|
白竜に、微笑む。 その笑顔は…今まで見た顔ではなかった。 「…どした?固まってるぞ、悟空」 「え?あ、うん」 こちらに向けられるは、今までと同じもの。 は白竜を隣に置いて、また御飯を食べ始めた。 時折お酒を口に含んでは、美味しそうに飲んで食べる。 白竜はまだに構って欲しいらしく、鳴き声をあげている。 はそれを見て、またふわりと微笑んで頭を撫でた。 (…違う) 相手が動物だからか。 小さいペットだからか。 自分を気に入ってくれているからか。 いや、が白竜を気に入ったのだ。 (顔が、全然違う) 自分達に向けられる顔。 今まで白竜に見せていた顔。 宿のご主人たちに見せていた顔。 それのどれとも違う。 今白竜に向けられているのは、信頼の笑顔だ。 は時折自分達にも笑ってくれるが、それとはまた違う。 感じる。 と自分達との距離と、と白竜との距離。 (…知り合ったばかりだから仕方ねぇけどさ) でも、ズルイ、と思うのは何故だろうか。 白竜だってとは初対面のはずだったのに。 いつの間にか仲良くなってる。 心を、許してもらってる。 白竜に向けられて分かった、自分達ととの一線。 (それでも…いいや) 悟空は目の前の魚を思い切り口に含んだ。 拉致した同然のこの状況だ。 笑いかけて、話しかけてくれることすら奇跡に近い。 (これから、近づけばいいんだ) 自分達が目指すは天竺、西の果て。 どこで別れが来るかは分からないが、きっと、ずっと先だ。 それだけは、感じられる。 だから 「!俺にもその酒頂戴!」 「いいぞ〜。でもお前未成年だろ」 「も未成年じゃんっ!」 「俺は心が大人だから、悟空と違って」 「何ぃっ!?」 これから。 これからが、勝負。 悟空のグラスにお酒がなみなみと注がれていく。 二人で笑い合ってグラスをカツンとぶつけ合って、飲み干す。 五人となった三蔵一行のチビ同士での食事が始まった。 そんな二人と一匹を、遠目で見るのは大人同士。 多く飲んでいるはなんともないように次々と飲んでいく。 悟空は少しばかり酔っているようだ。 当たり障りない程度に彼を介抱しながら、は酒を自分のグラスへと入れる。 「…で。分かったワケ?三蔵」 「分かってたら連れていかねぇよ」 悟浄の言葉に、三蔵は眉間に皺を寄せて返した。 普通の人間のような。 情報は漏らさない。 頼りになるのは自分の勘のみ。 だが、『何』なのかはさっぱり分からない。 「ただ分かってんのは『動物に好かれる』ってことだ」 「…それは悟空を含めてですか?」 「当たり前だろうが」 目の前の光景が語るもの。 白竜も、また悟空もを好いている。 としては白竜には心を開いたようだ。 表情が全く違う。 「八戒、白竜の心情を解読できねぇのか」 「そんな無茶言わないでくださいよ」 やれやれ、と八戒は溜息をつく。 本当に三蔵はの正体を気にしすぎているようだ。 悟浄も苦笑を零している。 「…しっかし…不思議なのは、アイツがここにいても全く違和感がねェってことだな」 「あぁ、それは僕も思いました」 三蔵、悟空、八戒、悟浄。 この四人は旅が始まる前からの付き合いがある。 だからこそ性格はバラバラながらも、分かっているからこそ付き合っていけるのだ。 は違う。 数日前にひょっこり偶然に会っただけなのだ。 今日一日を一緒にいただけの関係。 本来なら五人の中で一人浮く形になるであろうに。 全く違和感がない。 溶け込めている。 「そういう『特技』なのかもしれませんね。前のバイト先でも、宿屋でも馴染んでいましたし」 「あー…そうかもな」 それで括ってしまえば話は早い。 だが、それだけでは満たされない何か。 八戒と悟浄が微妙な表情をしているのを横目で見ながら、三蔵は酒を飲み干した。 「…『アイツがいて、当たり前』の感覚、か」 が来てから、焦燥感はなくなった。 『何』かはまだ分からないものの、心は何故か安定している。 むしろ、『何者でもかまわない』気すら、起きてくる。 (…だが、それで寝首をかかれたら) それこそ命の危機だ。 だからこそ油断してはいけない。 八戒も、悟浄もそれを分かっている。 三蔵は勿論のことだ。 悟空は…全くもって考えていないだろうが。 それゆえに正体に執着する。 それゆえに遊びながら心情を探る。 それゆえに表面にしか感情を出さない。 お互いに、何があってもいいように心の準備は出来ている。 それはきっと、も同じこと。 (油断しては、いけない) それが、また悟空を除いた四人の共通点。 |