ)


ただでさえ重く、嵩張る荷物に、増える多くのもの。
従って、四人は勿論、定春までも荷物を背負うことになってしまった。



「いやぁ、悪いねこんなに買ってもらっちゃって」


さんのせいじゃないですよ。これほぼ、銀さんのせいです」


「ソウヨー。定春もいい迷惑アル」


「ワン!」


「しょうがねェだろ…結野アナが俺を呼んでたんだよ。酒と甘いもの買えって。フィギュア買えって」


「「幻聴ですよ(アル)」」


「わーってんだよンなこたァァァ!!そうですゥ、はしゃぎすぎましたァ!銀さんが悪かったですゥ!!」



口々に責められて、銀時はついに逆ギレしてしまった。
ただでさえ重くてイライラしてるというのに責められては溜まったものじゃないのだろう。
しかし、どんなに怒っても距離が縮まるわけでもない。
まだまだ、万事屋までは遠い。



「まぁまぁ、そんなに体力使わないで。のんびり行こう、のんびり。頑張ろう〜」



は文句を言わず、ヘラヘラと笑いながら確実に足を進める。
時々、後ろから「〜!万事屋はそっちじゃないアル!」と声がかかったりするあたり、やはり方向音痴であることには変わりないが。

とにかく、大荷物を持ってフラフラしながら帰る万事屋のメンバー。
さながらその姿は、買い溜めする主婦達のようだったらしい。
と、後、その姿を偶然見ていたマダオは語る。



そしてその晩。
美味しい晩御飯を食べつつ、お酒を呑みつつ。
どんちゃん騒ぎを起こして階下のお登勢に怒られたりなんかしたり。
キャサリンが色気をかけてきたり。

銀時が酔いつぶれたり。
神楽が暴れだしたり。
定春が噛み付いてきたり。
新八が音痴な歌を披露したりと。

多くのことがある中、はお酒を呑みつつも笑いっぱなしで。



そうしている間に、二日目は終わったのであった。














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