宿屋では四人のお客がやって来ていた。


朋茗が連れてきたお客だ。
彼女が絡まれていたところを助けてくれたのだという。
しかも宿屋を探しているらしく、ここに連れてきたのだ。

食事も終わり、部屋ではリラックスムードの四人。



そう、何を隠そう彼らは玄奘三蔵一行。
トランプをしながら、彼らはのんびりと過ごしていた。


そんな中、三蔵は一人回想に浸っていた。

自分が言い渡された使命。
『西域で行われている牛魔王蘇生の阻止』
自分の師である光明三蔵法師の聖天経文が西域にある可能性があるということ。
妖怪である三人を供として任命したのは観世音菩薩だという三仏神。


そういえば、と三蔵はふと三仏神の言葉を思い出していた。



『そういえば、観世音菩薩が…そなたに伝言してほしいと言っていたことがあったな』


『…言伝、ですか』


『あぁ。なんでも…『変なヤツがいたら供にしてやれよ、楽しくなるだろうから』…だそうだ』



全くもって分からない言伝。
というか、変なヤツがいたら普通無視じゃなかろうか。
三蔵が訝しげな表情を出す。
言伝を頼まれた三仏神も微妙に苦笑する。



『わけが分かりません』


『ああ、私達も分からん』



キッパリと思ったことを言えば、彼らもしっかりと自分達の思ったことを言う。
しかし、彼らは三人そろって微笑んだ。



『まぁ、そういうことだから一応頭に入れておくといいだろう』


『…はぁ』



溜息交じりで返事をする三蔵。
煮え切らない微妙な感情がまた沸いてくる。


回想を終えると、隣では悟空と悟浄がじゃれているのが見える。
というか、小さな喧嘩なのだが。


『負の力に抵抗しうる力と精神力をもって桃源郷のため−否、己が求める物の為に西へ走れと…!!』


脳裏に響く、誰かの言葉。


(…いいのか?こんなモンで)


現実はそんな格好いいものではない。
隣を見ればまだじゃれている2人と、目の前でのほほんと笑っている八戒。
全くもって、こんなんでいいんだろうか。
不安は尽きない。



「んー?」



ふいに外が騒がしくなる。
そこで悟空が声をあげて振り向いた。

外では踊り子の団体がこちらに向かってくるのが部屋から見える。
先程団体客の予約が入ったとかどうとかで朋茗が言っていた。
旅の一座らしい。



「踊り子の姉ちゃんたちイケてんじゃん。俺のベッドでも踊ってもらうか」


「教育的指導」



どこからか変な会話が聞こえたが、三蔵は無視した。
それよりも気になる視線。
旅の一座の一人の男の笑み。
ペコリと彼は頭を下げるも、どうも嫌な笑顔だ。



「…で今夜どーすんの?団体客が入ったから個室余ってるって朋茗が言ってたぜ」



悟空が声をかける。
本来ならば妖怪に狙われている今、団体で寝るべきだろう。
あの視線も気になる。

だが。



「宿屋に来てまで野郎の寝顔は見たくない。解散!!」


「いやぁみなさん自分に正直ですね」



この一言によって解散。
その部屋には八戒だけを残して、三人はそれぞれの部屋へと戻っていった。




夜は深くなる。

眠りにつく。


近づく、足音。




宿屋での安心な眠りの中、待ち受けているのは大きな騒動。











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