大丈夫言ってる奴が



一番危ない













テストダメだったって言うやつが一番良かったりするのってどうしてなんでしょう













「はっ」



声をあげたら、目前は炎天下の砂漠地帯。
サングラス越しに覗ける景色を脳に入れつつ、体の全器官は灼熱地獄を訴えている。
それが現実だと分かれば、夢を見ていたのだとすぐに分かる。

昔懐かしい夢に、辰馬は軽く笑った。



「ハハ、危ない危ない。あまりにも暑いもんじゃけー。昔のことが走馬灯のように駆けめぐりかけたぜよ。何とか助かったってのに危なか〜


「助かっただァ?コレのどこが助かったってんだよ…」



銀時がツッコむのも無理はない。
宇宙船はどうにか星に不時着したのはいい。
この星に空気があって重力もあったのもいい。

が。
この暑さは頂けない。


肌はジリジリと焼ける。
汗はしとどに流れる。
水分なんてあるわけがなく、喉は渇くし頭はクラクラするし。
日陰にいたとしても熱した砂は下から熱気を嬉しくもないのに与えてくれている。

天然サウナにしちゃ地獄のよう。
タオルを頭に被って、とにかく熱中症にかからないように最善を尽くすのみだ。
といっても。



「こんな一面、ババアの肌みてーな星に不時着しちまってどうしろってんだ?なんで太陽二つもあるんだよ、金玉かコノヤロー



太陽二つもあるので、日陰もほとんどない。
それに暑さも二倍増し。
さすがに太陽にも喧嘩を売りたくなる。



「大体テメーが舵折らなきゃ、こんなことにはならなかったんだぞ」


「アッハッハッハッハッ前回のことなんか忘れたぜよ!男は前だけ見て生きてくもんろー」


「なーにすっとぼけてんだコノ毛玉ァ!!」


「あ〜もう暑いから騒ぐなや〜!!」




銀時は暑さやら頭のカルさやらに苛々し、辰馬に掴みかかる。
それがまたうるさいらしく、新八もツッコみ始めた。
暑さと苛立ちがまた暑さに拍車をかけるのだろう。
はその光景をぼんやりと見ながら、隣でバテている定春を撫で続けていた。



「定春〜、頑張れ〜。死ぬな〜生きろ〜」


「くぅ」



定春は自分達とは違って毛むくじゃら。
毛は白いが、熱が篭りやすい。
舌を出して体温調節しようにも限界がある。
荒い息をして目を瞑って頑張っているが、声からして弱々しい。
ただただ、はそれを撫でて意識をこちらに留めるようにするぐらいしか出来ないでいた。

ちなみには長着を頭にかぶり、紅のTシャツを捲りあげて半そでにしているぐらい。
黒のパンツとブーツは容赦なく熱を吸収していた。



さん、定春の傍暑くないですか?」


「定春に比べればマシだろ〜。大丈夫。新八も無理すんなよ」



毛むくじゃらで暑いから、とと定春は四人よりも少し離れた場所にいる。
新八が心配する中、笑顔で手を振ってみせた。
勿論、汗がポタポタと砂に落ちては一瞬にして蒸発してしまうが。



「神楽ちゃんも大丈夫?キミは元々日の光に弱いんだからね」


「大丈夫アルヨ。傘があれば平気ヨ」



新八は皆の世話係に徹している。
彼の隣にいる神楽は傘を差して弱々しい微笑みを見せた。
彼女は天人の夜兎族。
日光には弱いため武器にもなる傘を常備している。
だからこそ心配なのだろう。



「でも喉かわいたからちょっと、あっちの川で水飲んでくるネ」


「川ってどこ!?イカンイカンイカン!その川渡ったらダメだよォォ!!」



どう見たって砂漠しかないのに見える川は一つしかない。
三途の川だ。

新八は思い切り彼女を引き止めている。
本来ならばも止めに行くのだろうが、いかんせんこの暑さ。
立ち上がったものの、視界はグラグラと揺れていた。



「とっつぁん、もう勘弁してくれ。俺ァボクシングなんてもうどーでもいいんだ。水が飲みてーんだよ」


「誰がとっつぁんかァ!銀さんヤバイよ!!神楽ちゃんが三途の川を渡ろうとしてる!!」


「!!」




神楽の緊急事態に、さすがに銀時は辰馬を殴る手を止めた。
明らかに目が虚ろになってくる全員。
それでも動ける余裕があるのだから元気、といえるのだろうか。
銀時はすぐに神楽の元へと駆けつけた。



「おーい、しっかりしろ神楽」


「とっつァん、やっぱ俺ボクシングやってみるよ」


「あ、ダメだこりゃ。目がすわっちゃってる」



ピチピチと軽く頬を叩いてみても現実に戻ってこれない。
とっつぁんやらボクシングやら一体何の話だ。
ツッコミもままならない状態だ。

銀時はそれを確認すると、神楽をおぶった。
そのまま帰ってくるのかと思いきや。



「しょーがねーな。あっちの川で水飲ましてくらァ」


「お前も見えてんのかィィ!!」



どうやら彼にも三途の川が見えてたらしく、あらぬ方向へと歩き出した。
ツッコミを頭へと踵落としに変える新八。
その横を辰馬まで歩きだした。



「何言ってんの。見えねーの、お前ら?あ、花畑もあるぞ〜。あ、結野アナもいる〜結婚してくれ〜」


「何をバカなことゆーちょる…あっ、おりょうちゃんだ!!結婚してくれェェ!!」


「あ〜もうダメだ!誰も信用できねー!おしまいだァァ!!」



新八からはもう悲鳴しか零れない。
もう幻覚が幻覚を呼んで、ツッコミどころが多くなってしまったためだろうか。
いや、もう誰にも頼れなくなってしまったからだろうか。
頭を抱えるそれに、追いついたはポンと肩を軽く叩いた。



「新八がそんなんでどーすんの」



そう笑いかけて。
はどこぞへ行こうとしている二人へと足を進めた。
ハッキリいってそれは、幻覚を見る二人よりおぼつかない。
フラリフラリと揺れるは、力なく手をあげた。



さ…」


「おいしょっ」



情けない声と一緒に、は手刀を辰馬と銀時の首筋にあてた。
トトン、と軽い音と共に崩れ落ちる面々。
砂漠の砂とご対面だが、勘弁してもらおう。
はグラつく視界の中を、どうにか泳いで二人の服を引っ張った。



「新八、神楽ちゃん頼める?俺この二人を戻すから」


「は、はい!」



新八には神楽を背負ってもらって、はズルズルと大の男を引っ張り続ける。
気を失っているためか、それとも暑いせいか。
どちらにせよ重たい上に視界はグラつく。
頭は割れそうにガンガンと痛みを訴えている。
足もグラつき始めたが、決して二人を離さずに一歩一歩、確実に歩いていく。



「…よかった、さんがいてくれて」



心の底から、そのことに安堵を覚える新八がそう言葉に零すと。
は、弱々しく、微笑みをみせた。



「…もう、絶対に、死なせねぇから…」


「え?」



小さすぎて、彼には届かない。
それでも、は微笑んで先を促す。
宇宙船の影に少しでも入れる場所へと。




もう、死なせない


自分の目の前では


絶対に





「船だァァ!!」


「助かったァァ!!」




どこかのお客が叫び、全員が歓声をあげる。
空を見上げれば確かに船が沢山こちらに飛んでくるのが見えた。
ホッと新八が安心する中、は微笑んで。



「ギャアアア!!さァァァん!!!」



その場に倒れた。
新八の叫び声を、思い切り無視しながら。














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