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夕日に向かって進むジープ。 他愛のない話をしながら、彼らはやはり西に向かっているのだとは感じた。 「ところでお前達はなんで旅をしてるわけ?」 友達皆で仲良く旅行、というわけではない。 だからといって家族旅行、というわけでもない。 何せ今は妖怪のことでゴタゴタが続いているのだ。 危険な旅をわざわざ行うというのは、どう考えたってワケありだ。 口を開いたのは助手席の三蔵だった。 「そういうお前は何のために旅をしている」 「うわー、聞き返された」 答えをもらえるかと思ったら聞き返された。 出来るだけ情報を得ようとしている心が丸見え。 三蔵の変なとこでの真剣さにはげんなりだ。 お陰で紫苑の瞳は半開きである。 「こんなご時世に一人旅。しかも方向は西だ。余程の理由があるとしか考えらんねぇだろうが」 「それ、君達にも当て嵌まってるってこと分かってる?」 「お前がその目的を言えば教えてやる」 それまでは教えない。 三蔵の視線はを振り向くことなく流れる景色に向いている。 どこからどこまでも上から目線。 (一体お前は何様だよ…って三蔵様か?おい) 風に揺れる金の後ろ髪を半開きの瞳で見やった。 あちこちからは苦笑が零れている。 当たり障りない程度なら目的を教えられる。 教えられる…が。 「じゃあ教えねぇ」 「………………………」 上から目線がムカつくので却下。 特に彼らの目的を知らなくてはいけない、ということはない。 ただ興味本位で聞いただけなのだ。 前から不穏な空気と共に冷たい視線が飛んでくる。 はそれを感じながらもツーンと違う方向へと顔を向けた。 「どっちみちお前達も西に行くんだろ?それさえ分かってればいいや。俺の目的地に着いたり、お前達と道が分かれるときに俺を降ろしてもらえれば」 とはいえ、の目的地は桃源郷西の果て。 天竺、と呼ばれる場所。 彼らと行く道が途中で離れる可能性もある…というかきっと離れるに決まっている。 そのときは降ろしてもらえばいいだけの話だ。 天竺。 吠登<ほうとう>城。 そこに 君がいるから 君がやろうとしていることを あの人のために 止めて、みせる (まぁ、この俺の目的さえ達成できればいいだけだしな) 彼らの目的なんて知ったこっちゃない。 例え睨まれたってどうってことない。 夕日に染まる景色。 後ろへと目を向ければ、東から登る闇が見える。 もうすぐ夜がやってくる。 あの、夜が。 「…降ろすかどうかは俺が決めることだ」 「…三蔵さぁ、どこまで俺のこと気にしてんの。下手すりゃ俺のこと好きだと勘違いされっぞ〜」 どこまでもが何者かを気にしている。 まぁ、ここまで無理に監視しようとしているのだからしょうがないが。 しかし、溜息が出るほどの執着ぶり。 お陰での表情もげんなりを通り越してゲッソリだ。 三蔵もの台詞に眉間の皺が増えた。 逆に、他の三人の表情はからかいの笑みを浮かべている。 「そういえば三蔵、のことずっと気にしてたよな〜」 「や〜ん、三蔵ったらホモ〜?」 「意外な展開ですねぇ。あ、大丈夫ですよ三蔵。僕は応援してますから」 「……殺すぞ」 からかいの言葉に三蔵は銃を取り出した。 こめかみには青筋。 口は引き攣っている。 はふぅ、と溜息を一つついた。 (ところでなんで俺と三蔵でホモになんだろ。俺女なんだけどな) どうやら自分を男と勘違いしているらしい、とは今更ながら気付いた。 そういえばこの間も「君付け」だったり「兄ちゃん」と町の人に呼ばれていたっけ。 の姿は、誰から見ても「男」に見えるらしかった。 (…まぁ、いっか) 女だと今更言ったところでどうしようもない。 証明、説明が面倒になるかもしれない。 どこまでも面倒くさがりななのであった。 |