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一通り案内が終わってテニスコートに戻れば まっさらだったその場所に人が増えてきていた 「おや、皆来始めたようだね」 「あ、本当ですね!」 ジャージ姿の部員が溢れてきている。 一年は赤、二年は青、三年は緑の色と分かりやすい色違い。 数名ではあるが全色ある中で、一際目立つジャージがある。 背中に書いてある学名から、レギュラーのものだろう。 全員コート整備や、ネットを張ったりテニスボールを出してきたりと準備中だ。 不二と共に、も入って見渡す。 (ふわわ…みるみるうちにコートが作られてく!) これからまた、テニスが始まる。 の顔がまた輝きだす。 持ったままのバッグを持つ手に力が入る。 不二はそんなの様子にクスクスと笑いながら、コートの中の人達に手を振った。 「や、朝方ぶり」 「「「「あ、不二(先輩)!チーッス!!」」」」 全員が頭を下げて、多くの人の声を合わせて大きな声になる。 あまりの大きさに、はビクリと身体を強張らせた。 ピンと背筋を伸ばして、自分も反射的に「ち、ちーす!」と声をあげた。 勿論、不二にはもう挨拶をしているので目の前の多くの人達に、だが。 そこで、全員の眼がキョトンとしながらを見詰めた。 「あれ、不二。その子は?」 皆がを見つめる中、代表してレギュラージャージを来た人物が尋ねてきた。 前髪が二本の触角のように伸び、その他の髪は坊主に近い独特の髪型。 しかし、その瞳は不二と同様、いや、それ以上に優しいもの。 それと同時に、ははた、と自分の立場に気付いた。 制服を着てテニスバッグを担いだ、見たことのない不審人物。 まさにそれは、自分のこと。 ザッと青ざめて、どう説明しようかワタワタと慌てていると、隣の人物が笑顔のまま口を開いた。 「ああ、大石。今日噂になってただろ?この子が噂の入学生だよ」 「へぇ!君が?」 「あ、本当だ!隣のクラスに入学してきただ!」 「テニス部に見学に来たのか!」 「は、ふわ、はい!」 不二の紹介に大石と呼ばれた青年が関心を持つ。 と同時に、その場にいた一年がここぞとばかりに寄ってくる。 他の学年の部員も興味津々にを覗きこむ。 急な視線に勿論、緊張が走る。 沢山の言葉にどう返していいか分からない。 「ふわ、ふわわ、え、ええと、いい一年のともも、申します!テテテテニス部見学しに来ましたぁぁ!!」 「へぇ、そうなんだ!ようこそ、男子テニス部へ!歓迎するよ」 「ああああありがとうございましゅっ(痛い!舌噛んだ!!)」 ドモりつつ、そして舌を噛みつつの挨拶になってしまった。 かなり恥ずかしい。 現に、周りの何人かはクツクツと笑っている。 隣の不二が良い見本だ。 しかし、大石は気にしていない。 ニッコリと笑いながら手を差し出した。 「俺は副部長の大石秀一郎。よろしく、!」 「ふ、ふふ副部長!?よよ、よろしくお願いします!お世話になります!!」 目の前の青年は副部長。 その事実に驚きながら、握手を交わす。 手の中は汗で湿っている。 恥ずかしすぎて泣きたいぐらいだ。 「大石、に色々場所は案内しておいたから、色々説明しておいてくれるかい?僕は着替えてくるから」 「ああ、わかった」 「ああああ、ふふ、不二先輩ありがとうございました!!!」 「フフッじゃあまたね」 そういえば制服のままで付き合わせてしまっていた。 が慌てて感謝の言葉を述べて頭を下げると、気にしてないとばかりに軽く手を振られる。 彼はそのままロッカーへと着替えに行ってしまった。 その後ろ姿を見送りつつ、大石が口を開いた。 「さて、とりあえずあのボードのところに行こうか。見学に来たんなら、部活が始まる前に説明した方がいいだろうし」 「あ、ありがとうございます!お手数おかけします!」 「皆はコートの方、よろしく頼んだよ」 「「「「ウィーッス!!」」」」 大石に促されて、周りの部員達が声をあげる。 しっかりと統率されているあたり、部として纏まりがあることが伺える。 はそこに感心しつつ、前を歩く副部長に続く。 のんびりと会話しながら。 「はテニス道具を持ってるようだけど、経験者?」 「あ、はい!小さい頃からちょっとやってて…。二年ほどブランクがありますし実力的には弱いんですけど、テニスは大好きです!!その気持ちは誰にも負けないつもりです!」 幼い頃から父から遊んでもらっていたもの。 そこからずっと続けてきていたテニス。 ここ二年は色々とあってテニスに中々触れられなかった。 ある人との計らいで長期休みにはテニスをすることが出来たが、この期間も極端に少ない。 実力もまだまだだと、父親から言われてばかりだが、この気持ちだけは誰にも負けたくはない。 テニスに触れられなかっただけ、この気持ちは更に増した。 テニスに触れられる これが至福の喜びになる 「その気持ちさえあれば、こっちとしては嬉しい限りだよ。実力は後からついてくるもんだからね」 「はい!練習頑張ります!勿論、球拾いも整備も掃除も!!」 「ハハッその意気だ」 一年からテニスをさせてもらえるとは思っていない。 特に高校から入ってくる生徒が少ない分、途中入部の人間も少ないだろう。 だからこそ、一年でも中学時代に活躍した部員で一杯のはずだ。 尚更、がテニスをプレイさせてもらえるとは思えない。 勿論、実力主義であるこの学校のテニス部であるために、一年も打ち合いが出来るだろう。 中学のレベルとはいえ、上手ければレギュラー入りも目ではない。 しかし、一年生は先輩の背中を見て育つもの。 先輩達とて、苦労してやってきたのだ。 それから逃れることは出来ない。 よっぽど、テニスが上手くない限り。 「さて、じゃあこのテニス部だけど…中学時代からメンバーあんまり変わってなくてね、先生にも中学から引き続きお世話になってるんだ」 「へぇ、じゃあ皆顔馴染みってことですか?」 「うん、そうだね。お互い性格とかプレイスタイルとか分かっちゃってるって感じかな」 「そうなんですか」 差し障りのない会話をしつつ、ボードの前へと移動し終える。 大石はそれから説明をし始めた。 ボードを使いながら、丁寧に。 練習メニュー。 コート整備などの当番制。 人数や、他の学校とのこと。 戦歴。 レギュラーは八人。 一か月に一回ランキング戦があり、その上位二名がそれになれるということまで。 「今度それがあるから、レギュラー決めが近いんだ」 「そうなんですか!そんな忙しい時期にすみません」 「いいよ。新入部員は大歓迎だから」 ニッコリと笑いながら説明が続いていく。 その間、ぞろぞろと部員が集まってきていた。 各々ストレッチをし始めたり、自分の役割を確認したり。 そして副部長から説明を受けているを気にするのは仕方ないこと。 ただでさえ背が小さく、銀髪であるために目立つ。 しかし、テニスの説明を受けているにとってはどこ吹く風だ。 完全にテニスにしか目がいってない。 目をキラキラと輝かせて説明を熱心に受ける。 時間が経つことすら、忘れるくらいに。 |