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人生山があれば 落下するときもあるさ 危機を乗り越えるために必要なものは血の滲むほどの努力と友情とえーと、あと何だっけ? 宇宙船がいきなり斜めへと傾く。 重力に従ったままの乗客はズルズルと床を流れていく。 勿論、自分達も然り。 どうやら操舵室が爆発したらしい。 操縦士も怪我をしているという情報がどこからか入り、乗客室は一種のパニックを起こしていた。 「んー、一難さってまた一難?あれ、漢字あってる?一男だっけ」 「それ息子が一人って意味でしょォォ!何こんなときにボケてるんですかさァァァん!!」 「こんなときにもボケは大事かなと。アハハ」 「わざと!?今のボケはわざと!!?」 悲鳴が響く中、は定番のボケ。 しかも意図的だから手に負えない。 新八もマメにツッコんでくれるが、さすがに笑えないらしい。 顔が真っ青だ。 「どなたか宇宙船の操縦の経験のある方はいらっしゃいませんか!?」 「もうホント誰でもいいから助けてェェェ!!」 確かに操縦する人がいないからこういう事態になっている。 しかし宇宙船を運転する経験を持つなんて、まず普通に生活する人には出来ない。 宇宙貿易とかしてる人物がいれば別だが…。 「…あ」 思い当たる人物が一人いた。 先程聞いたばかりだというのにすっかり忘れていた。 ポン、とが両手を叩く傍らで、銀時はすぐに目的の人物の髪を引っ張り始めた。 気絶していた彼に、何の遠慮もなく。 「!!イタタタタタ!!何じゃー!!」 しかも、思い切りダッシュ。 勿論髪をがっちり掴んでいるわけだから痛いに決まってる。 呆気に取られている新八と神楽、そして定春を置いて二人はコックピットがあるだろうそこへと消えていく。 もどうにかバランスを取って、同じように走り出した。 「さん!?」 「〜どこ行くヨ」 「コックピットを見学〜。…あれ?ピッ○コック?」 「それ恐い映画です」 走ってるときもツッコミは欠かさないらしい。 はケラケラと笑いながら二人の後を追い始めた。 道は一本道。 迷うことはない。 「にぎゃっ!」 「あ、ゴメンナサーイ」 その際。 自爆テロを行おうとしたリーダーの顔を踏んづけておいた。 (勿論ワザとだ) 「誰じゃー!?ワシをどこに連れてくがか?とのニート邪魔するんかー!?」 「テメー確か船大好きだったよな?操縦くらいできるだろ!!てかそれを言うならデートだ。アイツのボケそのままノってんじゃねェよ!」 達が追ってくる何メートルか前。 全力疾走している銀時はそのままサングラスをかけたもじゃもじゃ頭を引っ張り続けていた。 痛さにしっかりと意識を覚醒させた彼のツッコミまで担当だ。 のボケをそのまま受け入れてしまう、昔のままの彼に溜め息が出る。 「なんじゃ?おんしゃ何でそげなこと知っちょうか?あり?どっかで見た…」 青年も銀時の言葉に疑問を覚えたようだ。 船が大好きだというのは、この船の中で恐らくしか知らないはず。 サングラス越しに見上げて、己を知っているだろう人物を見る。 銀色の髪。 やる気なさそうな瞳。 昔、共に戦場を駆け抜けていた面影が残る横顔。 「おおお!!金時じゃなかか!!おんしゃなぜこんな所におるかァ!?」 ピン、と色んなものが通じる感覚。 パズルのピースが全部当てはまったかのようにスッキリとした辰馬は大声をあげた。 金時、と呼ばれた人物は自分を見ないまま走り続けているが、辰馬は逆に嬉しそうに笑い出す。 「久しぶりじゃのー金時!珍しいところで会うたもんじゃ!もおるし、こりゃめでたい!酒じゃー!酒を用意せい!」 同窓会でも行いそうな勢いで手を叩く。 この非常事態が頭に入っていないのだろう。 それ以上に。 ダコン 銀時は思い切り、辰馬の空っぽの頭を壁へと叩きつけた。 その衝撃でコックピットの扉が開く。 「銀時だろーがよォ、銀時!お前もし俺が金時だったらジャンプ回収騒ぎだぞバカヤロー」 再び気を失った辰馬をズルズルと引き摺る。 何よりも名前を思い切り間違っていることに怒りを覚えたらしい。 確かに金の魂を略したら色々引っかかる。 二人はとにかく煙がもうもうとあがるそこへと足を踏み入れた。 「辰馬〜銀時〜」 その後ろから追いかけてくる人物一人。 物怖じせずコックピットの中へと走って入ってきた。 誘爆があちこち起き、操縦士達も真っ青な状況でヘラヘラと笑っている。 銀時が顔を顰める向こうでは、辰馬が機械を調べている姿が目に入った。 「あ〜?何でお前まで来るんだ」 「世の中好奇心って大事じゃないか!操縦室ってどうなってんのかな〜と思って」 「オイオイオイオイ。見学してる場合じゃねェんだって。アレか?修学旅行で一人で突っ走って計画立てたくせに当日になったら時間が足りなくなってリーダーのせいにする嫌な班員ですか、お前は」 「うわ〜こうなってんだ〜。機械が一杯で分からないや〜」 「聞けェェ」 ツッコミはどこ吹く風。 しかもツッコミ自体何かがズレている。 機械が一杯とか言いながらはそこらに倒れている操縦士の爆発した頭をツンツンと突いている。 それオッサンの髪だからァァ!と銀時がその手を無理やり離した。 「銀さん!ヤバイですよ。みんな念仏唱え出してます」 遅れてきた二人と定春が現状報告。 客室でも操縦室でも、パニックに陥った人たちは死ぬ覚悟が出来ているようだ。 いや、出来ていないから唱えているのだろうか。 この中で冷や汗を流しているのは新八のみ。 銀時はのんびりと機械を見ている辰馬の後姿を見やった。 「心配いらねーよ、あいつに任しときゃ…」 紅の瞳は少し遠い。 それでも信頼のそれを浮かべている。 新八と神楽は、彼の視線をゆっくりと追った。 「昔の馴染みでな。頭はカラだが無類の船好き。銀河を股にかけて飛び回ってる奴だ…」 「もカラネ。んでもって無類のお茶好きヨ」 「アハハ、んで日本中を方向音痴にかけて飛び回ったな〜」 「オーイ、俺の話を折るな。上手いコト言ったって顔してんじゃねェよ。全然上手くねェよ。菊蔵ラーメン無理やりネタにした菊蔵と同じくらい上手くねェよ」 重要なシーンが台無し。 言い切った神楽とは二人揃って「ねー」と微笑みながら連帯感を見せ付ける。 しかも達成感が辺りに満ちているから性質が悪い。 もはや新八はそこらのボケは聞かないことにしたらしい。 台詞をパクられて話が逸れてしまったことに銀時は青筋をコメカミに作って彼の代わりにツッコんでおいた。 「…コホン、坂本辰馬にとっちゃ船動かすなんざ、自分の手足動かすようなモンよ」 仕切りなおしに咳を一つ。 そして銀時は言葉をしっかりと紡いだ。 「…よーし、準備万端じゃ」 その言葉に応えるように、辰馬は目を光らせる。 誰もがその様子に期待して身を乗り出す。 気合一発。 辰馬はソレを握った。 「行くぜよ!」 「おーう!」 傍の机の上に倒れていた、操縦士の両足を。 舵を取るように。 それを知りつつ、も大きく腕を振り上げて叫ぶ。 「ホントだ、頭カラだ…」 二人共。 新八がその言葉を付け足す向こうには、意気揚々と出発する気満々の辰馬と。 二人とも心からそれで動くと思っているらしい。 しかもじゃあハワイ辺りにでも着陸するかァと暢気なことを二人で言っている。 銀時の拳が辰馬の顔面に飛ぶのに時間はかからなかった。 「おーい、もう一発いくか?」 「アッハッハッハッハッ!こんなデカイ船動かすん初めてじゃき、勝手がわからんち。舵はどこにあるぜよ?」 「え、これじゃないの?」 「これじゃねーことは確かだよ!」 これ、というのは操縦士さんの両足。 が心から驚く中、銀時が怒りを込めてツッコミ。 ちなみに神楽が同じ操縦士の両手を取って「これは?」と尋ねたが、やはり違ったらしい。 新八からは「パイロットから頭離せェェ!!スイマセンパイロットさん」という熱いツッコミを貰っていた。 「オイオイ、ヤベーぞ!なんかどっかの星に落ちかけてるってオイ!」 そうこうしているうちに、真正面の窓から見える星。 軌道からして、このままだとそこに落ちてしまうだろう。 銀時もさすがに焦り始めた。 まず舵を探さなくてはどうしようもない。 全員が操縦室を徘徊し始めた。 「銀さんコレッスよ、コレ!ふんぐぐぐ!アレ!?ビクともしない!!」 舵らしき物をようやく見つけたのは新八。 報告と同時にそれを動かそうと試みるが、固まってしまっていて動かないらしい。 辰馬はそれを見て、そこへと足を進めた。 「ボク、でかした。あとはワシに任せ…うェぶ!」 「ギャー!!こっちくんな」 これでどうにかなる、と思った途端、辰馬は新八へと辿り着く途中で胃の中のモノを戻した。 いきなりのことに新八が悲鳴をあげる。 そしてそのノリでツッコミまで始めた。 「アンタ船好きじゃなかったの!?思いっきり船酔いしてんじゃないスか!!」 「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くての〜」 「何その複雑な愛憎模様!?」 「アハハ!よくあるじゃん。見ため的にナスビは好きだけど、食べたくないみたいな」 「それただの好き嫌いじゃねェかァァァ!!」 は笑いながら辰馬の背中を擦った。 フォローのつもりだったが、結局はボケに回ってしまった。 まぁ、これもいい経験だろうか。 辰馬が弱々しく微笑む中、舵には銀時と神楽も集まった。 「新八、もういいから私に任すヨ!!私文集に将来の夢パイロット書いたヨ」 「オメーはひっこんでろ。もういい俺がやる!普通免許もってっから。こんなモン、原チャリと同じだろ」 「いやッスよ。アンタらに命預けてたら何回転生しても足りねーよ!」 そうこうしているうちに舵取り合戦が始まってしまった。 どう考えても銀時や神楽が上手く運転できるとは思えない。 いや、普通免許持ってるだけ銀時の方が楽だろうか。 …いやいや、全員無理だろう。 「オウオウ!素人がそんなモンさわっちゃいかんぜよ。、ようなったき〜もういいぜよ」 「うい」 ようやっと吐き気が治まったらしい。 がのんびりと背中から手を離す。 しっかりとした足取りで辰馬は舵へと近づいた。 「このパターンは三人でいがみ合ううちに舵がポッキリっちゅ〜パターンじゃ。それだけは阻止せねばいかん!」 パターンというものがあるのだろうか。 勇み足で近づいて止められるかな、とは後ろからのんびり観察することに徹した。 自分が入ったらまたややこつぃいことになりかねない。 ぼんやりと見ていると、辰馬の体が足元の瓦礫につっかかった。 「!!ふぬを!!」 「!!」 前へとつんのめった彼の両手は今まで三人が取り合っていた舵に。 全員が呆気に取られる中、それは聞きたくなかった音を奏でた。 金属音と、舵とともに地面へと転んだ辰馬の音。 転んだ辰馬のせいで舵はポッキリ。 状況は全く悪い方向へと行ってしまった。 「アッハッハッハッハッそーゆーパターンで、きたか!どうしようハッハッハ!!」 「アハハハハハ!さっすが頭からトマトジュース流す男〜」 「アッハッハッハッじゃねーよ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 頭がカラで笑いが売りの二人が笑い飛ばす中。 悲鳴と一緒に。 宇宙船は星に吸い込まれていった。 |