集まれば集まるほど




息吹く想いがある












「…と、こんなとこかな。後は実際に見てもらった方が分かりやすいと思うけど」


「ありがとうございます。凄く分かりやすかったです!」


「ハハッ、そう言って貰えると嬉しいな。時間的にも丁度いい。そろそろ部長の手塚と先生も来るだろうし、その時に改めて話があるかも」


「はいっ!」



恐らく、先生はの事情を知っている。
だからこその話があるだろう。
部長からは他に注意点などがあるかもしれない。
は期待にも満ちた返事を返した。

着々と近づいてくる、時間。
心も昂っていく。


楽しみで、しょうがない。



「大石、説明は終わったの?」


「ああ、不二。今終わったとこだよ」



着替え終わったであろう不二が顔を出す。
レギュラージャージがピッタリだ。
大石も笑顔で頷いて、も笑顔のまま頷く。
楽しみが上回っているため、表情がだらしなく緩んでいる。

不二はその表情にふんわりと微笑んだ。



「そ。それはよかったね」


「はい!!今から凄く楽しみです!」


「まだ時間あるし、同じ一年生達と話してきたら?色々話聞けるかもよ」


「あ、はい!じゃあ、失礼します!!」



二人に頭を下げて、は赤いジャージの軍団へと走っていった。
彼らも気付いたようで笑顔で駆け寄ってくる。
珍しい入学生だからこそ、話が聞きたいのだろう。
そしてテニスに興味があるからこそ、は彼らに話を聞きたがる。

和気藹々と話始める一年達。
コート上での学生服と身長の低さ、銀髪が際立つ。
どうやらその辺もからかわれているらしい。
笑顔の中、膨れている顔も見える。



「フフッさすが噂になるだけあって、人気者だね」


「そうみたいだな」



遠くからその姿を眺めるのは、先程に説明していたレギュラー二人。
笑顔のままその団体を見つめている。
一年は素振りを見せたり、色々と自慢しているのを見ては目をキラキラと輝かせている。



「あのって子は、本当にテニスが好きみたいだね」


「ああ、説明しててもずっと笑顔のままだったしな」


「僕も案内してたけど、ずっとニコニコしてたよ。目をキラキラさせてね」



二人の目に映ったのは、珍しい入学生の小さな一年生というだけではない。
テニスが関わったときの、瞳の輝き。
満面の笑顔。
大好きだと声に出さずとも分かる表情。

勝負に対する想いのものではない。
ただ純粋にテニスを好く。
それがありありと顔に書いてあった。



「ハハッ。そういえばテニスが好きだって気持ちは誰にも負けないって豪語してたな。実力は弱いと言ってたけど、どうだろうな。楽しみだよ」


「そうだね」



何よりもテニスを好きだという気持ちは大切だ。
技術や実力なら、練習で少しはつくものだ。
ただ、感情だけは自分でコントロールするしかない。
特に、好きと嫌いというモノはコントロールとか関係ない。
自然と生まれてくるものだ。

これは感情の中でも一番大きい。
それだけで、テニスのプレイは左右される位に。


その気持ちが一番大事。
それを知っているからこそ二人は遠くで嬉しそうにはしゃぐを笑顔で眺めていた。



「何何〜?何の集まりアレ」


「何スか〜?この騒ぎ」


「ウルセェことになってるッスけど…何かあったんスか」



その騒ぎに他のレギュラーが大石と不二に近寄っていく。
赤っぽい髪が横に跳ねている人物、黒髪を上へと立たせている人物、そしてバンダナを巻いている人物。
全員があの特徴的なジャージだ。
彼らに二人が笑いかける。



「うん、例の噂の入学生が見学に来たんだよ」


「え、マジマジ!?あ、ホントだ!噂通りおチビより小っさいのがいる!」


「うぉ、本当だ!銀髪ってのも噂通りッス!」


「チッ見学者ぐらいでギャーギャー騒ぎやがって…」



反応はそれぞれ。
食いつく二人とは逆に、バンダナの青年は心底面倒そうだ。
恐らく、静かに練習したいのだろう。
その性格を知っているレギュラーメンバーは苦笑を零したり溜息を吐いたり。

他の二、三年も遠巻きに集まりを見つめている。
噂の入学生ということもあって気になっているんだろう。

これでは先生、もしくは部長が来ないと始められないかもしれない。



「チース」


「この騒ぎは…例の入学生の見学である確率…100%だな」



そう言ってるうちに、他のレギュラー陣も集まりだした。
周りより小さい一年レギュラー。
そして黒い短髪と黒縁眼鏡が印象的なレギュラー


レギュラー同士で挨拶を交わしていく。
そして集まりを見て、騒ぎの内容を聞く。



「へぇ、そうなんスか」


「おいおい越前!同じ一年だろうが」


「興味ないッス」


「相変わらずだにゃ〜おチビは!」



そしてこれまた反応も様々。
興味ない者もいれば、それにツッコミをする者もいる。
勿論、彼らの言葉はには聞こえていない。
周りの一年への対応に追われている。
しかし、テニスの話題なだけに嬉しそうだ。



「どんな一年だったんだ?大石」


「うん、ブランクはあるけど経験者だそうだ。テニス好きは負けないって豪語してたよ」


「ホウ、それは楽しみだ。一度プレイを見てデータを取ってみたいね」


「ハハッだろうな」



話題は必然と噂の人物へ。
それだけ貴重な入学生であり、新入部員だ。
和気藹々と皆で話していると、遠くから皆の大きな挨拶の声がかかった。



「「「「「チューッス!!!」」」」」



部員達の声。
彼らが向けたのは、テニスコートの入り口にいる人物達。


一人は先生の竜崎スミレ。
そしてもう一人は淡い色の髪と切れ長の瞳、眼鏡が印象的なレギュラー。
しかしその存在感は圧倒的だ。
は皆の声に促されて挨拶し、彼を見つめた。



「全員集合!!」



透き通った一声が響き渡る。
その命令は耳から頭へと綺麗に伝達し、自動的に身体が動かされるよう。
背筋がピンと伸び、全員が走り出すと同時にも頭で分からないまま動く。

これがカリスマの成せる技。
そして恐らく、彼こそがこの青春学園高等部男子テニス部の部長だろう。
並んだことのないもとにかく、一年生の隣に並んでみる。
一人制服というあたり、どこか滑稽だ。


彼はチラリとを見た後に全体を見回した。



「これから部活を始める!全員、準備体操してからランニング30周!それが終わってからレギュラーと二、三年は軽く打ち合っておくように!一年は球拾いだ!」


「「「「はい!!」」」」



まさに鶴の一声。
いや、それ以上に彼についていきたいと思わせる。
だからこそ、この部が纏まっているのかもしれない。
皆の顔も生き生きしている。

この部活の空気が良い。
は自然と感心の笑みを零して辺りを見回した。



「それと、見学者!」


「ふわわっ!はい!」



まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったため、はドモって背筋を伸ばし、勢いよく返事をした。
いきなりのことには弱いため、やはり格好悪い返事になってしまった。
普段なら赤面するシーンなのだが、緊張感が漂いすぎていてそれどころじゃない。
何を言われるかドキドキしながら見上げる。

彼はしっかりとを見て、口を開いた。



「話がある。此方に来るように!」


「ふわっ!?ははは、ハイ!!」


「では、準備体操に移れ!!」


「「「「ハイ!!」」」」



一言で、部員がバラバラに散っていく。
そして各々筋肉や身体を解し始めた。
一生懸命に、そして楽しそうに。

はそんな彼らを見ながら、ダッシュで部長らしき人物の元へと行く。
よく分からないが威厳を感じ、逆らったらいけないという思いが働いていく。
だからこそ、全力ダッシュ。
そして、そこにしっかりと立って、気を付け。
緊張から、腰からの角度は九十度で頭を下げた。



「ああああの!見学者のと申します!きょきょきょ今日はよろしくお願いします!!」


「部長の手塚だ。宜しく頼む」


「そう緊張するんじゃないよ。別に取って喰おうってわけじゃないんだから」


「は、はい先生」



先生の声で頭を上げる。
そして改めて手塚と名乗った部長と先生を見上げた。

身長だけじゃない。
恐らく、テニスにおける全てにおいても、器としても強くて広い。
それを近くにいれば、感じられる。



「とにかく、話がある。先生、先程と言った通り先生の部屋でいいでしょうか」


「ああ、いいとも。着いておいで、


「は、はい!」



二人が颯爽と背中を向けて歩き出す。
はそれを追いかけた。
一体何の話か分からないからこそ。

首を、傾げながら。












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