紅の液体が飛び散る それは妖怪の血だというのに 重なるのは、死んでしまった友の顔 『−…あの娘はね』 聞きたくない 聞きたくない やめて 『妖怪ニ喰ワレテシマッタンダヨ』 「いやあぁああ!!」 朋茗は叫んでいた。 頭によぎる、友人の顔。 それが真っ赤に染まり、目の前で喰われている妖怪と重なる。 恐怖と、嫌悪感。 心がそれに溢れて、染まってしまいそう。 「嫌い!大ッ嫌い…!!妖怪なんて…妖怪なんてー!!」 「朋茗っ!」 が朋茗の肩をしっかりと掴む。 両手に力を入れ、乱れた意識を取り戻そうとする。 それに。 (これ以上は言っちゃいけない) 彼らが妖怪だと知っているからこそ、それを言っちゃいけない。 彼らの心を抉ってしまう。 しかし、彼女の心は掻き乱されたまま、口も止まらない。 「死んじゃえばいいんだ!!」 瞬間、動く蜘蛛の足。 それは先程の言葉で固まっている少年を吹き飛ばした。 身体が地面へと叩きつけられる。 「悟空!!」 眼鏡をかけた青年が声をあげる。 も舌打ちしながら朋茗の前へと身体を動かす。 「気ぃ抜くな!蜘蛛の足は八本、他を心配してると自分が怪我するぞ!!」 がそう叫べば、丁度、悟空と呼ばれた少年の心配をしていた紅髪の青年に足が伸びる。 彼はすぐさま対応しようとしたが、足の方が速かった。 顔を蹴られ、痛みに顔を歪めたがすぐに体制を立て直す。 そして口から血をペッと吐き出した。 「−ックソが!!」 舌打ちのような言葉が漏れる。 蜘蛛が今度は朋茗たちに視線を寄こした。 ー来るー 殺意の沸いた蜘蛛の瞳に感じるのは一つ。 ようやく少しは落ち着きを戻した朋茗を、守るように主人が抱きしめる。 もすぐに、紫苑の瞳を鋭くした。 両手に意識を移すと、手の平が熱く感じる。 片手に一つずつ、一メートルほどの鎌が現れて、それらの重みを握る。 そして立ち上がり、それを前に構えた。 「…関係のない者を巻き込むな。そう親に習わなかった?」 の言葉に、反応はない。 蜘蛛の足、ニ本が素早くこちらにやってくる。 その二つを鋭い瞳で見やってから、一つに集中する。 理由は一つ。 紫苑の瞳の視界の端には、光が見えたから。 節が切れ、ゴトリという音が二つ響く。 悲鳴が響き渡る。 人ではない。 あの蜘蛛の悲鳴。 先程聞いた蜘蛛女の悲鳴に、朋茗と主人が顔をあげた。 悶える蜘蛛。 それと自分達の間に立ちはだかる人の影二つ。 「ご…悟空さん!!さん!!」 額から血を流したまま棒を持っている少年。 そして隣で、何事もないかのように大きな鎌を二つ持っている。 彼らは瞬時にして、それぞれ一本の足を切り取ったのだ。 「少年、おでこから血ぃ流れてるよ〜」 「これぐらいへっちゃら!」 は彼の顔を見ずに口を開く。 緊張感のない心配の声に、少年はニッコリと笑った。 それに「あ、そう」と全く関心持たずに軽く頷いたのはだ。 銀髪の背中を見てから、悟空はすぐに瞳を鋭くして前の蜘蛛へと文句をつけた。 「いー加減にしろよテメェラ!こいつも言ったけど、この人達は関係ねェだろうが!!」 「言ってやるな少年。きっとこいつ、親いなかったんだよ。だから常識ってもんがないだけで」 「俺も親いねぇけどこんな常識ぐらいある!」 「あぁ、じゃあこいつは頭が悪いんだよ。きっと」 「…俺より悪いってことか?」 「勿論だ」 「なら納得だ!」 「だろ」 勝手に話が作られていく上に脱線していく。 最終的には少年が納得し、もしっかりとグッと親指を立てている。 遠くから法師が何やら溜息をついて何か言いたげだが、今は無視を重視したようだ。 また、それとは逆に眼鏡をかけた青年と紅髪の青年は一言。 「いやぁ、結論が出てよかったですね」 「…そういう結論でいいのかよ」 こちらもこちらで納得したらしい。 妖怪である蜘蛛は足を二本も切られ、その上勝手に話を作られているのだが、痛みに顔を歪ませていた。 その話にツッコむ気力もないらしい。 ただ、気になることは一つ。 蜘蛛はようやく、口を開いた。 「−ボウヤこそ何故そこまで低俗で無力な人間なんぞに味方する!?ボウヤ達だってもとはと言えば…我々と同じ妖怪じゃないか!!」 蜘蛛の一言。 それに静寂が降り積もる。 朋茗の動きが、精神が。 止まった。 |