妖怪の集団が、殺気立てて自分に飛び掛ってくるのを見た。
生臭い空気と一緒に、怒りの表情。


鋭い瞳でそれらを見上げる。
右手は自然と黒い羽織りの中へと入っていった。
手の中の感触を確かめると、の口は自然と弧を描いた。


(じゃあ……やるか)


手を羽織りから出す。
瞬間に黒い影が目の前を横切った。



「どりゃあああああああっ!!!」


「…はい?」



少年が、風と共に後ろから。
棒のようなもので、目の前にいた妖怪たちを一撃でぶっ飛ばした。
大きな音が響く。
その音に、の手がぴたりと反射的に止まった。

同時にあちこちから悲鳴が聞こえた。
今度は辺りを見回す。

銃をぶっ放す法衣を纏った金髪の青年。
鎌と鎖を繋げたような不思議な武器を振り回す紅髪の青年。
魔法のような、気功術のようなものをぶっ放す眼鏡をかけた青年。
前を見てみると、未だ茶色の髪の青年が豪快に棒を振るっていた。
目に見えて倒れていく妖怪軍団。


(……ええ…?さっきの美男子集団?)


どう見ても、こちらが有利と言える戦況。
あまりのことに、は口をほけぇと開けて見入っていた。
懐に入れた手は、そのまま動きを止めた。



「おい!大丈夫かっ!!?」


「へぇ?」


今度は目の前に黄金の目がいきなり現れた。
沢山の食事を頼んでいた少年だ。
茶色の短い髪がゆらゆらと揺れ、瞳と同じ色の金の輪がしっかりと額に固定されている。
どうやら、ぼぉっとしていたが心配で話しかけてきたらしい。
未だ返事をしないに、少年は首を傾げた。



「なぁっ!!大丈夫かっ!!?」


「あ?あ、あぁ…大丈夫…」


「そっか!よかった!」



の返事に嬉しそうに、心から笑う少年。
自分に向けられた眩しいほどの笑顔に、は目を見開いた。


しかし、それは一瞬。
理解するよりも体が動き、紫苑の瞳は再び鋭利なものになっていた。



「危ねぇっ!!」


「うわぁっ!?」


目の前にいた少年を片手で抱えるようにして右へと跳躍する。
次に目に映ったのは、妖怪の持つ刀が今さっきまで二人がいた地面をえぐったところだった。
土が宙へと浮かぶ。
と少年は地面に着地し、すぐに態勢を整える。



「心配サンキュ!でも今はそれどころじゃないな!」


「……っ同感」


「俺は俺で戦えるから、お前は行け!」


「え?でもっ…」



の提案に少年が戸惑う。
どう見ても普通の人間である銀髪の少年だ。
戦えるようにはまるで見えない。



「ほら後ろ!!」


「っ!!」



反射的に後ろに棒を振るう。
後ろから飛び掛ってきたであろう妖怪の腹部に丁度あたった。
叫び声がまた一つ増える。



「もたもたしてたら殺られるぜ!行けっ!!」


「…っ分かった!!」



確かにこのままだと危ないと分かったのだろう。
それでも戸惑いながら妖怪達の中へと駆け出す少年。
その後ろ姿を見た後、はすぐに自分の黒い羽織りに突っ込んだ右手を前へと勢い良く出した。





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