怒られようと何だろうと



次の日はやってくるのだ












朝の柔らかい光が地上を照らす。
時間としては朝の6時。
鼾がガーゴーと、そして小さい寝息二つが響き渡る部屋。

平穏な部屋。
しかしそれはすぐに消え去る。



「桃!越前!!朝だぞ起きろー!!」



大きな声が静寂を斬り裂いた。
いや、静寂ではなかったが(鼾で)。
バタンと大きな音をたてて入ってきたのは副部長。
大石はカーテンを思いきり開いて、光を部屋に入れた。



「むー…カルピンやめ…」


「眩しいなー…ぐごー…眩しいぜ…ぐがー」


「うむぅ…」



眩しい、溢れんばかりの光。
有難い光なのだが、寝ている人物にとってはいらないもの。
全員がもそもそと布団の中に潜った。

が、それを見逃す訳にはいかない。
大石は順番に布団を彼らの上から取り去った。



「ほら、桃!!」


「ほげー…んがっ!?」


「越前!!」


「…んー?」



掛け布団が取られたと同時に、その反動で床に落ちる桃城。
そして眩しそうにしながら目を擦って起きる越前。
寝起きが悪い二人組だが、今回はどうやら簡単に起きてくれそうだ。
その二人を見やってから、大石は最後の布団を取り払った。



「ほら、!!」


「んうー…」



最後はいつもバスや授業などでは目覚めが良いはずの
が、朝は弱い。
掛け布団を取られたは、くるんと猫のように丸まった。
まだ寝息を零すあたり、しっかりと起きてはいない。
それを見て、大石は眠っている人物の肩をグラグラと揺らした。



ー!起きろー!!」



グラグラと揺すられる感覚。
それがようやく、の神経を刺激した。
自分の身体を抱きながら、は薄らと瞳を開けた。
ぼやけた視界に映る副部長。
ようやくそれが誰なのかを、認識出来る。



「…んぁ……おおいひ、ひぇんはい?」



寝起きのためか、声が掠れている上に少し高い。
そして舌が回らない。
まだ寝呆けているため、状況は理解していない。
頭の上に?がついたままのに、大石はやれやれと溜息を吐いた。



「そうだ。おはよう、


「…?おひゃよう、ごひゃいひゃひゅ?」


「…おざーす、大石先輩ぃ」


「おはようございます…」


「うん、二人ともようやく意識が戻ってきたか。おはよう」



その間に、中途半端に起こされたままの桃城と越前が起きる。
意識の覚醒がようやく出来た二人は、まだ目が虚ろだが、しっかり大石を認識出来ていた。
しかし、はまだ夢現。
身体を起こしてはいるが、放っておけばまたすぐ寝てしまいそうにふらふらしている。



「…はまだ頭が寝ているな…!!」


「んむ…」


「…おわぁ…、本当に朝弱ェんだな…俺達より目覚め悪ぃぜ」


「…ふわぁ」



ちなみに桃城の言葉に、越前は欠伸で返事をした。
そしてどんなに大声が響いても、しっかりと覚醒しない。

ちなみに、こんな時間が10分続いた。










というわけで、合宿二日目の朝である。
美味しい朝御飯時。
決められたスケジュール通りに動くのが団体行動。
もくもくと皆が食べる中、は、というと。



「おチビチビ〜!もう寝ぼけてなーい?もっと寝ぼけててもいいんだぞ〜、面白いし!」


「起きてますよぅ!しっかり起きてます!!」


「本当か〜?さっきまで舟こいでたくせに〜嘘はいけねーな、いけねーよ」


「うぅっ」



からかい組にからかわれていた。
というのも、大石の目覚ましが10分以上別荘内に響き渡った。
そういうわけで、朝の寝起きの悪さ具合が見事に全員に知れ渡ったのである。

朝御飯を仲良く食べながらからかわれる。
悔しい、というよりは不甲斐ない、大石に対して申し訳なくなっているために、は素直に反省していた。



「全く…英二も桃も、もういいだろう!」


「だって、おチビチビからかうの面白いんだもん!なー桃!」


「そーっすよ!コイツ素直に表情に出るし、からかいがいがあるっつーか!!」



そう、からかい組にとっては面白いネタ。
そしてからかいやすいとくれば、からかわないわけにはいかない。
大石の制止を他所に、二人が肩組んでくるものだから、も逃げ出せない。
ひたすら気まずそうに食べ続ける。



「菊丸、桃城。今は御飯を食べることに集中しろ」


「「ちぇー」」



しかし、度が過ぎればイジメだ。
手塚が静かに制すれば、彼らは唇を尖らせながら席に座る。
さすが貫禄のある部長と言ったところだろうか。
彼の言葉に、は心底から感謝して、「部長〜…!ありがとうございます…っ」と礼を述べた。
いささか、あのお風呂事件のような感謝である。
手塚は少しだけ顔を歪めた。



「それにしても、本当に朝が弱いんだね、は」


「うん。昨日あんなに頑張らせちゃったから、疲れたっていうのもあるんだろうけどね」


「…それにしてもアレで起きないって相当ッスね」


「フム…朝は低血圧タイプか」



などなど。
からかわない組でも話のネタになるほど。
微笑ましい、と感じる不二と河村、そして呆れる海堂とデータを取る乾。
それぞれ反応は多々。
竜崎先生は一つ溜息を吐いた。



「やれやれ…、とにかく今日も皆にしっかりついてくんだよ。ハグれたりすんじゃないよ」


「…ハイ」



やっぱり不甲斐ない。
方向音痴の上に、低血圧で朝に弱くて皆に迷惑をかけるとは。
しょんぼりしながら、もそもそと御飯を食べるに「まだまだだね」とどこからか越前の声がしたのは、気のせいではない。

の立場はレギュラー陣の中で、確実にからかわれるものになってきていたのだった。













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