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の家に来て分かったことが幾つかある。 一人暮らしだが、家事はしっかりと出来ているらしいということ。 生活必需品は綺麗に揃っていること。 金銭面で困っているようではないということ。 そして。 多くの、宛のダンボール。 中身は多くの食材…といっても栄養バランスを取るためのアレではあるが。 全ての部屋に仕掛けられた盗聴器。 死角など全くないほどに埋め尽くされた、隠れた監視カメラ。 (……成る程、ね) に対する監視体制が整っている。 そして、彼女を支援する何者かがいることが明白だ。 一目蓮はそれらに気付かないフリをしながら、部屋中をしっかりと観察していた。 『あのお嬢ちゃんの裏で、何かが動いてるみたいだなぁ』 『先生方から少し小耳に挟んだ情報なんだけど…どうやら上の方が絡んでるみたいだねぇ』 輪入道と曽根アンナに連絡を入れたとき手に入れた情報。 それを証明するかのような部屋のこの体制。 の手首にあるリストカットの数の多さ、そしてが未だに生きていること。 これらを照らし合わせれば何となく見えてくる状況。 (でかい組織が、を使って動いているってわけだ) に関わらせれば事故に見せかけて人を殺すことが可能。 その分、彼女に関わってしまった人間をもチェックしているのだろう。 また、彼女が死んでしまっては元も子もない。 だからこそこの監視体制で、彼女の自殺を歯止めしているのだ。 当の本人は、今、蓮の目の前で御飯を黙々と食べている。 未だ感情を表に出してはいないが、先程までの冷たい瞳は消えている。 幾分か、穏やかなようだ。 その隣では子猫が、買ってきた子猫用の餌を美味しそうに食べている姿がある。 (こんな子供に、何を背負わせてるんだか) 何の組織かは知らないが、これだけ重いものを背負わせているのだ。 あまり人に執着しない蓮も、さすがに腹立たしさを隠せない。 地獄少女の下についた後、幾度と人の身勝手さを見てきたがまさかこれまでのものがあったとは。 (…ったく、これだから人ってやつは…) 過去、自分が人であったことを置いておいて、口に御飯を運ぶ。 自身が作った御飯は美味ではあるが、苛立ちがその味覚を邪魔している。 ふと、視線を感じる。 蓮が顔をあげてみると、子猫と、そしての視線がこちらに注がれているのが見えた。 「どうした?」 自分の考えを誤魔化すかのように、蓮は優しく微笑んでみせた。 すると、の眉間に皺が寄る。 同じように、子猫も何やら不満顔に見えた。 「何を考えているのか分からないけど………無理して、笑わなくていいと思う」 から蓮へと発せられた、普通の言葉。 記念すべき1つめの言葉は、蓮を驚かすものだった。 軽く目を見開いている蓮を無表情で確認した後、視線を御飯に戻す。 まるで、何事もなかったかのようだ。 (……こいつは、驚いたな) 意外と、勘がいいというか、なんというか。 未だ驚きながら自分を見つめている蓮に気がついたは、紅の瞳をまた担任へと戻した。 口の中の御飯の飲み込んだ後、ゆっくりと口を開く。 「……汚いモノを沢山見てきたから……何となく、人の感情が読み取れるんだ」 自分を嫌うモノ。 自分を憎むモノ。 自分を利用しようと企むモノ。 多くの、人間の黒い部分を見てきたには、なんとなく分かるようになってきたのだ。 この人間は自分をどうしたいのか。 自分にどんな感情を持って近づいて、遠のいているのか。 「センセイが俺に好奇心を持って近づいてきたことも、何となく分かってる。…この子猫はよく分からねぇけど」 ちらり、と紅の瞳は隣の子猫へと向ける。 子猫は答えるかのように「にゃあん」と鳴いたが、何を言いたいのか分からない。 が喉をくすぐると、グルグルと気持ちよさそうに喉を鳴らした。 (……成る程、本人も自分が利用されていることを知っているのか) 汚いモノを沢山見た。 の言葉から読み取れることはそういうことだ。 知っているからこそ、も罪悪感を感じている。 また、それから逃げられないからこそ死を求めていることも蓮には何となくだが察した。 しかし、死をも許されない監視体制。 (…だから、お嬢を呼んだ) 蓮の頭の中に浮かぶのは、前日見た光景。 真っ暗な部屋の中でパソコンに無表情で向き合う。 生きる気力をなくした瞳で送信している姿。 送信されたそれを見た地獄少女、閻魔あいの顔。 と争うぐらい無表情の彼女の眉間に、皺が寄った瞬間。 その姿を見て、輪入道と骨女、そして蓮は何事かと首を傾げたのを覚えている。 そして、何となく気がついたのは。 と閻魔あいの共通点。 紅の瞳と、無表情。 蓮の中で、一瞬。 その二人が重なって見えた。 |