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「うわあー店がいっぱいだっっ」 良い天気に、良い風。 活気ある町に人の群れ。 店が立ち並ぶ中、三蔵一行とは歩いていた。 「こんなににぎやかな町は久しぶりだな」 「ああ」 「妖怪の影響をあまり受けてないんでしょうね」 あちこちから笑い声が溢れている。 今までに沢山の村や町に寄っていたが、ここまで活気のあるものではなかった。 子供がはしゃぎ、大人が微笑む。 (いい町だ) も自然と微笑む。 あちこちに目をやり、人の流れを楽しむ。 子供にぶつからないように注意をしながら。 「、はぐれないようにしてくださいね」 「…ハグレマセン」 八戒の言葉に機嫌は激減。 微笑みが呆れに変わる中、そんなものは関係ないとばかりに彼は微笑むだけだ。 彼にとっては、はまだまだ子供らしい。 そこらを走り回る、彼らのように。 「悟浄、ちゃんとを見ててくださいね。気がついたら、いつもいなくなってるんですから」 「あいよー」 「…………」 悟浄が軽く返事をする中、だけは半眼で八戒を見上げた。 は一人で旅をしていたせいか、団体行動に不慣れ。 好きに行動するのが癖となっているため、気がつくといない。 それのお陰でどれだけ三蔵一行が探しただろうか。 本人はケロッとし、そこらの店に入っていたりする。 探していた自分たちが馬鹿みたいな印象すら受けるのだ。 まぁ、その度に怒られていたりするのだが。 「おら、おチビ〜。迷子センターにお世話になりたくなきゃ、しっかり裾に掴まってまちょーねェー三蔵の」 「ヤメロ。俺の裾が伸びる」 「俺だって裾伸びンのお断りだしィ、子連れだって思われたらイヤだしィ」 「………」 何故こんなに子供扱いされなくてはいけないのだろうか。 しかも、赤ちゃん言葉で。 彼らの方がよっぽど子供っぽいとすら思うのに。 何故、自分が。 の不満をよそに、手がいきなり引っ張られた。 「!こっちこっち!!」 「は?」 引っ張ったのは悟空。 抗うことは面倒なので、そのまま引っ張られる。 彼も彼で、どうやら兄のように振舞いたいらしい。 何かあれば必ず手を引く。 それはそれで、子供のような行動だとは誰も言わない。 「美味しそうだろ、アレ!!」 嬉しそうに指をさす。 悟空の視線の先には、肉まんのお店。 どうやら作りたてらしい。 良い匂いが鼻を擽る。 彼を誘うには持ってこいのモノ。 は納得しながらも面倒そうに口を開いた。 「あー。ですねー」 「だよな!」 ただ相槌を打つ。 しかし、悟空は嬉しそうにくるりと振り返った。 「三蔵!!あれ食いたい!」 「却下」 お金を握っているのは三蔵。 だからこそ、笑顔でおねだりしたのだが、勿論却下。 あっさり言う三蔵に、悟空は泣きマネをし始めた。 「何でだよッ!!だって食べたいって言ってるじゃんよ!!」 「いや俺言ってねぇし」 「何ィッ!?の裏切りモノ!!」 真実を言ったまでなのに、裏切りモノ発言されてしまった。 泣きマネ通り越して、本気で泣き出したかもしれない。 そんな悟空を横目に、はただのんびりと立つしかなかった。 「イジワル坊主!!!タレ目!!ハゲ!!」 「聞こえんな。誰がハゲだ」 「のモノグサ!!迷子!!チビ!!」 「…迷子って悪口?」 何故かにまで飛び火。 モノグサとチビは肯定するとしても、迷子とはどうなのか。 三蔵同様にさっさとその言葉をかわしていると、悟空は八戒に抱きついた。 優しい彼なら買ってくれるという気持ちからだろう。 八戒は苦笑を零しながら三蔵に向き合った。 「まあまあ…いいんじゃないですか?肉まんくらい」 「甘やかすと悪い癖がつくぞ、八戒」 それもあっさりばっさり却下。 まるで犬の主人に注意する調教師のようだ。 悟浄は同情するように、彼の肩に優しく手を置いた。 「めっきり、主婦だねェ」 「死ぬか?」 彼には主婦に見えたらしい。 確かにそう考えるなら、悟空は末っ子の息子で、八戒が優しいお兄さん役だろうか。 そこにが入っていないことを切に願う。 三蔵が煙草を銜えながら歩き出す。 それに伴い、全員が動き出す。 悟空に手を握られたままのも必然的にだ。 もう少しあちこちを見たいのだが、そうもいかない。 引き摺られる形になりながらも、は歩を進める。 それを止めるのは、彼らが止まるとき。 「−もしもし、そこ行くお兄さん達」 どこからか声がかかる。 一瞬、三蔵一行の足が止まる。 声を辿れば、そこには一人の人物が座っていた。 口には麻雀に使われる点棒が数本銜えられている。 きつね目と独特な声が印象的だ。 後ろにはなにやら不可思議な図が描かれている。 「旅の人でしょ?この清一色<チンイーソー>が旅路の先行きを占ってあげますよ」 そう、見た目はただの易者。 しかしは目を細め、疑うように見つめた。 逆に、三蔵一行は興味なしとばかりに背を向ける。 「ケッ興味ねぇよ占いなんて」 「第一、麻雀の役を通り名にしてる易者なんざ信用度低いな」 一蹴する彼らをよそに、はただただ見つめる。 顔を顰めながら、じっと。 悟浄や三蔵の言葉にめげることなく、その易者はクツクツと笑ってみせた。 「そっけないなぁ…ま、いいや。教えてあげましょう」 笑みが酷く、濃く現れる。 ただの笑みではなく、もっと深い何かが込められたそれ。 背中を皆が向けている中、その笑みの先が八戒に向いていることを確認できたのはのみ。 普段の笑みに戻した彼は、自分に向けられている視線の元、にも小さく笑いかけた。 「死相が出てますよ、皆さん。クククク…怖いですねぇ…」 ここでようやく、三蔵達全員が振り返った。 ただ当たっていたからではない。 言葉の奥に潜む、何かを感じたからだろう。 全員が睨みつける中、彼はそれすら楽しむかのように笑った。 「死に近いところに生きてるでしょう?我<ワタシ>にはわかる」 彼の視線は嘗め回すかのように五人全員を見つめた。 そして指はしっかりと、ある一定の人物をさした。 「特にーそう貴方だ」 「!」 八戒。 肩を静かに揺らすことに、動揺が見受けられる。 いつもならそういうことがないだろうに、今回ばかりは違う。 空気に呑まれているのだろうか。 それとも、この易者の言葉に力があるのだろうか。 町の賑やかさが遠のいていく。 そんなことすら、感じられる易者の瞳。 |