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疲れたら、 ちょっとだけ休もう 「ふへぇ〜…」 合宿場所に着いてから、は自分の部屋へと素直に戻ってきていた。 ボスンという音と一緒にベッドに倒れ込む。 疲労はピーク。 身体の体重が重力と一緒に布団に引き込まれていく。 御飯まではまだ時間があるし、お風呂もまだだ。 ならば、横になって休むだけ。 「ふへぇ…疲れた」 バーニングしながらの練習、そして力技が得意な桃城と戦ったりしたのだ。 体力の消耗はいつも以上。 ハッキリ言って、不二や大石の優しさがなければ、本当に倒れていたかもしれない。 身体に力が入らない。 だが、心地よい疲労感。 (…しあ、わせだ) テニスをとことんやって、倒れるまで疲れる。 これがどんなに幸せなことなのだろう。 つい先日まで考えられなかったことだ。 笑みが自然と零れる。 長期休暇のときだけで終わるものではない。 男装してるとはいえ、テニスが日常になっていく。 (お父さん、お母さん…俺、幸せすぎます…) あの休暇でのテニスでさえ幸せだったというのに。 これ以上の幸せがどこにあるだろうか。 テニスが出来て。 仲間がいて。 自分の正体を知りながらも支援してくれる人達がいる。 「もっともっと…テニスやって……もっともっと、強くなって……沢山の人達と、テニスがしたい」 時間が許す限り。 いや、終わりの時間など越させない。 その覚悟で、ここへと来たのだから。 「もっと……もっと………」 テニスがしたい。 沢山の人と。 強くなりたい。 一緒に、楽しく。 テニスが、したい。 「〜、入るぞ〜」 「君大丈夫〜?」 ノックが鳴ったと思えば、ドアから見知った顔が見えた。 堀尾とカチローだ。 どうやら水を持ってきてくれたらしい。 のそりと起き上がって、は笑顔で迎えた。 「ありがとー二人とも。もう大丈夫〜」 「ったく。先輩方に迷惑かけんなよな〜」 「アハハ〜…すんません」 「堀尾君が言えることじゃないでしょ!はい、君、お水」 「ありがと〜」 説教をしてくる堀尾に謝りつつ、カチローから水を受け取る。 冷たい液体は喉を潤し、心を癒していく。 プハァと息をついたところで、は異変に気付いた。 「…アレ?いつも一緒にいるカツオは?」 トリオの一人がいない。 それに気付いたが声をあげると、カチローは笑顔で口を開いた。 「カツオ君は今料理してるよ」 「え、料理?」 「うん、凄く料理上手なんだ〜」 「小坂田達に料理教えてんぜ」 「へぇ〜!意外!」 女性陣に料理を教えている、ということは相当の腕前なのだろう。 意外な一面を知って、は小さく呆けた。 今度教えて貰おう、だとかそういう話から、違う方向にまで話が広がっていく。 「あ、そうだ。堀尾達はお風呂の時間、皆とズレてたよね?」 「おう。女子が入って、レギュラーが入ってから俺達だな。最後お前だけど」 は部長の作ったしおりに書いてあったスケジュールを思い返した。 そこには、手伝ってくれる彼らのものも書いてあった。 お風呂の時間は、女子、レギュラー(どうやら河村先輩込みらしい)、補助を手伝う彼ら、そしての順番だ。 「じゃあさ、テニスやろ!?ただのラリーでもいいからさ」 はいきなり、提案した。 といっても、前々から考えていたことだ。 お風呂の時間が異なるのなら、一緒に何か出来るのではないかと。 そんなことを言われるなんて思っていなかったため、カチローと堀尾は思いきり驚いた。 「ええ!?でも君、フラフラじゃん!」 「もう大丈夫だよ〜。御飯食べればもっと平気になるし。女子とレギュラーが風呂入ってる間暇じゃん」 「そりゃそうだけど…」 フラフラになって先輩に背負われてきたというのに、まだテニスをやろうというのか。 元気に振舞うに、二人は顔を見合わせてどうしようかと首を傾げる。 予想通りの反応だったため、は笑顔で口を開いた。 「それにその時間、三人だけで練習しようと思ってたんじゃないの?」 「な、何でそれを…っ」 「だってチラッと三人の荷物が見えたときに、そこにラケットがあったもんね!」 誘ったのにはこういう訳もあった。 三人の運ばれてきた荷物の中に、しっかりとテニス道具が積まれていたのだ。 手伝いに来てるとはいえ、やはりテニスの合宿なのだ。 テニスをしたいに決まってる。 空いている時間があれば少しでもやるつもりだったのだろう。 ビンゴ、とばかりに二人の顔が変化している。 はニヤリと笑った。 「三人だけじゃ、一人余るだろ?だから、俺も入れてよ」 勿論三人でも出来るのだが、何なら四人の方が楽だろう。 それに自分も参加させてもらえると楽しい。 テニスが出来る時間があるのなら、するべきだ。 今はヘロヘロだが、御飯を食べれば復活出来る。 ちなみにお風呂前にすることで、汗も疲れも流せるだろう。 「どうよ?」 悪い話ではない。 自分にとっても、トリオにとっても。 が答えを促すと、二人は溜息交じりに苦笑を零した。 「うん、じゃあお願いしようかな」 「無理すんなよ!無理して倒れられたら俺達が怒られるんだからな!」 「うん!!」 許可が下りた。 これで晩御飯の後も楽しみだ。 また幸せの時間が増える。 三人はのんびりと笑って、話続ける。 カチローが呼びに来るまで。 |