手に感じる重み。 左手も出してソレにそえて、握る。 そして前へと構えた。 両手に握るのは、等身大の大きな、鎌。 はそれを、大きく振るった。 大きな音と共に目の前にいた妖怪達の首が数個とび、赤い液体があたりに飛び散る。 鉄の香りのそれは悲鳴と共に、の体に容赦なく降り注いだ。 避けるわけでもなく、ただ大きな鎌の刃を置いて、仁王立ちする。 紫苑の瞳を半開きにして、地面に転がる死体を眺めた。 「よーし、順調。さぁ、死にたいやつからバッチコーイ」 低めのアルトで面倒臭そうに声をあげる。 台詞ではやる気満々。 態度は全くやる気がない。 やる気があるのかないのか。 全く分からないままに、妖怪達は目配せした後、、また一斉に飛び掛る。 は無表情で大鎌を一振り、二振りとしてそれらを次々となぎ倒していく。 「はい、一人〜二人〜…あぁ、数えんのが面倒だなぁ…つーかまだ死にたい奴等いんのかよ?Mじゃねぇのか、M」 ブツクサ文句を言う様は、どうやら面倒なようだ。 一人二人と数えてはいるものの、一度に数人は倒している。 生き残っている妖怪達はどんどん青ざめていく。 が鎌を一振りしている間にも、他の美青年集団が倒していくので、数はもう数えられるほどになっていたからだ。 気持ちが分からないわけではない。 「げ、玄奘三蔵一行は四人じゃなかったのか!?」 「いや、確か四人だって…っ!」 妖怪達がざわめく。 ははて、と首を傾げて目の前の妖怪達に口を開いた。 「いやだからさ、何なわけ、その玄米三昧って」 「違うっっつってんだろ!」 の聞き間違いに妖怪からツッコミが入る。 え、違うの?とが首を傾げる。 同時に、ツッコミを入れた妖怪はどこからか来た棒によって撲殺されてしまった。 豪快な音と共に倒れた妖怪を見てありゃ、と情けない声をあげる。 棒の持ち主である少年は、スッキリしたような笑顔で辺りを見回した。 「よし、これで全部終わったっ!!」 「うぇ?いつの間に」 少年の言葉に流されるように辺りを見てみれば、もはや妖怪達の死骸の山。 血の海、どよめく空気、歪んだ死体の顔。 そこの上に立っているのは無傷の、先程の美青年軍団だけだ。 (…へぇ…凄いなおい。こんな妖怪の大群をものの数分で…) 一人他人事のように感心する。 そして、自分の大鎌を一振りして、銀のそれを染めていた赤い液体を振り落とした。 本来の色が戻ったところで、は何事もなかったかのように鎌を消す。 ただし、自分に降りかかった赤は、振り払うことはしなかった。 まぁ、しようと思っても出来ないだけだが。 のその姿を見て、少年は何かを言いたげに口を開く。 しかし、そこから音を発することはなく、逆にの後ろから歩き寄る眼鏡をかけた青年が言葉を発した。 「お怪我はありませんか?」 「んん?」 後ろから声をかけられると思っていなかったは振り返る。 振り返ってから、その言葉の意味を理解して、そしてその声の主の心配そうな表情に目を見開いた。 「…大丈夫ですか?怪我でも…」 「あ、ああ大丈夫っす。怪我なんてないっすよ」 ぼやっとしてたため、変に心配させてしまったらしい。 はそれにすぐ気付いて、返答する。 目の前の、緑色の綺麗な瞳の持ち主は安心したかのように、よかったと優しく微笑んだ。 それにまた、の目は見開いた。 (……よく初対面の人間を心配できるもんだ…) 「悟空は大丈夫ですか?」 「腹減った〜」 「大丈夫みたいですね」 がそう思っているうちに、彼は自分の傍にいた少年に確認を取る。 少年はなにやら場違いな返答。 しかもその返答に、青年の微笑みが増している。 いや、その答えは間違ってんじゃないか?というの心の声は明後日の方角へと飛んでいった。 「……にしてもでけぇ鎌だったな」 「んあ?」 今度はまた違う青年の声には振り向いた。 すぐ後ろに背の大きな紅い髪の青年が手元を覗き込んでいる。 今はない大きな鎌を持っていたときの手を見ているのだろう。 うわぁお、とは大して驚いてもいない声を出したが、動揺してか数歩前へと進んで離れた。 「重くねぇのか?あれは」 の行動を気にするわけでもなく平然と訊いてくる男性。 それをまた不思議に思いながらも、は冷静に答えることにした。 「あぁー…ぶっちゃけ重くはないけど、振るのが面倒」 「あぁ〜成る程ね」 俺の錫杖も図体が大きいから振るのが結構面倒なんだよねぇこれが。 あぁ〜、っぽいな。 そんな表面上の会話をしながら、紅い髪の青年は己の武器を消す。 近くでは少年も棒のような武器を空気のように消している。 (…成る程、この美青年軍団は妖怪か…意識はまだ保たれてるし…妖怪制御装置か…紅髪の兄さんにはついてないけど、たぶんこの人は半分妖怪だな) 冷静に彼らを観察して答えを導く。 世の中の妖怪は皆、理性を失いつつあるのに彼らは意識を保っている。 考えられるのは妖怪制御装置と呼ばれる、妖怪の力を押さえ込んで人間として成り立たせるもの。 または、違う理由か。 どちらにしろ、自分には害はなさそうだ。 フゥ、と一息ついたのは一瞬。 は身体を強張らせた。 遠くから感じる、人を射抜くような視線。 鋭い眼光を身体全体で感じる。 凄ぇ威圧感が…っ!と冷や汗を流しながらはゆっくりとその方向へと向いた。 そこにあったのは 凄く不機嫌そうに眉間に皺を寄せた、金色の髪の持ち主。 紫暗の瞳を細め己を睨む。 法衣を纏っているせいか、その姿は神々しくも見えた。 |