には関わるな。



その忠告はあまりにも冷たく。

あまりにも悲しく。


どういう意味なのか、分かりかねた。




「…どう思う、曽根センセ」


「どうもこうもないよ…どうなってんだい」



職員室から出た二人は、自分達の生徒がいるクラスへと足を向けていた。
昨日と同じ、ラフな格好の一目蓮と赤いスーツの曽根アンナ。
教師となり、の潜入操作をするためだ。
それの一日目にしてこんな情報を手に入れるとは。



「命が惜しければ、に関わるな。…教師としてどうなんだ、それって」


「駄目、だろうねぇ普通は」



渡り廊下の窓の外は曇り空。
就任初日とはいえ、このはっきりしない天気は微妙だ。
曽根アンナ…本名、骨女は静かに溜息を漏らしながら蓮の言葉に返事をした。


何故に関わることで命を惜しむ惜しまないの言葉が出てくるのか。
それを問いただすと、教頭は渋い顔で淡々と事を告げた。



『彼女に関わると、不幸に陥る。それが本当だからです』



そんな馬鹿な。
ただの戯言や噂だろうと蓮が言葉を返した。



『…それがそうでもないんです。現に1年D組の担任と副担任は……』



クラスに浮くと、自分だけでも仲良くしようと優しく接した担任。
の髪と瞳を軽く注意した副担任。

二人共々、それぞれ大きなトレーラーと衝突し大惨事となった。
本当に、命からがらだったという。



『それだけではない。…彼女の両親が事故死して以来、そういうことが多発しているのは…この地域に住む全ての人が知っている。……あの子は…』



悪魔だ。



そう言い切った教頭。
教頭に支えられている校長。
聞き入っている他の教師。
全員が頷き、全員が恐怖に慄く。

それがひしひしと伝わった。



「…とりあえず、これは輪入道にも報告しなくちゃあねぇ」


「お嬢にも、な」



自分達と同じ遣いの輪入道は今は自分達と別れて調査中だ。
ちなみにお嬢、というのは地獄少女を呼ぶときの名称である。
蓮がそう言うと、骨女も分かっている、と頷いた。



「で、どうするんだい?あの子のそれを調べるには…あの子に近づくしかないよ?」



あの子のそれ。
の、その噂だ。
それを確かめなければいけなくなる。
骨女の質問に、蓮は余裕の笑みでクイクイと自分を指した。



「俺が行くよ」


「あら珍しい。アンタが自分から行動するなんて」



蓮の言葉に、骨女は目を丸くした。
一目蓮は、興味のあることにしか、自分から動かない。
そうでなければ、ただひたすらやる気なく指示に動くだけだ。



「滅多にないからな、こんなこと。…こんなに楽しそうなことは」


「あのねぇ……死ぬかもしれないとかそんな話なんだよ?」


「もうとっくのとうに死んでるんだからいいじゃないか」



心底楽しそうに笑う蓮。
そんな姿に、骨女は呆れて溜息を1つ吐いた。


どんなところに興味を持ったんだか。

自分から地獄に流して欲しいと懇願する相手だからか。
虚ろな瞳で送信する姿を見たからか。
はたまた、こんな噂が立てられる相手だからか。

考えれば考えるほど、全部な気がして止まない。
骨女がまた1つ溜息をして止まってみれば、そこはもう教室の前だった。



「さて、優しい担任を演じますかね」


「…勝手にしなよ。アンタも物好きというかなんと言うか」


「それはお互い様でしょ、曽根センセ」



茶化すように蓮が言えば、骨女は否定はせずに薄く笑ってみせた。
どちらにしろ、骨女も気になっているのだ。
がどんな人物なのか。
…どんな思いを抱えているのか。


示し合わせたかのように、教室のドアをカラカラと開く。
新人教師二人は、男子生徒女子生徒両方からの黄色い声に出迎えられ、中へと入っていった。











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