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完璧に泣き止んだ頃には 新撰組の人たちも安心したのか各々巡回に戻り、人数は二人に減っていた 聞き出した名前と住所は個人情報だ!しっかり保管しとけ!! その場に取り残されたのは副長の土方。 そして子供の親を探すためだけに呼び出された山崎という人物だった。 ブチブチと彼は「休暇だったのに」と文句を言っていたが、土方によって一掃されていた(暴力で)。 山崎、という男の雰囲気は穏やかで、子供の扱いも得意そうだ。 そんなことを思いながら、は目の前の子供の目を覗き込んで微笑んだ。 「俺、っていうの。苗字は。君は?」 どうやら少年は、という名前らしい。 警察である土方と山崎はその情報をしっかりと頭に刻みつける。 何かあったらすぐに手配出来るように、だ。 そしてしっかりと成り行きを見守り、小さな情報すら逃さないように耳を澄ませる。 「…たけのすけ。…ささき、たけのすけ」 子供がゆっくりと名乗った。 すかさず山崎がメモをとる。 はふんわりと微笑んで頭を撫でた。 「竹之介っていうの?いくつ?」 「…ごさい」 「五歳かぁ〜。偉いなぁ、五歳で苗字と名前言えるんだな。俺未だに年齢分からなくなっちゃうもん」 「ダメじゃないですか、それ」 偉い偉いと褒めると、たけのすけと云う子供は嬉しそうに笑みを浮かべた。 そして顔を顰めてツッコんだのは、山崎だ。 どうやら反射的にツッコミが出てしまったらしい。 しかしは全く気にせずにニコニコと微笑むだけだ。 竹之介は先ほどまで泣いていたせいか目は赤く、瞼も腫れているが笑みは心からのもの。 そこに幾分かはホッとした。 (やー、やっぱ子供は可愛いなぁオイ) 笑みが嬉しくてこっちも微笑んでしまう。 だからこそ山崎のツッコミは聞こえていなかった。 この状態だったら、もう少し聞けそうだ。 そう判断してはまた口を開いた。 「竹之介は、今日誰とここに来たの?」 「あのね、おかあさんとおとうさん!かぶきちょうからきたの!かいものするって!」 「買い物しに来たのか〜。何か買ってもらった?」 「おもちゃ!!ブリーフの一護の剣!」 「マジでか。卍解すんのか」 「するする!」 「うわ、俺もそれ欲しい〜!」 「今度会えたら貸したげるよお兄ちゃん!」 「マジでか。やったー!!一度やってみたかったんだよ俺、卍・解!!」 ニコニコと嬉しそうに答える姿は、本当に先ほど泣いていた子供なのかと疑問を覚える。 あやしているという少年が上手なのかもしれないが。 いや、どちらも子供のようだ。 キャッキャとおもちゃの話で盛り上がっている。 必死にメモをとり、情報を頭の中から取り寄せているであろう山崎を見つつ、そんなことを思いながら土方は煙草に火をつけた。 白い煙が青空へと上っていく。 「お父さんとお母さんの名前、なんてーの?」 「うんとね、よしろうとおゆきっ!」 「お!凄い!!お父さんとお母さんの名前まで覚えてるのか〜頭良いなぁ」 グリグリグリ〜と今度は強めに頭を撫でる。 すると本当に嬉しそうに笑った。 「頭良い天才少年にはダッコをプレゼントだ!!」 「わーい!!」 も微笑んでから、子供の体を抱き上げて立ち上がった。 子供も嬉しそうに首に手を回す。 はよいしょーと言いながら、真選組の二人に目をやった。 「…てなわけで、情報収集終了。こんなんで探せれる?」 「あ、はい!」 ふわりと微笑む姿は少年にしては少し女性のよう。 無表情、無言の土方に代わって、しっかりと返事をしたのは山崎だった。 子供の情報としては十分だ。 名前と年齢、両親と一緒にかぶき町にやってきたこと。 おもちゃを買ってもらったと言ってるあたり、両親はその場所で必死になって探している可能性が高い。 一応迷子で、先ほど大泣きしていた辺り、まだ精神不安定かもしれない。 だからこそ深い追求をすればまた泣きだすかもしれない。 それだけは避けたいがために、ここで終わらせた方がいいだろう。 山崎はそれを考えながらしっかりと口を開いた。 「ありがとうございます!!絶対探してきますから!」 「うん、頼むよお兄さん。アレだよ、重要なのは一護の剣借りることだから。マーカーでバッチリ線引いといて」 「いやいやいやいや、そこじゃないでしょう」 「ほら竹之介!このおにいちゃんがお父さんとお母さん探してきてくれるって!」 見当違いなことを言ったので山崎がすかさずツッコむ。 が、にとってはどこ吹く風だったらしい。 が声をかけると、竹之介という子供が抱きかかえられながらもゆっくりと振り向く。 幼い、純粋な瞳に彼等を映す。 少し怯えながらも、瞳は山崎の微笑む姿をしっかりと捉えていた。 「…ほんとう?」 「うん、本当だよ!約束!」 山崎が近づいて小指を出せば、おずおずと小さな手が出された。 小指と小指を絡み合わせて約束を交わす。 まるで親子のような光景だ。 彼の笑顔に絆されたのか、竹之介も笑みを浮かべる。 約束が終わった後に山崎が優しく頭を撫でた。 やはりこの隊士は子供に慣れているらしい。 はそんな姿にまた小さく笑った。 「俺がここらでこの子のこと看てるから、安心して探してきてくれよ」 「ありがとうございます!じゃあ俺、行ってきますね」 「いってらっしゃい」 ひらひらと手を振るのは竹之介。 笑顔で見送っているのは。 それに山崎は手を振り返して、己の上司に視線を向けた。 「というわけで副長、俺行ってきますのでここ宜しくお願いします」 「…ああ」 親が見つかってもまた子供がいなくなっては困る。 それこそ此方の責任になるのだ。 だからこそ一人は子供を見ていなくてはならない。 山崎は親の捜索に走りだす。 必然的に土方が子供を見ることになる。 ちらりと、その目が子供を捉えたときだった。 「………っ」 竹之介はやはり先ほどのことが響いているのか、バッと視線を土方から外す。 そしてぎゅうとにしがみついた。 しがみつかれた本人はキョトンとし、残った副長を見上げる。 逆に見られた土方は少しだけ顔を顰めた。 やっとその子供の感情が理解できたのか、分かった顔をしてから。 は大声でケラケラと笑いだした。 「あははは!あのお兄さん達の中で一番恐いツラしてっからか」 もっとイカツい顔をした人たちもいたのだが、今はいない。 それよりも、整ってる顔して瞳孔を開かせて威厳を無意識に利かせている彼の方が恐いのだろう。 子供にとっては笑い事ではないのだが、にとっては笑い事。 ケラケラと笑い続けるしかない。 「それに一番怒鳴ってたからなァ…トラウマになったかな…あれ?トラウマ?ウマトラ?」 「…トラウマで合ってる」 「あ、ほんと?あーよかった。まぁとりあえず、お兄さん瞳孔閉じようか瞳孔」 「瞳孔は元から開いてんだァァァァ!!!」 瞳孔は普通、怒ったりしたときに開くらしいのだが、彼の場合は元々らしい。 それはそれでしょうがないか。 は納得してから、また笑い始めた。 「あはは!分かったよ〜。それよりもほら、怒鳴んない怒鳴んない。スマイルスマイル!スマイ○君のようにニッコリとね、ホッコリとね!」 「面白くェのに笑えるかァァァ!!」 「あれ、それ二回目だ。アハハハ」 言い返せばヘラヘラとした笑顔で注意される。 反射的な怒鳴り声すら軽くかわされた。 全く緊張感のない雰囲気に、土方は舌打ちを一つ零した。 まだイライラが治まらない。 というのも、まだ子供が怯えているからだろうか。 その舌打ちの小さな音にすらの腕の中の子供は反応し、しがみつく手に力を込める。 子供とはいえ、男だろうにという感情が土方には働いているのだろう。 二人の心情は理解出来る。 だからこそ、そんなに重要なことでもないのを知っている。 は小さい背中を、ポンポンと優しく叩いた。 「よしよし、大丈夫だからなー竹之介。この恐いお兄ちゃんは警察官だから恐いツラになっちゃっただけだよ」 「んなわけあるかァァァァ!!!」 「アハハハ!ほら、今のは全力でツッコんでるだけだから」 ケラケラと笑って言うそれはフォローになってるのかなってないのか。 警察官というのはこの特徴的な黒い隊服から分かること。 しかしそれが恐い顔に繋がるのは関係ない。 実際土方と同じ真選組の中でも顔が可愛い人物がいる。 性格はSだが。 (いや、それはそれでダメか、と土方は思った) 土方の脳裏に彼の姿が浮かんだが、すぐにかき消した。 思い出すだけで腹がたつからだ。 そんなことなど露知らず、はケラケラと笑ったまま。 「ていうか、お前がボケるからいけねェんだろうが!!」 「オレがいつボケたよ〜。まだまだピチピチの恐らく十代後半だよ〜?」 「言い方が嘘クセェェェェ!もっとしっかり歳言えねェのか!?」 「恐らく、十代後半だ!!!」 「だから歳をしっかり言えェェ!明確に!」 「んーそれがー忘れましたーすいまっせーん」 「スイマッセーンで済んだら警察いらねぇェェェ!!痴呆か、痴呆だろ!!?」 「まだ痴呆には早いっ!!……と思うけどどうなんだろう?どう思う?」 「自信ねぇのかよ!!んでもって俺に訊くな!!」 まるで漫才のような会話がトントン拍子に進んでいく。 それがかなりのスピードだからこそおかしい。 しかもほぼ、の天然さ…というかバカさが浮き彫りになる会話だ。 最早土方にとってははバカな人物に大決定だ。 としては、かなり真面目なのだが。 そんな中、ただじっと黙っていた子供が口を小さく開いた。 「…おにいちゃん、おまわりさんなの?」 腕の中のその子供はもう脅えておらず。 ただ興味という名前の瞳で土方をじっと見つめていた。 |