三日目も


元気よく












「………、大丈夫か」


「……うぇぷ……大丈夫じゃないれす……」



思わず手塚が心配する。
彼の目には具合の悪そうながいた。


合宿三日目。
お泊りとしては最終日。
今日も天気は凄く良く、気温湿度共に快適な状態。
爽やかな朝なのだが。



「…起きないからって何も乾汁飲まさなくてもよかったんじゃないスか、乾先輩…」


「フム。寝起きが良いように作ったつもりなんだがな…改良の余地ありか」


「…寝起き具合悪くなってんじゃん」



そう、寝起きが悪いを起こすのは今日は乾だった。
ちょっとやそっとでは起きないと分かっていた彼が取り出したのは、新・乾汁。
寝起きが良くなるように作られたものだったのだが。
が、どうまかり間違っても海堂の言うとおり、乾汁は乾汁なのであって、酷以外の何物でもなかった。

越前の言うとおり、寝起きが良いというより具合が悪くなって起きたと言った方が正しい。
朝御飯も終わり、これから練習だというのにその味は強烈だったらしく、まだ顔が真っ青だった。



「いや、具合は大丈夫なんですけど…まだ口の中にあの味が……はうぅぅ……」



まだ口の中が酸っぱいのと苦いのとで一杯一杯。
新・乾汁の味はやはり強烈以上の何物でもない。
その顔にツられて菊丸と桃城も少し青くなって見守っていた。



「わ、忘れるためにも早く練習した方が良い気がします。練習したらそっちに集中出来るんで……」


「わ、分かった!もう少しの辛抱だ、頑張れ!」


「はい…」



大石の応援を受けながら、集合していく。
どうやら彼はすぐに先生が指示を出してくれるように頼みに行ってくれたらしい。
有難い、優しい先輩を持ったものだ。



「乾汁の威力は今も変わらずだね」


「味だけでも変わってくれないスかねーホント。バスで寝起き悪かったらアレ飲まされるとか…考えたくねーな、考えたくねーよ…」


「ホントホント…」



河村の苦笑に青い顔二人組が頷く。
実際被害は作った本人より周りにいくから困る。
全員が納得する中(乾除く)、事態を大石から聞いた先生が声をあげた。



「よし、じゃあ早速指示だすから全員集合!」



何と優しい先生だろうか。
…というのも彼女もまた、乾汁の被害者であったため、威力は身を持って分かっているのだが。

青い顔をしたも他全員も声をあげて並ぶ。
そして早速、今日の指示が出された。



「今日はダブルス強化にしようと思う!さすがに何年も一緒にいるから、それぞれクセが強くても合わせられるようにはなってきているからねェ」


「まぁ、中学から数えれば長いですからね」


(…あ、そっか。俺除くメンバー全員が中学と変わらないんだっけ)



先生と不二の言葉に、はああそうか、と納得する。
どんなにシングルス向きのプレイヤーが多くても、過ごした時間は長い。
それぞれの癖や動きは成長すれど、何となく分かる。

それがどんなに心強いものか。
先生はそれを分かっている、勿論、本人達も。



「それに、新たな可能性もあることだしの」


「…そうですね」


「……?(それは何のことだろ)」



が、先生の口から出た新たな可能性、については分からない。
一体何のことだろうと首を傾げる前で、手塚が頷く。
他のメンバーもどことなく分かってるらしい。
彼らだからこそ、分かることだろうか。
長く同じ時間を過ごせば、「アレ」と言えば分かるというのだから、全員がそうなのだろうか。
凄いなーと感心していると、先生は颯爽とどこからか割り箸を取り出した。



「さ、これでダブルスの組を決めるよ。ちなみに今回は一試合ごとに、すぐにくじ引いてランダムにダブルスの相手を決める」


「じゃあ、同じ人と何度も当たることもあるってことスか」


「そういうことじゃ海堂。それに一人余るが、その人物には審判をやってもらう。それもまたくじ運ってことでな。…河村、今日は審判頼むぞ」


「はい、任せてください」



今回河村は出番なし。
そして全員で九人いるため、一人余れば審判役。
下手をすればずっと審判かもしれない。
…さすがにそれはないだろうが。



「さ、引いとくれ」


「「「「「「「はい!!」」」」」」」」



全員が納得したところで差し出される割り箸。
先輩から順番に引いていく。
そして越前が引いて最後が
引いたその先は、青学の色、青く塗られていた。



「…青だ」



青空よりも濃い、海よりは薄い青。
綺麗に塗られたそれ。
しかし、それは身近にもいた。



「お、俺は赤か〜。越前〜、何色だった〜?」


「…青ッス」


「え、越前も!?」



桃城の言葉に、色を答える同学年。
同じ色の名前に、はすぐに隣へと振り向いた。
彼の持つそれは確かに同じ青だ。



「同じ色を持った者同士がダブルスの組!何も塗られていない者が審判だ!!」



先生の言葉。
つまりは。



「じゃあ、最初のダブルスは越前となんだな!よろしく、越前!!」


「…足、引っ張んないでよね」


「頑張る!!」



最初、と戦ってくれるのは越前。
つまりは一年同士が最初に組むことになる。
彼の厭味をあっさりと流して、は意気込んだ。

一度ダブルスを練習で組んだことはある。
だが、彼も自分もまだ成長する。
この間よりも強く、なっているはずだ。
また同じ学年だからこそ、気合が入るってもの。
えへへーと笑うに対し、その心情を知ってか知らずか越前は溜息で返した。



「よし、じゃあ対戦は青対黄色、赤対緑だ!」



対戦相手もランダム。
と越前の相手は黄色の割り箸を引いたダブルスとの戦いになる。



「黄色…?」



はて、一体誰なのやら。
指定されたコートに二人で入ると、黄色のチームはもうスタンバイしていた。
そのメンツに、二人は目を大きく見開いた。



「て、手塚先輩に不二先輩…っ!」


「へぇ…」



部長の手塚に、天才不二。
この二人のタッグ。
無表情のままの人物と、笑顔の人物。
驚愕したをよそに、越前は不敵な笑みを見せた。



「そっか。青は越前となんだね。よろしく」


「よよよよよよよ、宜しくお願いします…っ!(つかこれ黄色じゃないよきっと!ゴールデンだよ!ある意味ゴールデンペアだよ!プレッシャー半端ないもん!!)」


「フーン…楽しそうじゃん」


「そ、そそそ、そうだね!!(越前凄っ!動揺してなさすぎる!ってか笑みが不敵過ぎる!凄っ!!)」


「油断せずに来い、越前、


「ははははい!!(ふぎゃーっ!最初から凄いことになった!!)」



クジ運が良いのか悪いのか。
最初からまるでボスに出会ったかのよう。
しかし時は待ってくれない。
試合はすぐに始まる。



「…あっちはある意味凄いな…データが取り放題だと思わないか桃城」


「そっスね…こっちも負けられねーな、負けらんねーよ」


「よし、頑張ろうな海堂!」


「うス、桃城(野郎)には負けねぇ」



一方のコートでも試合は開始される。
そして一日中、ダブルスの試合をやる。
その一日はまだ、始まったばかり。





「手塚ゾーンきたー!!越前ー!」


「見れば分かるっての」


「にぎゃーっ!!今度はトリプルカウンターっ!!」


「ちょっとアンタ黙ってて、ウルサイ」



にとっては、一日が終わった気がする最初の試合だった。













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