「ギブギブギブギブっ!!」


ギブアンドテイクは大事だぞ〜君尋


何の話だよ!!いたたたたたっ悪かったって!!」


「もう身長のことはいうなよ!!」



ギリギリギリと四月一日の首がの腕によって絞められている。
そう、それはヘッドロック。
数秒前まではの攻撃を避けていたものの、今はキッチリと捕まってしまっている。
それは、予想外の助っ人のせいだった。

いや、助っ人ではなく、助っ物か。



「もう分かったからっ!いたたたたたっ!!」


「ならば良し!!助けてくれてありがとな、そこの黒いのっ!!」



パッと腕を離してが微笑む先には、黒い生き物。
垂れたウサギの耳を思わせるフサフサの長い耳。
片耳には耳飾、それと対のような青い宝石が額に埋まっている。
可愛い糸目、猫のような口元、短い手足。

その生き物に該当する名称は見当たらない。
よって、は黒いの、と呼ぶことにした。



「黒いのじゃなくて、モコナっていうの!!」



訂正。
黒いの、ではなくモコナというらしい。
先ほど逃げ回っていた四月一日をいきなり現れて驚かし、に引き渡した張本人…超本…物だろうか。


「おおっと失礼!モコナ、だな?」



とにかく助けてくれたのだから、はすぐにお礼と名前の訂正を行った。

しかも日本語が喋れる動物らしい。
普通の人ならば驚くところであるが、には全く関係がないらしく。



「俺はと申す!以後お見知りおきを!!」


うむ、よきにはからえ!



何故か時代劇調で自己紹介。
するとモコナもノリよく時代劇調で返す。

の腕から解放された四月一日はゴホゴホと咽ながら「なんで時代劇調!?」としっかり突っ込んだ。



「お主、ノリがよいのぅ」


「いやいやお代官モコナ様こそ


「だからなんで時代劇調なんだっつの!!しかもなんで簡単にこの変な生き物を受け入れてんだっつの!!」


「俺、順応性の高さが売りだから


モコナは可愛いから!


「そんなもん売りにすんなっ!!!そしてそこの生き物も自分で可愛いとか言うなっ!!!」



まだまだ続くボケ劇場。
まだまだ突っ込む四月一日。
当のボケ担当のモコナとはアハハハと笑うばかりだ。
突っ込み担当は息切れしそうな勢いである。



「いやぁ、俺達で漫才が出来るなモコナ」


「モコナきっとモテモテ!」


「俺もモテモテ!!」


「やめろ!突っ込みの俺が疲れるから!


「頑張れ君尋!」


「頑張れ〜」


「やってられるかっ!!!!」



やめられない止まらない、とはこのことだ。

ハイスピードで行われるやり取り。
一々ボケる一人と一匹。
それに対しちゃんとツッコむ四月一日。
本当に漫才コンビのようだ。

残念なのは、観客がいないということだけだ。


そう、観客が…。


…観客?



「あ」


「何だ!今度は何を言うつもりだっ!!」



何かに気付いたが声をポロリとあげる。
四月一日は「今度はどんなボケをかます気だ」と変にツッコむ手を構えている。
ちなみにモコナはの頭の上からその様子を覗きこんでいた。



「君尋、大変だ」


「何が!」


「……侑子さんたち忘れてた」


「…………………」



「漫才しても観客がいないと思ったら」というのがの言葉。
「あ、本当だ〜」とのんびり便乗するのがモコナ。

しばしの沈黙。
後。



「………………あああぁぁあぁぁぁぁあぁっ!!!!!!!!」



四月一日の絶叫が辺りにこの屋敷に響き渡ったのは数秒後。
とモコナの笑い声が響いたのはそのまた数秒後。

バタバタと大きな足音が響く渡るのもまた数秒後。


庭では未だ雨が降り続き。
未だ忘れられていた人々は雨に濡れ。


絶叫と笑い声を響かせるその屋敷をまるで他人事のように見つめていた。







第捌話<<    >>第壱拾話