一か月に一度の



レギュラー決めトーナメント戦がある













「…はえ!?何で俺も入ってるんですか!?」



無事入部が出来て数日経ったある日の放課後。
部活が始まる前に発表された、トーナメント戦のオーダー。
四つのブロックに分かれていて、その成績トップ二人がそれぞれレギュラーに選ばれ、計八人がそれになるシステム。

本来なら二年、三年がエントリーされる。
一年の越前は実力がかなりあるからこそ、普通に入れているのだが。



「あー、やっぱアレじゃねーの。荒井のヤツ倒しちゃったから」


「ええええええええっ!?そんな馬鹿なっ!」




どんな組み合わせが見れるのか楽しみに見てたら、Dブロックに何と自分の名前を見つけてしまったのだ。
どんなに目を擦ってもそこにある、一年、と載っている。

未だに信じられないで目を瞬かせていると、隣でさも当たり前のように声を出す先輩がいる。
先日仲良くなった桃城だ。

と、いうよりもをいつもからかいに来ているのだが。



「おかしいですよ!俺が入ってるなんて!そうですよね桃城先輩!」


「桃ちゃんでイイっつってんのに」


「いや、それどころじゃないです!これはきっと、何かの間違いです!!」



桃城の言うことは大概無視の方向。
というか、それどころじゃないと言った方が正しい。
未だに信じられないこのトーナメント。
どんなにガン見したところで変わってはくれない。

このスルーも慣れたらしい。
桃城はのんびりと慌てふためくを見下げていた。



「っつーかよ、部長やバァさんが確認してんだから間違いじゃねーと思うけど」


「それはそうですけど…」



彼の言うとおりなのだが、やはり納得出来ない。
他の一年トリオにも同じことを言われた。
これはもう、本当に彼らの意向を聞いた方がいいかもしれない。



「ちょっと、邪魔なんだけど」


「あ、越前」



二人の後ろから声をかけてきた人物がいる。
桃城よりも小さく、よりも少し背の大きい、帽子を深く被った一年生。

彼ぞ生意気な一年レギュラーのルーキー。
越前リョーマだ。

桃城と同時にも振り返る。
三白眼は面倒そうに二人の姿を見つつボードを見上げた。



「フーン、俺はAブロックか…大石先輩と当たるのか」



用件終了。
そのままユーターン。

あまりの素っ気なさに、は一瞬ポカンと口を開き、桃城は慣れているため苦笑を零す。
彼はこういう人物だ。
しかし、見るモノ見て何も言わずに去っていかれると何だか癪だ。

はさくっと去ろうとした越前の肩をガッシリと掴んだ。
掴まれた本人は溜まったもんじゃない。
振り返った目は、面倒臭いとまじまじと言っていた。



「…何」


「越前、お前自分のことだけ見てないでツッコんでくれ!俺がDブロックに入れられてるってことを!!」


「…別にイイんでないの。俺興味ないし」



熱く否定したが、何せ相手はクールな人物。
冷たくかわされてしまった。

そのままユーターンさせてしまった方が心が痛まなかったか。
自分の選択ミスにはガックリと頭を垂れ下げた。
彼の肩を掴んだまま。
それを見た桃城はというと。



「ギャハハハ!!」



大爆笑中。
どうやらあまりの冷たいツッコミ具合と落ち込むの姿がツボだったらしい。
腹を押さえて、ケラケラと笑っている。
こっちは凹んでいるというのに。



「…あのさ、用ないならもう行っていい?」


「……」



越前の言葉がの急所を抉った。
に、かなりのダメージ。
肩から手を外し、はその場に崩れ去った。
勿論、その間桃城は笑い続け、越前はいつもと同じ顔で見てるだけだ。



「ギャハハハハハッ!ほんっとお前ら面白ぇな、面白ぇよ!」


「…何が面白いンすか、桃先輩」



越前は全く、笑いの意味が分かっていない。
だからこそまた笑いが増す。

そんな二人に構ってる場合ではない、
は数秒落ち込んでから、ガバリと立ちあがった。
いきなりの行動にキョトンと目を開かせる越前を他所に、しっかりと紫苑の目は違う場所を見つめていた。



「…やはりこの問題は、先生に問いただすしかない…!行ってきます!!せんせーい!!!」



こうと決めたら、猛ダッシュ。
は脇目も振らずに、ベンチに座っている先生に向かって走り去った。
ケラケラと笑っている桃城と、ポカンとしてる越前をそこに置き去りにして。
遠のく銀髪に、越前は。



「……………最初からそうすればいーじゃん」



と、小さくつっこんだ。
それを聞き逃さなかった桃城は、笑い過ぎてその場に突っ伏した。












「せせせ、せんせーい!!」


「ん?じゃないか。どうしたんだい、そんなに慌てて」



バタバタと騒々しくは竜崎の元に駆けつけた。
まだ部活の準備中。
だからこそ話せるわけなのだが、慌ててるとは逆に先生はキョトンとしている。
その反応に何故分からない、とばかりに飛びついた。



「慌てますよ!何でトーナメントに俺が入ってるんですか!?」


「ああ、そのことかい」


「ああ、じゃないですよ!どういうこってすか!聞いてないですよ!」



竜崎は何ともなさそうに頷くだけ。
しかしこっちからしたら、大事件だ。
自分の性別がわかってる人物だからこそ、トーナメントの件は何かの間違いだと慌てるはずだと思っていたのだが。
まさに考えてた反応とは逆。

ということは、知っていたということだ。
はさらに噛みついていく。
逆に竜崎は目を瞬かせてから、しょうがないとばかりに苦笑を零した。



「しょうがないだろ?アンタは荒井に勝ったんだ。一年とはいえ、そんな実力者をエントリーさせない、なんてことになってご覧。逆に不信感が募るじゃろうが」


「いや、それはそうですけど…」



言ってることは尤もだ。
新入部員だからこそ、信頼というものは大事だ。
もしがエントリーしてなかったことで、不信感が募って探られてしまっては元も子もない。

また、テニスが思っている以上に出来ることは嬉しい。
実力を認めてくれたことも嬉しい。

だが、やっぱり複雑だ。
本当は女子、ということがやっぱりどこかで突っ掛かってる。
複雑そうな顔をしていると、竜崎からポンと軽く頭を叩かれた。



、アンタが気にする必要なんてないよ」


「先生…」


「中学のときは越前がそれをやったから尚更でな。ま、どうせアンタの実力じゃ今のレギュラー陣には敵わないから、思う存分テニスやっといで」




荒井との試合だってかなりギリギリだった。
それに堀尾から聞いたが、レギュラーと他の部員とではかなりの実力差があるとのこと。
確かに、の実力ではレギュラーに勝てることはないだろう。

ならば、ここは素直にテニスを楽しんだ方がいいかもしれない。
色々と悩んでいても、これは決定事項なのだから。



「うー…分かりました!先生の言ったとおりテニスを楽しむことを優先します!」


「ん、そうしておくれ」


「はいっ!」




先生と部長が関わって、考えてくれたのだから腹を括るしかない。
先程よりもスッキリとした顔で礼と返事をし、一年トリオの元へと走っていく。

その小さな背中を見送りつつ、竜崎はチラリと他の部員達を見やる。
トーナメント戦にが入ったことで、レギュラーを狙う部員達の目に真剣さが増している。
それはまた、今現在のレギュラー陣にとっても同じ。
特に、Dブロックにあてられているメンバーは。



「フッ…いい効果じゃないか」



トーナメント戦は明日からの三連休で行われる。
コートに入ってくる部員達は自然と自分の敵となる人物を探す。
どんなプレイをするのか、頭の中に巡らせる。

そして今は。



「…フシュー…」



と同じブロックに入れられたレギュラーが、睨んでいる。
強面と頭に巻くバンダナが印象的な海堂薫。



「…クスッ楽しみだな」



そして、天才不二周介。
この二人がDブロックのレギュラー。

実力的にはこの二人の方が上とはいえ、の能力がノびる可能性だって高い。
だからこそ、少しは警戒しているため反射的に見てしまうのだろう。
というよりも、誰が相手でも全力で戦うことが大切だ。
遅れて手塚も中へと入り、真っ先に先生の元へと歩いてくる。



「先生」



竜崎の元に来たということは用件があったということ。
それを知っているからこそ、彼女はニヤリと笑ってみせた。



「おお、手塚。待っとったよ。は納得させたからね」


「そうですか。…それで、例の制度は」


「それはトーナメント戦が終わったときに皆に話そうと思っておる。例えレギュラーにはなれないと分かり切っていても、最後まで諦めずに戦う者が相応しいからねぇ」


「…そうですね」



手塚は素直に頷いた。
のことも、そして例の制度についても。

その視線は自然と、辺りの部員へと行く。


いつもの時間になると部活が始まる。
明日からのトーナメント戦に向けてそれぞれ調整していく。
真剣な彼らの表情に、竜崎は笑みを濃くした。


(さて、明日から楽しみだねぇ)


全員の成長が一番見れる時間。
そして、が来たために出た影響。

それが、どう出るのか。














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