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テニスの試合 終われば一年トリオと一緒にいた 「君凄いね!堀尾君は中学のときレギュラーだったんだよ!」 「ほんと、凄いや!」 堀尾と一緒に審判のところに歩み寄る。 そこには既に、審判も台から下りてきていてカチローも集まってきていた。 二人が目を輝かせて走り寄ってくる。 堀尾は唇を尖らせているが、は恥ずかしそうに頭をかいた。 「そんなことないよ。あ、ええと…審判やってくれた水野君?だっけ?」 「あ、うん!水野カツオって言うんだ。カツオでいいよ!」 「審判ありがとな、カツオ!俺のこともでいいから。堀尾様も!」 「しょうがねぇなぁ。今日の試合に免じて、俺のことも堀尾って呼んでくれていいぜ」 「おう!」 カツオの名前も聞いて、これで一年トリオの名前は全員覚えることが出来た。 同じ一年だからこそ、あまり気遣いしなくていい。 四人で談笑すら出来る。 「てか、お前よく俺の弱点見抜けたな〜」 「あ、うん。堀尾は結構分かりやすかったと思うよ。それに、打った後の隙が結構あったから」 「ゲ、マジかよ!」 そして、お互いに弱点や長所を言いあうことが出来る。 特に、はあれ以来ポイントを与えなかったがために、堀尾の短所が浮き彫りだったと言える。 己の弱点を知れば、もっと強くなれる。 だからこそ、お調子者の堀尾も簡単に耳を貸した。 お互い高め合うことが出来る。 これが彼に部活の醍醐味ともいえよう。 「、堀尾。お疲れさん」 「先生!」 「あ、先生!試合ありがとうございます!」 そこに竜崎先生がやってくる。 アドバイスをするのは目上の人の方が一枚上。 二人は素直に頭を下げた。 「堀尾は油断しすぎだよ!全く。誰が相手でも真剣にやれと言っておるだろ!」 「は、はいぃ…」 「はワシの予想以上だったが…やはり力が全体的に落ちてる感じかい?」 「はい…堀尾が力任せのショットを連続で打ってきてたら、ヤバかったと思います。それに確実に技術も落ちてますし…頭じゃ分かってても身体がついていきませんでした」 「「アレで!?」」 の言葉に一年トリオ中の二人が反応する。 堀尾はショックで声を失っている。 しかし、これは本当のこと。 氷帝の練習のときより、確実に全体的に落ちてる。 ラケットを見つつ、手の感触を確かめる。 テニスが好きだから、という感情にいつも流されているわけではない。 プレイしながらも、自分の実力を自分なりに測っていた。 顔は笑っているが、どこか悔しそう。 竜崎はそれを見つつ、ニヤリと笑ってみせた。 「フム…これからすぐにまた試合できるかい?」 「えええ!?ははははい!勿論です!テニスならいつでもどこでも誰とでも何度でもやります!!やらせてくれるんですか!!?」 どんなに落ち込んでいても、目の前にテニスがあれば喰いつく。 ドモっていても、キラキラと輝きだす。 やはり、何よりもテニスが好きなようだ。 ここ数カ月は、テニスが出来なかったからこそいくらでもやりたいに決まってる。 竜崎はその様子にクツクツと笑った。 「ウム。じゃあ二年の荒井ともやってもらおうか。アンタの実力はまだ測りきれてないからね」 「はいっ!!」 堀尾だけでは測りきれていない。 これと言って、特徴的なプレイが見えなかったからでもある。 基本的なものを忠実に、やってのけただけ。 相手の弱点を見極め、そこに集中的にボールを集めただけなのだから。 竜崎は二年の荒井を呼び出しに行った。 ヘアバンドをし、茶色の茶髪が目立つ先輩だ。 今の試合を見ていたらしく、「俺はああはならない!」と豪語しているのが遠くに見える。 「、気をつけろよ?」 「ん?」 「荒井先輩気が荒いし、俺なんかまだまだなんだぜ!」 堀尾がに声をかけてきた。 他の二人も、あの先輩の気の荒さを告げてきている。 それ以上に、テニスをしているがために技術も力も上だろう。 「へぇ!楽しみだな〜」 「…お前ね…」 が、には関係ない。 相手のテニスのプレイがどんなものなのか、どんなテニスが出来るのか。 そればかりに心がいく。 忠告しているのに、楽しみだと言う。 嬉しそうに笑うに、三人は呆れを通り越した苦笑を零した。 水色のジャージを来た先輩が入ってくる。 どこか偉そうな空気を纏っている。 「よろしくお願いします、荒井先輩!」 「新入り、手加減はしねぇからな」 「はいっ!」 が、彼よりも偉そうな俺様を知ってるため、そんなに嫌な気分にはならない。 笑顔で応え、位置につく。 どうやら握手はしてくれないらしい。 それは若干、警戒を含んでいる。 サーブ権は彼へと流れた。 「ワンセットマッチ!荒井、トゥーサーブ!」 「いくぞ!!」 連続のテニスプレイ。 体力がないと、それに勝つことなど無理に近い。 相手は先程よりも格上。 尚更勝率は低くなる。 だが。 の顔は笑ったまま。 サーブを打ち返す。 しかし、その打球は酷く重い。 (やっぱり男子の打球は重い…!!) 両手で受け止めたが、力が強いために痺れる。 返すのがやっと。 だが、それで終わらせるわけにはいかない。 サーブだけではない。 他の打球も一球一球重みがある。 (だけど、氷帝のレギュラーは、もっと強かった…っ!) レギュラーとも練習させてもらった覚えがあるにとっては、返せない球じゃない。 仕掛けるには、力じゃ敵わない。 だからこそ、それを薙ぐだけの技術が必要だった。 それを手に入れるための、合宿。 勝っても負けてもテニスをするだけ楽しいのは確かだが。 勝った方が、嬉しさは倍になる。 (負けられない!!もっと、強くなりたいから!!) 「いきます、荒井先輩!!」 力を、技術で返す。 まともに受けたら、まだ弱い自分の筋肉では対応しきれない。 だからこそ。 受け流す。 ラケットの上で球を転がし、余分な力を吸収する。 そして的確な位置へ、返す。 「ホーウ…」 綺麗に決まった。 茫然となる荒井が見える。 竜崎はしっかりと、その瞬間を見つめていた。 (力はない、だからこその技術、か) の場合、確かに力がない。 技術も自分が言っているのだから、鈍っているのだろう。 だが、返したときの瞳はギラリと輝き、身体が自然と動いていたようだった。 大きな身体から繰り出される力。 逆に小さい身体だからこそ、技術で流すしかない。 それを、頭よりも身体が分かっていたかのよう。 「では、こちらからもいきます!!」 攻められてばかりが、テニスじゃない。 どんどん忘れていた技術を出していかないといけない。 身長の高い相手だからこそ、弱点もある。 目を細め、その位置を見る。 相手の、足元を。 「はいっ!!」 そこに打つだけなら簡単。 荒井も見抜いていたようで、すぐに構えた。 いつものようにバウンドするなら打てる。 だが。 「何っ!?」 素直にバウンドしない。 入射角度は関係なく、スピンがかかって高くバウンドするわけでもない。 逆回転で、足元ギリギリを酷く低くバウンドする。 普通のラケットの角度では取れない球。 特に、大きい人だからこそ難しい。 膝を曲げて届いても、ラケットの角度が掴み辛い。 金網にテニスボールが当たる音が響く。 立ちつくす荒井に、はすっと背筋を伸ばした。 「今のは名づけて、大きい人への抵抗、低いバウンドボールです!!」 「まんまかよ!?」 酷いネーミングセンスに堀尾がツッこむ。 その言葉にあちこち苦笑が零れている。 見ていたレギュラー陣までも。 ツッこまれてみれば、やっぱり恥ずかしい。 は顔を赤くし、苦笑を零した。 「…あ、やっぱり駄目かなぁ…この名前」 「駄目に決まってるじゃん!せっかくいいショットなのに!!しょーがないなぁ!このテニス歴五年の堀尾様が考えといてやるよ!!」 「あ、はーい」 改めて今のショットのネーミングは堀尾が考えてくれるらしい。 それは酷くありがたいことだ。 ご厚意に甘えて、命名は任せる。 「…へぇ、不二先輩のツバメ返しに似てるッスね」 「マジすっげぇな!バウンドをするところが違うぐらいか?」 越前と桃城がじっと球を見つめる。 感嘆の声も零れた。 は次の球に集中する。 どんどん試していかなければ消えてしまうかもしれない技術。 だったら、出していかなければ。 球が上に上がる。 スマッシュに対する絶好の球。 「いきますよ、荒井先輩!!」 自分にしかない、技。 手首を返して、思いきりスマッシュを打つ。 「これも俺の、必殺技です!!」 ただのスマッシュに見える打ち方。 球はバウンドの気配を見せず、アウトラインを目指していく。 荒井はニヤリと笑った。 「馬鹿め、アウトだ!!」 そう、アウトの球だからこそ、無視をしていい。 誰だってそう考えてしまう。 は、瞳を鋭くして球に念を込めた。 スピンの回転を、じっと見つめる。 そして、ふわりと笑った。 「いえ、成功です」 コート内に響き渡る音。 それは確実に、アウトだったものが中に入っていた。 急な、角度変更で。 「…なっ」 「ボールが…直角に落ちた!?」 荒井が驚く暇もなく、ギャラリーがざわめきだす。 アウトコースに飛んでいたボールが直角に落ちたことでラインの内側に入った。 普通はそんなこと、ありえないというのに、だ。 「…空中でスピンの回転が速まったね」 「ああ。それによってボールが風の抵抗をも受け入れて、直角に落ちた」 ギャラリーが驚く中、不二と乾はしっかり見極めていた。 ラケットの手首の返し、ボールの動き。 速くなったスピンは風の抵抗を助力にして直角に落ちていく。 それがコート内に入った。 勿論、そんな芸当。 誰にでも出来る技じゃない。 (決まってよかった!) 久しぶりだからこそ決まるかどうかは不安だった。 が、どうやら中に入ってくれたらしい。 ホッと一息ついて、笑顔で堀尾に顔を向けた。 「これが俺の必殺技、膝カックンスマッシュです!!どう堀尾!今度はまんまじゃないよ!」 「ダサッ!!」 「えええええ!?これもダメ!?」 ネーミングを評価してもらおうと思ったのだが、これも駄目だった。 先程よりそのままではないというのに。 しっかりと両手でバツを作られてまで否定されてしまった。 そこにガックリと肩を落とす。 しかしまだ試合は終わっていない。 「くっそ…なめやがって…っ!!」 球は次々とやってくる。 プレイを放っておくことは絶対にしない。 瞬時には走っていく。 笑いながら、球に向かって。 「俺の技、と呼べるものはこれ位。後は何もありません!後は……気力で勝ちます!!」 「くそっ…やってみやがれっ!!!」 勝負はまだまだこれから。 技があったとて、それを砕かれては意味がない。 全力でテニスをするから、楽しい。 持てる力全てで。 楽しむから。 |