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誰もかれもが 長所だらけなわけがない 犯人を思われるような仕草をしないように誠実な人を演じ続けよう! 沈められた二人はしばらくして復活。 また額から血を流しつつ、おしぼりでそれを拭う。 もうこれ以上下手なことは何も言えまい。 言った途端、死刑がやってくる。 が小さくごめんと謝る。 そして逆に銀時は話を戻すために口を開いた。 「大体何がしたいんだお前は。その勝負パンツが戻ってくれば気がすむのか?」 そう、問題はお妙がどうすれば落ち着くのか、だ。 この怒りを治めなければ意味がない。 確認するかのように聞けば、お妙はニッコリと笑顔を零した。 「パンツを取り戻したうえでパンツを盗んだ奴を血祭りにしたい」 「もう発言がパンツをはく文明人の発言じゃねーよ。裸で槍をもって野を駆ける人の発言だよ」 彼女の怒りを治めるには、思った以上の過激さが必要だった。 新八と銀時の口の端が崩れる。 どうやらそれほどまでに怒りが止まらないらしい。 はまだ彼女を刺激しないように、ただひたすら口を閉じている。 すると、隣から真剣な眼差しがお妙に向けられているのに気づいた。 「下着ドロなんて女の敵アル。姉御、私も一肌脱ぎますぜ!」 お妙と同じ、真剣な眼差し。 やはり同じ女の子として共通する気持ちか何かがあるのだろうか。 ポカンとが口を開けている間に、女性二人は席を立って後ろ姿となった。 「よしよく言った。ついて来い、杯を交わすぞ」 「待て待て待て!死人が出るよ!君ら二人はヤバイって!!」 お妙の言葉に新八が制止をかける。 が、聞こえていないようで、二人はさっさとファミレスを出ていってしまった。 すっかりやる気満々。 いや、殺る気満々。 はとりあえず、ホゥと安堵の息を零した。 「…女の子って強いなぁ」 「どういう感想だよソレ」 一歩どころか二、三歩間違った感想。 ツッコミが隣から届きつつも、はようやくお茶を手につけることが出来た。 もう出枯らしでしかないお茶で、風味もへったくれもない。 が、それをしっかりと飲み干した。 「でもアレだな。下着ってそんなにパワーあるもんなんだな〜アハハハ」 「下着で勝負が決まるってか。女にとっちゃそんなモンなのかねェ」 「女子高生でもワザとスカート短くして見せつけてるヤツいるよな。しかも見せてるくせに見るなとか変態、とか言うヤツとか」 「アレぁムカつくよな。俺が見たいんじゃねェよ。お前が見せてんだろコノヤロー、みてーな」 「ちょ、そこ!何落ち着いて親父の会談みたいな話してんすか!!それどころじゃないっすよ!」 落ち着いてる二人とは逆に、新八は焦りつつ、ファミレスの扉を見つめていた。 もう彼女たちがいない、そこを。 「まずいよ。最凶コンビがユニット組んじゃったよ」 「あはははー、確かに違う意味でヤバイかもな」 言い得て妙。 新八の言葉に、も笑いながらゆっくりと後ろを振り向いた。 確かに彼女二人だけでは、ある意味犯罪に走ってしまうかもしれない。 あのお妙と、あの神楽だ。 (幾度も自分たちを沈めた彼女と、恐ろしく怪力な彼女だ) 血祭りどころじゃなくなるかもしれない。 (二人の心配ではなく、犯人を心配してしまうあたりおかしいような気もするが、にはそんなことに気付けるほどの頭はなかった) 「ほっとけよ、ホシの目星はもうついてるだろ?」 「あれ、そうなの?」 「え?いったい誰…!!」 冷静にそう言ったのは銀時。 まさか犯人の目星がついてるのは思っていなかったと新八が目を丸くする。 しかし、途中で気づいた人一人。 新八の瞳はしっかりと、テーブルの下へと注がれていた。 それに気付かないではない。 「?新八?テーブルの下に何が…」 ひょっこりと覗く。 テーブルの下には普通、何もないはずだ。 しかし。 「………」 「やぁ君!偶然だなガハハハ」 目を開かせるは一瞬、言葉をも失った。 テーブルの下に、一人の人がいた。 まるで何事もなかったかのように、大きく笑ってみせる彼。 それはこの間、知り合ったばかりで一緒にクルクルと花を飛ばして笑い合ってた人物であった。 ガハハハと笑われれば、笑うしかない。 つられて、もケラケラと笑って挨拶を交わした。 「アハハハハーこんにちは。偶然だな〜近藤さん」 「偶然でテーブルの下潜るヤツがあるか」 下にいたのは真選組局長、近藤勲。 神楽がしっかり「ゴリラ」と言い切った人物である。 (後でが「ああ、何かに似てると思ったらそれかァ」と笑って理解した) 「あれ?じゃあなんで近藤さんここにいんの?」 「ああ?目的は一つだろーが」 心底偶然だと思っていたの頭がはたかれる。 どうでも良さそうな声でツッコんだのは銀時で、彼は己の席を立ち、しゃがんでテーブルの下を覗き込んだ。 「なんだァァァァ!!まさか俺を疑っているのか貴様らァァ!!侍が下着泥棒なんて卑劣なマネするわけないだろーがァ!!」 「侍がストーカーなんてするわけねーだろーが」 「ストーカーはしても下着ドロなんぞするか!訴えるぞ貴様!!」 「訴えられるのはテメーだァ!!」 近藤と銀時がお互い言い合う。 そこで、はまた一つ理解していた。 神楽が近藤のことを言うときの悪口の一つ。 「ああ、近藤さんってストーカーだったんだ?…あれ?ストーカー?スカート?」 「遅っ!っていうかストーカーであってますから!!」 ポン、と両手を叩いて納得。 新八は隣から思い切りツッコミを入れた。 彼の話によると、どうやらお妙に惚れているらしく、ストーカー被害に遭ってるという。 一般市民が、警察の、しかも局長に。 ここにいるのもストーカーの一環らしい。 ハァ、とが納得する中、近藤は声を荒げた。 「違う!違うぞォォ君!俺の場合はちょっとしつこい愛のハンターなんだァァァ!!」 「あ、そうなの?」 「それを世の中じゃストーカーって言うんだよ。騙されてんじゃねーよお前は」 ベシッという音と共に再び叩かれる頭。 というのも、素直に近藤の言う言葉を信じようとしたからだ。 常識がないのだからしょうがないのだが。 とりあえず、近藤さんはストーカーだっていうのがわかった、と口に出す。 その言葉に近藤は「違うってェェ!」と声をあげ、銀時はニヤリと笑って近藤の頭を掴んだ。 「これで真選組解体か〜いや、めでてーな〜」 「待て待て待て。コレを見ろ、コレを!」 さすがに下着泥棒だとは思われたくないらしい。 近藤はすぐさま懐にあった紙を取り出した。 くるくると丸められたそれは新聞。 受け取った新八はそれを開き、は席に膝立ちしてそれを覗き込んだ。 「…なんスかコレ?またも出没、怪盗ふんどし仮面」 「……今を貫く!政治の不景気特集」 「君、着眼点違うからね。そこじゃないからね。…最近、巷を騒がしてるコソ泥だ。その名の通り風体も異様な奴で」 の見るところは間違ってたらしい。 一面にでかでかと載っている特集だというのに、それではなく。 その次に大きかった記事が今回の事件に関係しているらしい。 近藤は新聞の記事を熟読していたらしく、それについて語り始めた。 ー怪盗フンドシ仮面ー それはまっかな褌を頭にかぶり ブリーフ一丁で闇を駆け キレーな娘の下着ばかりをかっさらい それをモテない男たちにバラまくという怪盗ー 「なんですかソレ。鼠小僧の変態バージョン?」 「さながら、サンタさんの変態バージョン?」 「どちらも言い得て妙だな」 近藤はウンウンと二人のコメントに頷いた。 あまり賛同されることがないは、ワーイと両手をあげて喜んだ。 つまりは下着盗んで男たちに配っている人物らしい。 下着泥棒としては妙に変だ。 フーンと納得していると。 銀時は懐から一つのモノを取り出した。 「そーか。このパンツにはそーゆう意味が!俺ァてっきりサンタさんのプレゼントかと…」 「アンタもらってんのかィィ!!」 取り出したのは誰かのパンツ。 しっかりもらっていたらしい。 さっきまで宇宙旅行に行っていたというのに、いつの間に配られていたのだろうか。 大声でツッコむ新八と共に、は目を丸くしてそれを覗き込んだ。 「フハハハハハ!そりゃあお前、モテない男と見なされた証拠だよ。哀れだな〜」 「オーイ。見えてるぞ。懐からモテない男の勲章がこぼれ出てるぞ」 ついでにそれを笑う近藤の懐からもちゃっかりパンツが見えている。 新八は貰ってないようだが、しっかり知り合い二人がふんどし仮面の恩恵を受けていたようだ。 華やかな可愛らしいレースがヒラリヒラリと揺れる。 それを見つつも、は首を傾げた。 「えー、何で二人貰えてんだろ。俺二人はしっかりモテてると思うんだけど」 「…さんの視点だったら世の中モテてる人だらけになるからじゃないですかね」 「そんなことないよ〜俺にだって格好いい人と格好悪い人の区別ぐらいつけられるよ〜」 「…いや、たぶん無理です」 「えええええ」 新八には全く信じてもらえない。 自分にはちゃんと分ってるのに、とが唇を尖らせる。 拗ねているそれに、近藤は少しばかり涙目で彼女の肩を叩いた。 「うう…ありがとう君!君にそう言ってもらえるだけでも救われるよ」 「真に受けるなゴリラ。コイツぁ目も頭も悪いから」 「…そんなこと言ったら銀さん自滅すんじゃないですか」 銀時の注意は、ある意味自滅。 自分が格好良い部類ではないと自ら断言したことと同じだ。 気まずさで流れる、静かな空気。 冷静に新八がツッコむ横で、はじっと見上げてくる。 どちらかというと、してやったり、の顔で。 「…何お前その顔。めっちゃムカつくんですけど」 「いーえー?だから俺の目は確かだろ〜?」 新八のツッコミに調子に乗る。 ニヤニヤと笑うを見れば勿論イライラするに決まっている。 行き場のないそれに、銀時は幾分か強くの頭をはたいた。 (そのとき、いつもの「いたぁ!」という言葉ではなく「ひぎゃあ!」という叫びが響いた) そして咳を一つ。 「んでお妙の下着かっぱらったのもコイツの仕業だと…」 話を修正し始めた。 構ってる暇などないと次を促す。 普通は銀時をそのままからかうだろう空気は、近藤によって遮られた。 「ああ、今や江戸中の娘達が被害にあってる。しかし民衆、特にモテない男になまじ人気があるため、同心連中もなかなか捕まえるのに苦労してるようだ」 どちらかというと、こっちの方が優先らしい。 近藤からしてみれば、恋い焦がれるお妙の下着が盗まれているのだから一大事だ。 頭が痛くて悶えているは視界の外。 真剣な瞳で銀時を見て、話を進めていく。 「ケッただの変態のくせにいっぱしの義族気どりか。気にくわねー、気にくわねーぜ」 の頭を心配するのは新八のみ。 しかもそれだけではなく、ちゃんと話を聞いてるあたり器用だ。 銀時は脇目もふらず静かにそう語り。 そして。 「なんで俺がモテねーのしってんだァァァァァ!!」 「「ああああああパンツぅぅぅ!!」」 持っていたパンツを引き千切る。 バリッという音と共にキレる銀時の精神の秤。 同時に近藤と新八の情けない叫びが、ファミレス中に響き渡っていた。 |