仲が悪いのは




良い証















本当に嫌いだったら口すら聞かないっていうけど、それ、どんだけ嫌いなん?俺だったらまず話すどころか、見ないね!!













買い物は人数が多ければすぐ終わる、というわけではない。
多くいるからこそ、リクエストは多い。
一人はいちご牛乳へと突っ走り、一人は酢昆布へと突っ走り、残った二人は財布の都合で色々考えるだけだ。



「神楽ァ、お前酢昆布食い過ぎだろ。もうちょっと控えろ!俺のいちご牛乳が買えねェじゃねェかァァァァァ!!


「銀ちゃんこそ、いちご牛乳飲みすぎヨ!いい加減控えないと全部の毛がピンクに染まるネ!そして来週からピンク魂が始まるネ!そんなん嫌ヨ!


「それ言うならお前、お前もアレだから!酢昆布食いすぎてお前の全てが緑色に染まるからァァ!!来週からお前、神楽じゃなくて緑楽になるからァァ!!」


「じゃあどっちも却下ですね、さん」


「う〜い。じゃあ今日は代わりに牛乳と酢を買うかぁ」


「「ええええええええ」」




さっさとカゴから物を取り出して返すのは新八。
笑いながら、代わりのモノを入れるのはの役目。
しかも、重要な甘みと海藻抜きの液体を入れてしまった。
酢があるからお稲荷さんも出来るか、と油揚げを取り出したにブーイングするのは銀時と神楽。
しかし、こうなったのは財布事情と彼らの喧嘩に原因があるのだから仕方がない。



「おま、それはねェよ。俺からいちご牛乳とったらどうなるか分かってンの?糖とったらどうなるか分かってンの?全てが真っ白だよ?ホワイトホールだよ?


「え、何。宇宙になるの?銀さん宇宙になるの?


!私から酢昆布とったら何も残らないアル!ただの辛辣毒舌チャイナ娘になっちまうヨ!


「それでも十分キャラが成り立ってるよ。いいよ、今回からそれでいきなよ神楽ちゃん」


「じゃあホワイトホールを見ながら、ただの辛辣毒舌チャイナ娘になった神楽ちゃんと新八と俺とでお稲荷さん食べようか。会計行ってくる〜」


「いちご牛乳〜」


「酢昆布〜」



どっちが子供だ。
新八が呆れる中、はケラケラと笑って会計へと入っていく。
いや、どこか不敵な笑みだ。
何事か、と思う中はカゴの中から一つのモノを取り出して見せつけた。



「大丈夫。俺の心の癒しのお茶はしっかりと買ったから


「「・・・・・・・・・・何ィィィィィィィィ!!!?」」



あぁ、なるほど。
こっちも子供だった。


新八の感心をよそに、銀時と神楽がギャアギャア騒ぎ出す。
店員さんはいい迷惑だ。
逆に見せつけたはケラケラと笑ってもうレジで会計してもらっている。
新八はただただ、頭を抱えざるを得なかった。



ここ一週間で分かったのは、どうやらという人物は銀時と同じく、攘夷戦争に関わっていたらしいということ。
歳は新八より少し上だということから、かなり幼いころに体験したのだろう。
(どうやら彼女は沖田さんと同じ歳らしい) (銀さん情報によると、18だとか)
家事は少しおおざっぱながらも、しっかりと行っている。
女、という意識がほとんどないし、どこか子供でもあるし。
そしてやたら笑うことが多い。

どちらかというとボケ寄りの天然馬鹿だし。
方向音痴だし。
カテキン中毒で下手すれば一日中お茶飲んでいるし、一週間に一回(水曜日)がチョコ中毒の日だし。


ツッコミの立場である新八にとっては結構疲れる相手だ。
しかし銀時とはまた違う、ヒトを惹きつける力がある。



「はいじゃあ帰ろうか〜」


「てめ!俺の金だっつのに!いちご牛乳がねェってどういうことだよ!俺のポーションがねェってどうなんだよ!


「私のパイングミがないヨ…TPがないヨ…」


「じゃあ俺のポーション並びにパイングミであるお茶を分けてあげよう」


「「いるかァァァァ!!!!」」


「アハハハ」




特に、この微笑みは。


煩い三人組の隣で、新八が大きく息を吐いた。
三人になったときはツッコミが少なくても話は進むので、一息ついても大丈夫だろう。
未だブーイングの嵐が起こる中で、はまた「もうブーイングやめろよ〜、ん?ブーイング?ムーミング?」とすっとぼけている。

…というか、ムーミングって何。
ムーミンの現在進行形?


ツッコミは後ろに任せて、新八は荷物を手にとってスーパーの自動ドアを潜り抜けた。
そしてドアの向こうにある景色を見た途端。



「…」


「ん?どうかした新八?」



何も言わずに自動ドアを閉じる。
不思議に思ったが未だあちこちを飛ぶブーイングを避けながら、新八の様子に首を傾げる。
彼の表情は強張っていた。
何かに脅えるように。



「ふ…ふせろォォォォ!!」


「え、えええ!!?」



ドォォォォン


響く大きな轟音。
新八の声はそれに溶けずして届いたが、一体何のことかサッパリ分からない。
目の前の自動ドアが破壊され、爆音と破片が降り積もる世界を視界の端に映しながら反射的にふせた。
勿論、荷物と傍にいた神楽を庇いながら。



!」


「神楽ちゃん、平気?」



背中にパラパラと降る破片。
下にいる少女に確認を取れば、しっかりと頷く姿がある。
そこに安堵の息を零し、は頭を撫でてから辺りを見回した。



「銀時、新八、大丈夫か?」


「イツツツツ……」


「いたた…ハイ、大丈夫です」



二人はガラスの破片を被りながらも怪我はないようだ。
店内は商品やら何やらが散乱して悲惨な状態。
他の人々もどうやら無事のようだ。

こんなところにテロでも起こったのだろうか。
現状を把握するにも、何も手がかりがない。



「御用改めである!!」



どこかで聞いたことのある低い声が外から響く。
途端に顔が歪む銀時を不思議に思いながら、割れたドアの向こう側へと目を向ける。
見たことのある黒い制服の団体が見える。
中心に立っている人物に見覚えがある。
そしてその隣に立っている人物の手にはバズーカ砲が見えた。

あちこちから、聞こえている。
彼らの団体の名前。

「真選組」と。



「あー…くそ。またお前らかァァ!!いい加減にしろ!俺達に恨みでもあンの!?あンのォォ!!?


「アレ、旦那じゃねーですかィ。相変わらず不死身ですねィ


「つか、またテメェかよ。邪魔だ、どけ」


「オーイ。それ褒めてないよ。旦那を褒めてないよ沖田クンン!ていうか多串君が邪魔。どけ



どうやら銀時と真選組は知り合いだったらしい。
でもどちらかというと、仲が悪いだとかそういう感じだろうか。
特に、銀時と土方の間にはピリピリとした空気が漂っている。
ポカンとしている中、新八は自分を起き上がらせて真選組へと大声をあげた。



「っていうか何するんですかァァ!!何!?スーパーにでも恨みがあるんですかあんたらァァァァ!!」


「あ、いや、新八君。ここに過激派攘夷浪士がいるっていう通報がな」



遠くで言い訳している男性と、沖田と呼ばれた少年は初見。
前者は気前の良さそうな印象を受け、顔がどこかの動物に似ている。
後者は亜麻色の髪と紅の瞳で、可愛らしい顔が印象的だ。
代表した三人の後ろには沢山の真選組が控えている。

見たことのある顔がチラチラ見える中、突然の浮遊感には首を傾げた。



「真選組!武器を捨てろォォ!コイツがどうなってもいいのか!」


「あれ?」



自分の体が浮いたと思ったら、首筋に冷たいモノがあてられている。
そして知らない男がいつの間にか自分の後ろをとっていて、叫んでいる。
前に見える真選組と神楽、新八が顔を青ざめさせる中、は一人何が起こっているのか分からないでいた。
むしろ。



「あれ、俺凄い!自分の力使わずして立ち上がれた!



と、変な勘違いをしていた。



「お前何言ってんのォォォ!?ってか何人質になっちゃってんだァァァ!!」


「え、俺人質?」




銀時が大きな声でツッコミ入れながら指をさす。
マナーとしては駄目だが、それよりも駄目なボケがいるから仕方がない。
は人質の意味を理解してから、ゆっくりと自分の状況を見比べた。

首筋にあるのは刃。
いつでも切れそうな肌。
頭をガッシリと押さえられ、その刃を避けることは無理。
そして、自分の動きを止めている男の言葉と真選組の硬直状態。



「…ああ!本当だ!」


「「「「「遅ェェェ!!」」」」」



ポンと軽く両手を鳴らして頷いた途端、全員からツッコミを受けてしまった。
万事屋メンバーは勿論、真選組やギャラリー、また、自分を押さえている犯人でさえ。
アハハ〜と軽く笑うをよそに、気合をいれたらしい犯人が鋭い瞳で真選組を睨みつけた。



「こんな少年の一人の命をも守れないんじゃ、何も守れねェよなァ?幕府の犬、真選組よォ…」



その言葉に、真選組のメンバーは怒りを込めた視線で後ろの犯人を睨みつける。
はぼんやりと、その光景を見つつ犯人の正体に溜め息を吐いた

恐らく彼は攘夷浪士。
攘夷戦争に活躍した攘夷志士の考えを持ち、今の世界を変えようとしている武士達だ。
ただ、真選組は幕府の忠実なる警察。
彼らが対立するのは言うまでもない。

誰も動けない。
人質があるからこその緊迫。
しかし、は平然と立って口を開いた。



「んー。残念」


「ああ?人質は黙ってろ!!」



元、攘夷志士だからこそ彼の思いも分からないでもない。
己が逃げるために、自分を人質に取ったのも分かる。
が。

どうでもよさそうに声をあげるに、苛々した男が声を荒げる。
は、小さく。

誰にも分からないように。
悲しげに微笑んだ。



「ごめんな」



その言葉と同時に、は肘を思い切り男の腹へとめり込ませた。
ドン、という鈍い音と、男の喘ぎ声が聞こえる。
次の瞬間、力のなくなった刀に手刀を入れ、地面へと叩き落とす。
金属音が響いた途端、はそれを蹴って遠くへと飛ばした。



「なっ!」



男が驚く声を傍らに。
そのまま体制を低くして足払いをかける。
ぐらりと前に倒れる男を避け、後ろへと回る。
地面へと叩きつけたそれに、彼の片手を後ろへと捻りあげて上へと乗って押さえた。



「イテテテテテ!!」



人質から一転。
犯人を押さえる側へ。

痛みに声をあげる男性に、はのんびりと声をかけた。



「やられるなんて受身、俺苦手なんだ〜。人質チョイス、ミスだったね。略してチョコボ


「どこを略したらチョコボ!?」


「アハハ、まぁまぁ」



お疲れさん。

ポンと捕まえられているのにツッコミをする彼の肩を叩きつつ、辺りを見回す。
銀時以外が、意外な展開についていけてないらしい。
しかし、いつまでもこの体制のままでもいられない。
とりあえず。



「うぉーい、副長!どうすんの?この人逃がすの〜?」


「逃がすな!!」



知っている土方を呼んで、万事終了。
スーパーの悲惨な状況を無視して、どこからか歓声が起こっていた。
















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