変な共通点を見つけたところで、彼らは御飯を食べ終わり、再びジープでの旅が始まった。
白竜が再び鉄の車へと変身。
八戒が運転をし、風を切る。

そんな車内では今、何故かトランプ大会が開かれていた。



「これでどーだツーペア!!」


「残念だったな悟空。じゃーんっフルハウス」



前の席に座っている二人は不参加。
ということで後部座席に座っている三人が半強制的にやっている。
悟空はツーペア、悟浄はフルハウス。
そしてその真ん中に座るはというと。



「…役ナシ」



全くもってバラバラ。
一体これで何度目だろうか。
しかも何故強制的にトランプを仲良くやっているのか。
さっぱり分からないが、これだけは言える。



「…何度目よ?」


「ずっと役なくねー?」



ポーカーをやって数十回。
一度も勝った覚えがない。
…というか、名前のついた役が全くこない。
はうんざりした顔をしながらカードを山へと戻した。



「だから前に言ったろ。賭博は苦手だって」



アルバイトあるからと逃げたときに叫んだ言葉。
そう、はことごとく賭博は苦手だった。
何も賭けるものなどなくても、その類の勝負事に勝ったことが一度もない。
だからこそ、勝負はできるものの、やろうとはしなかった。



「マジだったとはなァ」


「大丈夫だって!俺もそんなときあるし!」


「いや、少年みたく『時の運』とか関係ねぇから俺のは」



悟空が励ましてくれるが、には全く関係ないことだ。
『運』とか全く関係がない。
それほどまでに、勝てたという意識がない。

ハァ、とかったるそうにが溜息を吐くと、隣で少し口を尖らせた少年が目に入った。



「つーか、いい加減少年って呼び方やめろよ」



そこが気になっていたらしい。
目を瞬かせた後、はうーん…と首を傾げ始めた。



「でもなぁ」


「でも、なんだよ?」


「少年の名前、一杯あってどれで呼んだらいいのか分からなくてな」


「「は?」」



の発言に首を傾げたのは両隣の二人だ。
がたがたと揺れる車内の中、の模索は始まった。



「運転しているのは猪八戒さんだってのは分かるんだ」


「八戒、でいいですよ」


「あぁ、うん。じゃあ、八戒」



訂正が入る。
は彼の促されるまま、名前を呼び捨てすることにした。
すると、彼は運転しながら、ゆっくりと振り向いて微笑んだ。



「ハイ。じゃあこちらはさんとお呼びしても?」


「うん。でも『さん』はいらねーよ?ところで敬語は癖?」


「ええ、だから気にしないでくださいね」


「分かった」



改めまして自己紹介、なノリだ。
そして一息つく。
今度は他の三人について、は考え始めた。



「問題は、他の三人なんだ」


「あ?」



自分も入っているとは思わなかったので、三蔵は助手席から後ろへと顔だけ向けた。
は未だぼんやりと何か思案している。
眉間には皺が寄っているので、真剣に考えているようだ。
う〜んと唸り、ゆっくりと、は口を開いた。



「助手席の法師は……玄奘三蔵、と八戒が言ってた」


「…イイじゃねェのそれで」


「ところが、だ。他の二人からは『タレ目』『生臭坊主』その他諸々呼ばれてたんだ」



そう、それは昼食を摂っているとき。
あの後に何度か小さな喧嘩みたいなことをやって、彼がそう呼ばれていた。

三蔵はそれを思い出したのか、眉間の皺が増える。
しかし、それが何なのだろう、と皆が首を傾げたときだった。



「結局、俺はどの呼び名で呼んだらいいのか分からなくてさ」





・・・・・・・・・・・・・。

静まる車内。
揺れる車。
音はエンジンと、揺れるときに出るものしか響かない。

その間も尚。
は真剣に悩んでいた。



「紅のお前も色々呼ばれてたし、少年も色々呼ばれてたから…」


「「「「…………」」」」


「あ、こうなったら俺が開発した呼び名で呼べばいいのか?じゃあ法師は『恐い金髪』で紅の君は『触覚君』で、少年は『少年』でいいか!おお、何かスッキリした」



悩みは無事解決。
はサッパリとしたらしく、うんと伸びをした。
やはり悩みを解決した後は素晴らしく気持ちいい。
イイ笑顔で、は片手をあげた。



「ということで改めてヨロシク『恐い金髪』に『触覚君』に『少年』!」



悪気もなしに言うそれ。
三蔵はひくり、と口を引き攣らせた後。



「死ねェ!!!!!!」



ハリセンを盛大に頭に喰らわせた。


いい音が辺りに響き渡る。
しかも、一発では終わらない。



「普通分かんだろうが!!ナメてんのかてめェは!!」


「痛っ痛い痛い痛い痛いっ!!え?俺何か間違った!?」


「っつーか、コイツ頭だいじょーぶなわけ?」


「いやァ、すごい天然さんですね」



まだまだハリセンは止まない。
助手席で、しかも運転中だというのに立ちながらずっと叩き続けているのは危険極まりないのだが、今はどうでもいいらしい。
そんなの隣で悟浄は顔を引き攣らせ、運転席の八戒はまるで何ともないように運転し続けている。
ちなみに、は何故怒られているのか未だに理解していない。



「フツー『タレ目』とかは悪口で使うだろーよ」


「あれ?そうなの?」


「ったく…悟空よりバカがいるとはな」



やっと思う存分叩き終えたらしい。
三蔵は盛大な溜息を吐きながらようやく助手席へと戻った。
隣の八戒はクスクスと笑っている。
そこに、悟空がやっと口を挟んだ。



「俺は、名前で呼んで欲しいんだよ」



少し拗ねたように言うそれは、やはり少年のもの。
が隣を見れば、彼は口を尖らせていた。


少年、なんてそこらにいる。
そんな他人のような呼び名じゃなくて。

個人の、『存在』の名前で

呼んで欲しい




「…悟空、でいいか?」



静かなアルトの声に、悟空は顔を思い切りあげた。
金晴の瞳を見開かせれば、そこには紫苑の瞳。
それは少し、戸惑い気味に揺れている。
名前に自信がないらしい。

名前を呼ばれただけで溢れる感情。
悟空は、それを戸惑うことなく、表情に表した。



「…おうっ!!!」



満面の、笑顔で。




もつられて笑っていると、悟浄が隣から顔を出してきた。
煙草の煙が、少し煙ったい。



「ちなみに、俺も名前でな」


「…えーと、悟浄?」


「そ」



名前を呼べば満足げに笑む紅髪の青年。
はフムフム、と納得してから、今度は助手席の彼に眼を向けた。
振り返る気配もなければ喋る気配もない。
やっぱり『恐い金髪』と呼ぶべきだろうか、と考えたときだった。



「ちなみにこの金髪は『タレ目クソ坊主』でイイから」



悟浄の助言。
それに伴い、ハリセンが彼の頭に当たったことは言うまでもなく。

が戸惑いなく、悟浄の助言通りに呼ぼうとしたところ八戒から「三蔵と呼んであげてください」と言われて解決した。







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