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庭の緑と黒の屋敷の奇妙な空間に、佇む異世界からの来訪者達。 その中の少年、小狼は神妙な面持ちで腕の中の少女を見つめていた。 自分の幼馴染であり、大切な人でもある少女、桜。 彼女は未だ目を覚ます気配すらない。 逆に、冷たい雨に打たれているせいか温もりすら消えていきそうに感じる。 出来るだけ、雨が当たらないように自分の身体を前方に折り曲げてはいるが、どうしても当たってしまう。 (…サクラ……) 彼女を心配しながらも顔をあげ、辺りを見回す。 自分を中心にして左右に立つ同じ異世界からの来訪者たちはただただ沈黙を守るだけ。 雨の中待たされているにも関わらず、文句1つも言わないのは雰囲気のせいか。 頼みの綱である『次元の魔女』と呼ばれた女性は同じく口を噤んだまま屋敷を見つめているだけ。 自分と同じように、いやそれ以上に真剣な面持ちでその一点を見つめる彼女は何を考えているのか。 (…あの人を待っているんだ) 小狼の脳裏によぎるのは鈴のような音と、銀色の綺麗な髪。 それと、「吐きそう」の第一声。 真っ青な顔をして屋敷の中へと消えていった自分より少し上ぐらいの歳の少年。 (あの人は大丈夫なんだろうか) 大丈夫なのなら、早く帰ってきてほしい。 一秒一秒、時が流れるごとにサクラが死んでしまいそうで恐いのだ。 自分の恐怖を押さえ込むかのように、彼女の身体を強く抱く。 瞬間。 「………………あああぁぁあぁぁぁぁあぁっ!!!!!!!!」 響き渡る悲鳴。 同時に笑い声と足音。 何事かと皆が顔をあげて、訝しげにこの店の主人を見やる。 侑子は何が起こっているのか分かっているようだ。 真剣な眼差しは、どこか優しい微笑みへ。 まるで子供達を見守る母のような眼差しで屋敷を見つめている。 バタバタと大きな足音が近づいてくる。 そして二人と一匹は現れた。 「すみません侑子さん!遅くなりました!!」 「お手洗いお借りしたにも関わらず、君尋との友好に力を入れてしまいました!!お陰様でラブラブです!!」 「何の話だーっ!!!!!!」 出て来るなりいきなり騒がしくなる庭。 先ほどまでの静寂な雰囲気はない。 青くなっていた顔はまるで何ともなかったかのように笑顔を咲かせている一人の少年。 (…何ともないようで、良かった) 小狼も、心なしかホッとする。 が、同時に、大丈夫なのならもっと早く戻ってきてほしかったと少し腹立たしい気持ちが沸く。 腕の中の大事な人は、この間にも冷たくなっていくのに。 バチッと小狼と、銀髪の少年の目が合う。 彼の頭の上には黒い動物。 見た目は間抜けだが、彼は小狼を見るなり笑顔を引っ込め、真剣な眼差しでこちらへと駆けてくる。 「悪い、もっと早く来るべきだったな」 目の前に屈む彼。 紫苑の瞳はまるで、水晶のように輝いている。 それは腕の中のサクラを見ている。 小狼は驚きながらも、警戒し、腕の力を強める。 琥珀の瞳はしっかりと、を睨みつけながら。 はそんな小狼の様子を見て、苦笑を漏らす。 大切な人が大事になっているというのに、のせいで対処が遅くなってしまったのだ。 警戒しない方がおかしい。 「……ごめんな」 もう一度謝ってから、は自分の胸ポケットをあさった。 感じる温かみ。 フワリと浮く、ソレ。 「それは………っ」 優しい光に包まれたそれを見て、小狼が声をあげる。 何事かと、他の人たちも覗き込む。 の手の上に浮いているのは勿論、あの羽根。 「この子の、なんだろ?」 「……っはいっ」 の問いかけに、しっかりとした声で答える。 琥珀の瞳は真剣に、紫苑の瞳を貫く。 (……うん、綺麗な瞳だ) 腕の中の少女を大切に思っている証。 覚悟を決め、決して諦めない精神。 何事も貫こう意志。 は静かに微笑んで、口を開く。 「これ、返すけど……その代わり一つ頼みがあるんだ」 「…何、ですか」 返してくれるなら有難い。 けれど、自分が叶えられる頼みでないのなら…。 小狼の表情が暗くなる。 「うん、あのなこれ、重大なんだけど」 重大、の言葉に益々雰囲気が重くなる。 の瞳も真剣さを増す。 重々しい空気の中、は口をゆっくりと開いた。 「……ちょっと遅刻してきたこと、許して?」 「……………はい?」 口がぽっかりと開いているメンバーをよそに、はずっと真剣な眼差しで小狼を見つめていた。 |