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タッタカタッタカと歩を進めれど、行く先は岩場だらけ。 このままでは岩場とランデブーだろうか。 硬いここで休息など御免被りたい。 キョロキョロとあちこちを見ながら足を進ませていると、大きな建物が目に入った。 「うわ、すげ」 「ピーッ」 が感嘆の声を漏らすと同時に、白竜も声をあげた。 大きな建物、というよりは寺だろうか。 立派で荘厳なものだ。 ここで寝泊りできないものだろうか、とは思案しながら後ろを振り向いた。 「三蔵〜」 「…なんだ」 声をかければ返事が戻ってくる。 悟空に何度も呼びかけられることに対する反射のようなものだが、でも律儀に返事をするようになった。 お互い面倒臭そうな声を出すのはお互い様だ。 「寺っぽいのがあるけど、寝泊りとか出来たりしねぇかな?さすがに岩場で寝るのはゴメンだし」 ゆるりと建物を指させば三蔵の無表情な顔にも少しだけ表情が出る。 どうやら彼も岩場での寝泊りは遠慮したいらしい。 後ろの八戒らにも聞こえていたらしく、彼等も歩を速めた。 「一晩の宿をお借りしますか」 八戒達が追いついて目の前の寺を見上げた。 三蔵はその建物に慣れているのか何も言わないが、ポカリと口を開いているのは悟浄と悟空だ。 「げ、ごたいそーな寺だなオイ」 「すみませーん」 八戒が大きく声をあげる中、もゆるりと大きなそれをもう一度見上げた。 こんな岩場にこんな大きな寺を建てるとは、全くもって仏道は分からない。 ぼんやりと見ていると、見張り台らしきところに人が現れた。 「何か用か!?」 「我々は旅の者ですが、今夜だけでもこちらに泊めて頂けませんか」 応対しているのは寺の僧。 頭は勿論僧である如く髪はなく、法衣が似合っている。 ただ、目でジロジロと五人を見た後、悪態をつくように口を開いた。 「−フン、ここは神聖なる寺院である故、素性の知れぬ者を招き入れるわけにはいかん!」 「なッ…」 驚いたのは悟空。 顔を顰めたのは悟浄。 何となくあの坊さんの表情で察していたのか、と三蔵、そして八戒はのんびりと見上げるだけだ。 「あー、まぁ、そうなるよなぁ。恐いもん、金色の人」 「死ぬか?」 の言葉に三蔵は拳を握りしめて見せる。 銃やハリセンを取り出さないのは一応寺の前だからだろうか。 目を合わさないままは振ってくるかもしれない拳を受け止めるべく、無表情のまま片手で防御。 ここ数日で培われた教育の賜物である。 「クソッこれだから俺は坊主ってヤツが嫌いなんだよ!!」 「へー初耳」 中指を立てて悪態をつくのは悟浄。 後ろからはに作った拳をお見舞いすることなく、平然と声を出す三蔵。 そういえば三蔵は坊さんなんだっけ、とは今更考える。 彼はどうやら面倒になったらしく、への攻撃はやめたらしい。 はそれを確認した後、下ろした自分の手を見つめた。 (…うーん、もしかして『俺』が原因かなぁ) 素性の知れない者、というのは勿論五人全員を表現しているのだろうが、ある意味『』のことでもある。 三蔵が前から気にしているの『正体』。 これこそ、最も素性が知れないのだ。 (三蔵も確か仏道の何とかこんとかだし、あの人も何かに気付いて言ったんじゃねぇかな) 人でも妖怪でも、神でもない。 この歪な『存在』に。 そうだったら何となく申し訳ないなぁと思いながら、はポケットに自分の手をしまった。 もう一度気だるそうに紫苑の瞳で上を見上げて溜め息一つ。 「困りましたねェ」 「なー腹減ったってば三蔵ッ!!」 「さ、三蔵だと?」 悟空の三蔵、という言葉に坊主が反応する。 がおや、とのんびりと見上げていると、どうやら戸惑っている様子。 「…まさか“玄奘三蔵法師”…!?」 「何!?」 どうやら『三蔵』という称号に驚いているらしい。 はちらりと隣を見上げると、全く動じていない三蔵の姿。 視線に気付いたのか、視線で彼は「なんだ」と返してくる。 肩を軽くあげて「別に」の意を示してから、二人揃って視線を上の僧へと向けた。 「しっ…失礼致しました!!今すぐお通ししますッ!!」 「へ?」 「………」 大きな扉がいきなり開かれ、僧の人たちの態度がガラリと変わる。 キョトンとするのは勿論、純粋な悟空。 何も言わずに様子を見ているのは三蔵だ。 どうやらの『正体』は関係なかったらしい。 ホッと小さく安堵の息が漏れる。 ポケットから出した手は知らぬうちに汗で濡れていた。 (…いらない心配だったか) 誰にも見られぬように、その手をまたポケットに入れて、促されるままに歩き出す。 開かれた、寺院の中。 外見通りに、内装も立派なものだ。 広い空間に立つ柱も太い。 ただ、寺院なだけあって線香の匂いが充満している。 「これはまた広いですねェ」 八戒の言葉に同意を示したように悟浄が口笛を吹く。 は一番後ろでキョロキョロと辺りを見回した。 こんな山奥での大きな寺院。 造りも立派なのだが、こんなところに出すお金が一体どこから来るのだろう。 仏道は不思議が一杯だ。 「、離れないようにしてくださいね」 「あ、うん」 どうやら後ろでキョロキョロしてたことが分かったらしい。 何やら子供みたいだ。 頭を掻きながら、離れていた距離を軽く走って詰める。 「こちらでございます」 案内してくれた僧が促した先は、これまた立派な扉。 この寺院の責任者がいるであろう場所のようだ。 ギィ…と大きな音が寺院内に響いた。 |