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どうでもいいことのように思えて 本人からしたら重大事件だったりする 小さい悩み事でも、その人にとっちゃ宇宙が滅びるより重大な悩み事なんだ!察しろ!!! 各々ご飯を食べ終わり、一服。 テーブルの上にはお茶がそれぞれ置かれている。 の前だけには湯呑と共にお茶葉とポットがドン、と置かれていた。 どうやら店員さんがお茶を運ぶのを疲れてボイコットしたらしい。 セルフサービスでお願いしますと置いていってしまった。 店員さんとしてはあるまじき姿かもしれないが、そんなことは関係ない。 は嬉しそうに次々とお茶を飲みほしていく。 時々トイレに行くのはもう、ご愛敬としか言えない。 「だってしょうがないじゃん。お茶には利尿作用があるんだよ。アレ?美乳作用だっけ?」 「聞いてねーよ。しかも何?何で美乳?乳なんて呼べるモノねーだろーがよお前はよ」 「アハハハまぁ男だから乳はないからな〜」 「ハイハイ。とりあえず分かりましたから。こっちの相談事聞いてくださいよ」 と銀時とのどうでもいいコントを、新八が宥める。 というのも、食事が終ってもこんな調子だからこそファミレスに集まった意味がない。 大事な悩み事の相談がうやむやのままなのだ。 今更ながらそれを思い出し、は小さく「あ」と情けない声と共に席についた。 「ごめんごめん、で、なんだっけ?ミカちゃんの下着の話だっけ?」 「アンタ電話で一体何を聞いてたんだァァァ!!結局何も聞いてなかったんじゃないですかァァァァあんなに説明したのに!!」 「内容忘れちゃったや。ごめーんネ」 「謝る気もナシ!!?」 相談事は電話越しで聞いたはずだが、は覚えていなかった。 ヘラリと笑って誤魔化せば、勿論怒り混じりのツッコミが返ってきた。 「落ち着け新八ィ。コイツが長いこと何かを覚えてるわけねーだろ。バカの上にバカが乗ったようなもんだからな」 「すごいな俺。バカの上にバカだよ?お茶の上にお茶が乗ったような感じじゃん!パーフェクトじゃん!」 「酢昆布の上に酢昆布ってことアル!凄いネ!酢昆布丼もビックリヨ!」 「何?さん結局バカを極めるの?」 銀時がフォローにもならない言葉を言えばボケがあちこちから飛んでくる。 こういう感じはいつものことだからこそ話が続かないという理由もある。 ツッコミが少ないのも毎度のこと。 だが。 ドゴン 「…で、いつ私の相談事を聞いてくれるのかしら」 今回はツッコミだけではない。 彼の姉がいる。 菩薩の笑顔を浮かべて般若のような手を下す彼女が。 「「「「…スイマッセーン」」」」 騒いでいた四人が素直に頭を下げてイスの上で正座した。 綺麗に顔を青ざめさせて。 それはしょうがないことだ、目の前の状況を見れば。 今の音はお妙が笑顔でテーブルを殴って窪みとヒビが出来た音なのだから。 さすがのもこれ以上バカをやるとバカをやることすらままならぬ状況になるとわかった。 (というか、死んでしまう気すらしたからに他ならない) 「どうよ。アイツの短所、ちょっとは見えたかよ」 そんな行動を取るに、こっそりとお妙に聞こえないように銀時が話しかけてくる。 どうやら視力の確認がしたいらしい。 あからさまに短所と呼ぶべき行動に出た彼女をどう判断するのか。 はとりあえず正座を直しながら、キョトンを目を開き。 ニッコリと笑った。 「ん?短所なんてどこにもねーじゃん。やっぱお妙はすごい美人だよな〜強いしさ」 「………」 その答えに銀時は、いつも死んだ魚の目をしてるそれをさらに死んだように半開きにした。 どうやらにとってはお妙のそれすらも長所のようだ。 それとも見えていないのか。 いや、しっかり見てたからこそ正座して頭を下げていたはずなのだ。 が。 「…あーもういいわ。お前こーゆーのだけは本っ当ーに確実に変わってねーってのがわかったわ」 「?」 まーるく括って受け入れる体制は昔からのの性格みたいなもの。 大ざっぱというよりは、まさに『痘痕も笑窪』のような感じだ。 どんな短所を見せようとも、が『美人』やら『格好いい』やら言ってしまった人物はとことん美化してしまうらしい。 どんなにハゲでバカでボケてて鬱陶しいオッサンでもだ。 いや、それも美徳と思っているのかもしれない。 しかも本人は無自覚だ。 が万事屋に住み込み始めてから、かれこれ半月は経つ。 『友人』、つまりは桂には会えていないために依頼は未だに有効。 その間に、様子を見ていたつもりだ。 どこが変わって、どこが変わらないのか。 (ぶっちゃけ、家事が出来るようになったのと母性がちょい目覚めただけでマジで何も変わらねーわ) しかし、銀時から見えたのは昔となんら変わらない姿。 変わったところをあげるならば、家事が出来るようになったことと、ちょっと母性本能っぽいのが見えるぐらいだ。 ある意味、気持ち悪いぐらいに変わらない。 『会うのが、恐いゆーちょった。…の、攘夷戦争の後起こったことを…辛いことを知っちゅーきに。そんとき手紙や何やらでアドバイスしちょったから尚更…罪悪感感じちょる』 それが本当ならば、どこか変化しているはずなのに。 例えば、そう。 今は見えない、首飾りを 一瞬見せた、悲しむように愛でていたあの笑顔のように あの笑顔はあれ以来見ていない。 まるで幻だったかのように。 いつも見るのは今あるような、ヘラヘラと馬鹿そうな笑いを浮かべてる姿だ。 「銀時?」 呼ばれて、ハッと我に返る。 どうやらいつの間にやらボーッとしていたらしい。 覗きこまれた紫苑の瞳に、銀時は面倒そうに溜息を吐いてみせた。 己の考えを、悟られぬように。 辰馬の忠告のせいか、そういうことに目が行ってしまったらしい。 そんな自分に嫌気が刺す。 「大丈夫か?何?お妙の美しさに惚れた溜息かそれ」 「ちょっやめてくださいさん!姉上をこんなマダオに嫁がせるなんて死んでもごめんです!」 「フフ、新ちゃん、大丈夫よ。私はこんなマダオじゃなく、近い将来ジョ●ー・デップと結婚します」 「さすが姉御ネ!私も負けずにデカプリ●と結婚するアル!」 「アハハハ二人とも美人だからすぐに捕まえられるよ〜本当は俺がお嫁に貰いたかったな〜」 「二人とも現実見よう!?んでもってさんはいい加減自分の性別理解しよう!?」 の勘違いを発端に、また話がグダグダと脱線し始める。 勿論、銀時の考えなど誰も読めないからそっちへと脱線してしまったのだが。 ある意味、溜息の成功とも言える。 「いや、俺はいつでも男だよ。だって股にバベルの塔があるもん。きっとあるもん」 「希望ゥゥゥ!!?」 「希望があれば、いつか叶うって誰かが言ってたような気がする。そう、ナルトゥとか」 「それ違う漫画ァァ!しかも希望とかじゃないですから!もうこれは受け入れるべく問題ですから!」 「将来の夢は、性転換することです」 「さァァァん!!」 未だ男を主張しているを余所に、銀時はまた一つ溜息を吐く。 今、のことを考えるのは見当違い。 そしてお妙や神楽の将来の旦那が誰だとかも関係なし。 やるべきことは、他にあるはずだ。 ここに集まった意味とか。 そして気持ちを切り替えるべく、どうでも良さそうに視線をお妙へと移した。 「ハイハイそこまで。本当に面倒くせーな。で、結局相談事って何だよ」 ここでようやく議題へと戻る。 ボケとツッコミも一時中断。 真剣な相談事を邪魔すれば、命がない。 「あら、そうだったわ。実はね…」 お妙はニッコリと笑ってから話し始めた。 志村家に起きた惨事を。 「あ〜?下着泥棒だァ!!」 じっと聞いていた銀時の第一声。 同時には啜っていたお茶が入っていた湯呑をコトリとテーブルの上に置いた。 次のお茶を入れるために。 そう、今回の相談事は自分たちが宇宙旅行へ行っていたときに起こったもの。 志村家の紅一点(といっても、両親がもう亡くなっているため、結局、住んでるのはこのお妙と新八の二人だが)お妙の下着が干している最中に盗まれてしまったらしい。 その事件を語る彼女は冷静そのものだったが、明らかな怒りの念が見える。 オーラの、何とも凄い禍々しさよ。 話し終わるまで、一言も言えないほどだ。 ちなみにステファン人形がどうこうというのは、新八が宇宙旅行のお土産に買ってきたお人形らしい。 それが、下着泥棒に怒りを覚えていたお妙によって破壊された、とのこと。 とにかく、今は下着泥棒の話が最優先らしい。 (というのも、新八がステファン人形の話をしたとき「そんなのどうでもいいんだよコノヤロー」と地獄からの使者の声が響いてきたからだ) (もちろん、それは彼の姉の声なのだが) そして一通り聞いた今、ようやく言葉を出せる状況になった。 「そーなんスよ。僕が旅行中に二回もやられたらしくて。なんとかならないスかね?」 「そりゃ大変だったなぁ〜お妙」 「さん、アンタ聞く気ある?」 相槌を打ちつつもお茶を入れているの姿は、しっかり聞いているとは思えない。 話をしている間も空気を読まずにジャージャーとポットを押す音が幾度聞こえたことか。 ポットから流れるお湯を急須に入れてニコニコしているから尚のこと。 確実にお茶にしか目がないなコイツ。 そう新八が思った途端、ドゴンという大きな音と共には視界から消えた。 「昔の人はよォ、着物の下はノーパンだったらしいぜ、お姫様も。お姫様なのに着物の下はもう暴れん坊将軍だよお前。そのギャップがいいんだよ。おしとやかな顔をして暴れん坊将軍かい!みたいな…」 テーブルに突っ伏す(というよりもお妙によって沈められた)を余所に、銀時は銀時でしっかり語り始めた。 ノーパンについて。 新八と神楽が心の中でに対して合掌する中、お妙は瞳孔をさらに開かせた。 全く聞かずにお茶ばかりに目が行くを沈めた彼女がそれを聞き逃すわけがない。 真剣に悩んでいるというのに、むしろノーパン推薦のように言われてるからだ。 「てめーのノーパン談義はどーでもいいんだよ。こちとらお気に入りの勝負パンツ盗られてんだぞコラ」 「勝負パンツってお姉さん、誰かと決闘でもするのかィ?」 ガッという音と共に、を沈めたときと同じように銀色の頭を掴んで睨みつける。 勝負パンツの意味をワザと履き違えて銀時はのんびりと口答えした。 その間に、はようやく沈んでいた頭をあげた。 「アダダダ……何だよ〜ちゃんと聞いてたのに」 「いやいや、あからさまにお茶にしか目がいってたじゃないですか」 「目はな?耳はちゃんとお妙に向けられてたよ?耳だけはお妙に夢中だったから」 「どんな口説き文句?」 額から血を流しつつ、はのんびりと声をあげた。 何も悪いことをしていないのに沈められたことに唇を尖らせている。 しかもその言葉はどこぞの口説き文句っぽい。 お妙はそれで気を良くしたのか、銀時の頭を離して自分の席へと戻った。 コホンと一つ咳をして大人しく座る姿は、どこか照れが入っている。 は己の額から出る血をおしぼりで拭きながら、そんな彼女に微笑んでみせた。 「本当に災難だよなぁ、勝負パンツ盗まれるなんてさ」 「何、お前勝負パンツの何が分かんの?てか勝負パンツを知ってんのかお前は」 ちゃんと聞いていたことをアピールすると、銀時が面倒そうに声をかけてきた。 バカという定義で決められているために、勝負パンツの意味を知っているかどうかの確認である。 どこかバカにされた言葉に、はしっかりと胸を張った。 「ハッハッハ!知ってるよそれ位。黒とか赤とか紫とかセクシー路線突っ走る下着で男を悩殺するんだろ?ムラムラさせるんだろ?」 「おおー、合ってるアル」 神楽から拍手喝采が起きる。 しっかり合ってる答えにもエヘンと笑ってみせた。 「兄ちゃんに教えてもらったもんね!ちなみに兄ちゃんは断然黒のレースでガーターベルト付きがいいって言ってた」 「お前の兄ちゃん何教えてんだ。つか何覚えてんだお前は。もっと他のこと覚えろ」 「俺の頭は悪いので、その他のことは容量オーバーです」 「それ忘れて常識を入れろォォォ!」 常識なくして、どうでも良い知識を詰め込んでいる。 だからこそバカになってしまったのだろうか。 銀時が新八の如く大声でツッコミを入れてくる。 そこに、持ち前の「アハハハ」という笑い声で返事ともいえないものを返す。 そして結局。 「また脱線してんだろうがァァァ!!聞けェェェェ私の話をォォ!!」 ドゴンという音二つ。 大人しく座っていたお妙がプツリと切れて、銀色の頭と灰色の頭が仲良く揃って沈められることになるのは、至極当然のことだった。 |